楽曲レベルの高さに一目惚れしてしまった、多国籍バンド
— 今回紹介していただくJohnnivanはどんなアーティストでしょうか?
東京を拠点に活動しているバンドです。僕はすでにApple Music「TOKYO HIGHWAY RADIO 」などいろんなところでJohnnivanを紹介しているのですが、彼らの特徴を説明するときには「ロックサウンドとダンサブルなサウンドの融合」という言葉をよく使っています。とても表層的な表現だと思われるかもしれませんが、ひとことで彼らを紹介するのならこの形容が適しているんじゃないかと考えています。
— 東京のバンドとしては珍しいメンバー構成ですよね。
そうなんです。すごく多国籍的で、日米韓のメンバーがいるバンドです。ボーカルのJohnathan Sullivanは英語の発音がとても良いですし、サウンドも含めてかなり国際的かつ無国籍的な雰囲気が漂っていて、今の日本のインディーシーンのバンドの中でもおもしろい個性を持っていると思いますね。
— Johnnivanの楽曲がみのさんの耳に刺さったポイントを教えてください。
僕はセカンドアルバム『Give In!』がリリースされたタイミングでJohnnivanを知ったんですけど、そこに収録されている「Spare Pieces」という曲を耳にしたときに「あきらかに頭ひとつ抜けているバンドがいる」と思って。それをきっかけにアルバムを通して聴き込んでハマっていきました。
— それは楽曲のレベルが高かったということでしょうか?
そうです。最近ではバンド系のアーティストを評価する際、ソングライティング能力の高さは当たり前として、その上で「サンプリング以降」の考え方というか打ち込み的な発想を含めた“トラックとしての良さ”を同時に楽しみたいという部分があると思うんです。例えば、楽曲ごとにスネアの音色を変えていたり、ベースの鳴り方も違ったりとかですね。Johnnivanはそうしたトラックメイキングの面白さと、ロックバンド本来の魅力を両立できているバンドだと思います。
新しさと懐かしさが同居する、現代的なロックバンドサウンド
— 「ロックとダンスの融合」といえば、過去のインタビューによるとボーカルのJohnathan Sullivanさんは、00年代から活躍しているNYのバンドLCDサウンドシステムが好きみたいですね。
通じるところはありますよね。LCDサウンドシステムのいい意味でのっぺりとした曲調というか、反復するサウンドの気持ちよさみたいなものを、Johnnivanはコンパクトなポップスのフォーマットに落とし込んでいる気がします。乱暴に例えるなら「しっかりとサビらしいサビがあるLCDサウンドシステム」というか。そういう形容もできるかもしれないですね。
— その一方で、往年のクラシックなロックっぽい雰囲気もありますね。
まさにクラシックロック感はJohnnivanの音楽の端々にありますね。「Spare Pieces」にはサイケロック的な感触が漂っていますし、「No One is Going to Save You」には後期のザ・カーズみたいな80s系のポジティブなロックナンバーっぽさがあったり、楽曲ごとに数々のロックアーティストの匂いが香ってくる感じがあります。
— 全体的にちょっと懐かしい感じがしますよね。
でも、あざとさはないし、そうした音楽リテラシーみたいなものを押し付けてくる感じもない。あくまで漂ってくる程度という塩梅も良いんです。あとはボーカルの方が声色自体もレディオヘッドのトム・ヨークみたいだなと思っています。
— どういうリスナーにJohnnivanをおすすめしたいですか?
「バンドサウンドが聴きたいけど、新しさもほしいし、当然かっこいいものがいい」という人ですね。さっきも言いましたが、今ってバンドサウンドに新しさが求められる時代だと思うので、そういう意味でもJohnnivanはとても現代的なバンドなんじゃないかと思います。
Johnnivanおすすめ楽曲・3選
— 読者の方にどの曲をおすすめしたいですか?
