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【NEXT UP! #12】速瀬愛:音楽と芝居の狭間で鳴り続ける静かな本音

歌舞伎町

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NEXTUP
DATE : 2026.02.16
劇場、ライブホール、屋外ステージ、路上ライブスペース、ナイトクラブ──さまざまな“表現の場”が、東急歌舞伎町タワーにはある。ダンサー、シンガー、アイドル、DJ…。そこで日々パフォーマンスを行うクリエイターたちの顔ぶれもまた、幅広い。

あらゆる価値観が交差する歌舞伎町に集う次世代の才能たちの、過去・現在・未来に迫るインタビューシリーズ「NEXT UP!」。

第12回に登場するのは、タレント・俳優として活動する一方で、シンガーソングライターとしても精力的にライブ活動と楽曲制作を続ける速瀬愛。

事務所イベントでの“突然の一曲”をきっかけに音楽活動が始まり、現在は歌と芝居、その両方を軸にキャリアを広げている彼女に、芸能界を志した原点から、音楽への向き合い方、そしてこれから目指すステージについて話を聞いた。

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<NEXT UP!的 推しポイント>

  1. 芝居と音楽、2つの表現を横断するアーティスト性

  2. 弱さをさらけ出す歌詞表現と徹底した言葉へのこだわり

  3. “ありのまま”でいることへの真摯な思い

速瀬愛(はやせ・あい)

タレント・俳優・シンガーソングライター。中学3年生頃から養成所に通い、芸能活動をスタート。事務所主催イベントでMCを務める中、ステージ出演をきっかけに音楽活動を開始。以降、国内外のイベントに出演しながらライブ活動と楽曲制作を継続。作詞・作曲にも携わり、言葉選びに強いこだわりを持つ。また、2021年からTBS『王様のブランチ』のリポーターとして出演中。俳優としてはドラマ出演も重ね、2026年2月放送のTOKYO MXのドラマ『ゆかりくんはギャップがずるい』ではミュージシャンを目指す女の子の役を演じるなど、音楽活動との相乗効果を発揮している。初のワンマンライブ開催を目標に活動中。

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—Beginning— 
芸能活動の延長線上で、歌が始まった

― まずは芸能界を目指したきっかけや、歌手活動を始めたきっかけを教えてください。

芸能活動自体は、中学3年生くらいから養成所に通い始めたのがきっかけです。もともとお芝居がすごく好きで、この業界に入ってからは、ずっとお芝居のレッスンを受けたり、歌の授業を受けたりしていました。

幼少期の速瀬さん

事務所主催のイベントが毎年あって、MCをずっと担当していたんです。ある年そのイベントで、事務所の方から「1曲歌ってみたらどうか」というお話をいただいて、そこで初めてステージで弾き語りをしました。

そのときのステージを、『JAPAN EXPO THAILAND』というタイ最大規模のイベントも担当されている方が見てくださっていて、そこからタイのイベントに呼んでいただくようになって。それをきっかけにアーティスト活動をスタートさせていただき、今に至ります。

― かなり唐突な流れで歌手デビューしたんですね!

そうなんです。めちゃくちゃ緊張しました。いきなり大きなステージで歌うことになって、本当にびっくりしました。

― 少しさかのぼって、幼少期はどんなお子さんだったんですか?

すごく人見知りで、内気なんだけど目立ちたがり屋、みたいなよくわからない性格でした(笑)。幼稚園と小学生の頃は一人遊びがすごく好きで、ジブリのDVDを何度も見て、セリフを覚えて、一人で演じながら遊んでいました。

友達はいましたが、そんなに活発なタイプではなかったと思います。

― 小さい頃から歌うことも好きだったんですか?

父も母も音楽が好きだったので、音楽は身近にありました。ジブリが好きだったのも両親の影響だと思います。

― ご両親がよく聴いていた音楽は?

いつも驚かれるんですけど、両親の影響で長渕剛さんの曲をずっと聴いていました。小学生の頃からライブにも連れて行ってもらっていて、DVDに小学5年生くらいの私が映り込んでいる映像も残っているんです(笑)。

ギターを始めたきっかけも、父が長渕さんの曲を弾いていたからなんです。中学生の頃に始めたのですが、その時はすぐ飽きちゃって。音楽活動をきっかけに、再開しました。

― 長渕さんの音楽から受けた影響は今の表現にもつながっていますか?

自分の中に秘めているものは結構熱い方だと思っていて。外に出すタイプではないんですけど、熱い言葉が好きだったりするのは、長渕さんからの影響もあるのかなと思います。

—Essence— 
本心と向き合い言葉を紡ぐ、楽曲制作の日々

― 現在は作詞・作曲にも携わっていますが、制作のモチベーションになっているものは何ですか?

もちろん応援してくださっている皆さんの期待に応えたいという気持ちは大前提としてあります。それ以上に、自分に負けるのがすごく嫌なんです。諦めてしまったら、自分で自分のことを嫌いになりそうで。自分へのハードルが高いというか、“何が何でもやってやる”という気持ちと気合いでやっているところはあります。根性論みたいですけど、ちょっとロックな魂があるのかなと思います。

― 楽曲制作の中で、特に苦労している部分は?