僕がJohnnivanに一目惚れしたきっかけとなった「Spare Pieces」はぜひ聴いてほしいですね。加えて「No One is Going to Save You」。その2曲を基本としつつ、あとはカットアップ的な考え方でアプローチしている、ちょっと肩の力を抜いたナンバー「Table for Two」もおすすめです。
またザ・カーズの話になりますが、彼らのアルバムって毎回すごいかっちりしていてどれも名盤なんですけど、2〜3曲ゆるいいのが入っていて、それがまたかっこよくて。むしろ、そういう曲にこそ音楽的な冒険とか遊び心が入っているように感じられるんです。Johnnivanの「Table for Two」にもそういう部分を感じますし、ちょっと抜いた楽曲もできるっていう一面を知る上でも外せない曲じゃないでしょうか。
— 近年、世界的にバンドサウンドが復活してきている感じがします。
日本が世界的に見ても最もバンドサウンドが残っている国だったと思いますが、それを差し引いても最近はゴリっとした硬派なロックをやってる人たちがアンダーグラウンドでおもしろいシーンを作っている印象がありますね。下北沢にも相変わらずインディーバンドがたくさんいますし、その中でもJohnnivanは僕がとくに好きなバンドなので特別な期待をしていますね。
— 下北沢といえばBUMP OF CHICKENフォロワー的な“邦ロック”なイメージを持っていたのですが、Johnnivanのようなバンドも多いのでしょうか?
今の下北シーンはかなりオルタナティブ色が強いと思いますよ。もちろん往年の邦ロック的なバンドもたくさんいる一方で、オルタナティブなバンドもたくさんいて、しかもライブにもちゃんとお客さんが入っています。かなりおもしろいことになってきていると思うので、ぜひ注目してほしいですね。
Vol.1 全員10代の末恐ろしきバンド「chilldspot」
Vol.2 日本の音楽ファンに“命題”を突きつける「民謡クルセイダーズ」
Vol.3 ゆらゆら帝国以来の衝撃。オルタナロックの系譜に立つ「betcover!!」
Vol.4 フォークソングとしての普遍性と攻めたサウンドの融合「ゆうらん船」
Vol.5 すぐれたポップセンスで日本語を響かせるバンド「グソクムズ」
Vol.6 天才と呼びたくなるシンガーソングライター「中村佳穂」
Vol.7 謎多き新世代ミクスチャーバンド「鋭児」
Vol.8 バンドサウンドとBento Waveを融合させる「ペペッターズ」
Vol.9 渋谷系の真髄に迫るネオネオアコバンド「Nagakumo」
Vol.10 新世代らしい音楽との向き合い方を感じる「Mega Shinnosuke」
Vol.11 “音色”からポップミュージックの幅を広げる「Serph」
Vol.12 日本にガレージロックブームを起こすかもしれないバンド「w.o.d.」
Vol.13 素晴らしすぎる作曲、掴めないキャラクター「Bialystocks」
Johnnivan鍵盤担当Shogo Takatsuさんからのコメント
Johnnivan鍵盤担当のShogo Takatsuです。
いつもラジオやYoutubeで取り上げて頂き、有難うございます!今回の企画でも取り上げてもらえるとのことで大変光栄です。
僕達は昨年2022年11月にセカンド・アルバム『Give In!』をリリースしました。
タイトルの’Give In!’にある通り、良い意味で「身を任せる」ことをテーマに製作を進めたため、自由でオーガニックなアイディアに溢れています。前作『Students』からの変化と進化、一方で共通するDNAに着目するとより楽しめるのではと思います。
目標は、日本発の音楽が世界のビッグバンドと対等に戦えることを証明することです。Johnnivanがそのきっかけになれると信じています。日本出身で有ることを誇りにアドバンテージに音楽活動ができる道を僕達が切り拓きます。
一緒に日本と世界の音楽シーンを盛り上げていきましょう!
Johnnivan
東京を拠点に活動する多国籍ロックバンド。2019年にファーストEP「Pilot」をリリースし、2020年にリリースしたファースト・アルバム「Students」はタワレコメンに選出され高く評価を受けた。これまでサマーソニック、シンクロニシティ、りんご音楽祭等主要音楽フェスに出演しその音楽性とアグレッシブなライブパフォーマンスが話題を呼んでいる。
みのミュージック
YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在39.6万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、今年5月には自身初となる書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。
text&photo:照沼健太