今ちょうど新曲の制作が終わったところなんです。歌詞は何度も書き直しました。自分から出る言葉って、どうしてもきれいにまとまりがちで。そこをどう崩すか、どう抜け出すかというところはすごく悩みました。

アーティスト以外のお仕事のときは、どうしてもファンの皆さんには良い部分、きれいな部分しか見せてこなかったので、こういう言葉を使ったらどう思われるんだろう、こういう言い回しをしたらどう受け取られるんだろう、という葛藤もありました。

― 歌詞はどのくらい書き直すんですか?

もう、まるごと変えます。テーマから何から全部変えて、まったく違う情景描写を書いたりもしていました。いまだに心から満足できたことがないので、ずっと書き直している感じです。

― 制作のインスピレーションはどこから得ていますか?

私は自分のことを話すのがすごく苦手なので、言いたいことをそのまま言語化するのを避けちゃうんです。だから、歌詞に使いたい言葉やモチーフをとことん調べて、言葉の意味を深く理解したうえで使うことが多いです。

― ロールモデルにしている人物や、影響を受けたアーティストはいますか?

Vaundyさんです。「情熱大陸」に出演されているのを観たとき、異次元だなと思いました。年齢も私とそんなに変わらないと思うんですけど、“音楽で生きる人”ってこういう人のことを言うんだって感じて。

― 俳優業からキャリアがスタートしたなかで、ご自身のミュージシャンとしての強みはどこにあると思いますか?

強み……それが何かと言われると難しいんですけど、これまで役者やタレント業をしてきたなかで、アーティストとして見せる速瀬愛と、それ以外の仕事で見せる速瀬愛、2つの側面があること。それ自体が武器になっているのかなとは思います。

― 実際、アーティスト名義とタレント活動ではアカウントも分けていますよね。他のジャンルの仕事が音楽活動に活きていると感じる場面はありますか?

2026年2月から放送中のドラマ(TOKYO MX『ゆかりくんはギャップがずるい』)で、ミュージシャンを目指している女の子の役を演じているんですけど、その作品で、私がつくった楽曲を少しだけ使っていただいたんです。アーティストとしての経験があるからこそ、役の感情にも共感できましたし、まさかお芝居と音楽がこんな形で合致する日が来るとは思っていなかったので、すごくいい相乗効果になっていると感じました。

― ライブのMCなどでも、普段のタレント活動が活きていると感じることは?

もともとおしゃべりは好きなんですけど、ライブのMCはあまりうまくしゃべれていない気がします(笑)。『王様のブランチ』に出演しているときは“リポーター速瀬愛”というモードが自分の中にあって、言葉も自然に出てくるんですけど、アーティストのときは“何者でもない私”なので、どう振る舞っていいかまだ分からない部分もあって。

― アーティストとしての自分が、本来の自分に一番近い?

そうですね。アーティストをやっているときは、ありのままでいたいと思っています。今できあがった新曲も、そういうテーマで書いたものなので。

― これまでの楽曲の中で、特に思い入れのある曲や歌詞はありますか?

デビュー曲の『surface』は、初めて自分の二面性や弱みを見せた楽曲だったと思います。

「言わないで 『優しいね』って 表だけの色を見ないで」というフレーズがあるんですけど、そこは自分で歌っていても毎回グッときて、一番感情移入する部分です。

—Future— 
自分の姿よりも、歌詞に耳を澄ませてほしい

― 「Kabukicho Street Live」への出演は今回で3回目ですよね。この環境でライブをするのは、もう慣れましたか?

正直まだ緊張はします。ライブでは“うまくやらなきゃ”という気持ちがどうしても勝ってしまいますね。バラエティやドラマとは全然違います。今まで人前で演奏することをあまりしてこなかったので、ギターを弾きながら歌うこと自体にプレッシャーがあります。

スクリーンに大きく映るので、前髪乱れてないかなとか、すごく気になっちゃうんですけど(笑)。でも、すごく栄えている場所なので、たまたま通りかかった方が足を止めてくれる瞬間を、ステージの上から自分の目で見られるんです。“立ち止まってくれた”って嬉しくなって、頑張ろうって思える。だからここで歌うのはすごく好きです。

ライブをしているときは、私のことは見なくていいので、歌詞を聴いてほしいって思っています。私が書いた言葉が、聴いてくれているみなさんの境遇と重なってくれたら、それで十分かなって。

― 現在、活動の中で音楽が占める割合はどのくらいですか?

曲の制作期間に入ると、朝から撮影して、夜に帰ってきて、そこからまた制作して、みたいな生活になるので、家にいる時間はほとんど音楽のことを考えています。生活の中では、かなりの割合を音楽が占めていると思います。

― 最後に、これからどんな大人になっていきたいですか?

今年で25歳になるんですけど、良くも悪くもかつて想像していた25歳と全然違っていて。でも、人への愛情は忘れたくないなって思っています。支えてくださっている皆さんも、家族も友達も、私を囲んでくれている人たちへの感謝や愛は、ずっと持ち続けたい。名前も“愛”なので、愛あふれる大人でいたいなと思います。

― 目標としているステージはありますか?

まずはワンマンライブを開催することが目標です。それをとにかく実現できるように頑張りたいです。

文:MASH UP! KABUKICHO編集部

写真:鈴木大喜

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