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【グソクムズ】すぐれたポップセンスで日本語を響かせるバンド│みのミュージック注目アーティストVol.05

歌舞伎町

インタビュー
みのミュージック注目のアーティスト 音楽
DATE : 2022.02.25
音楽紹介を行う人気YouTubeチャンネル「みのミュージック」を運営するYouTuberであり、新宿歌舞伎町でレコードBAR「烏龍倶楽部」(※)を経営する「みの」さん。会員に限らず音楽と酒を自由に楽しめるバーとして再始動した烏龍倶楽部で、みのさんが今注目しているアーティストを紹介してもらう連載第5回。今月のアーティストは「グソクムズ」です。

「烏龍倶楽部」

日本語の響きを大切にした“今”のバンド

グソクムズ – グッドナイト (Official Music Video)

— 今回紹介していただけるグソクムズはどんなバンドでしょうか?

日本語の響きを大切にした曲作りをしている、サニーデイ・サービスやくるりの系譜にあるアーティストと言えると思います。さらに遡れば、はっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂が在籍)、シュガーベイブ(山下達郎、大貫妙子らが在籍)などの70年代の音楽からの影響もすごく大きいんじゃないかと思います。非常に“邦楽的”なバンドとでも言えばいいんですかね。

— みのさんがグソクムズを聴いたきっかけとなった曲は?

「風の中で」という曲です。

グソクムズ『風の中で』

これはもろにはっぴいえんどへのラブレターみたいな曲といいますか。はっぴいえんどのキーワードとして「風」がありますが、タイトルの通りこの曲にも「風」というワードが出てきますし、なんなら「はっぴいえんど」というフレーズも出てきます。サウンドも70年代のフォーキーなウエストコーストっぽい感じですし。

— ど直球な曲ですね。

この曲に関してはパロディーぐらいのノリでやっている感じもありますが、それでも「僕たちはこういう者です」って、彼らのルーツが垣間見える“名刺がわりの曲”を提示してくれた印象を受けました。

— 70年代からの影響という点では、never young beachも連想しました。

そうですね。安部勇磨さん(never young beachのボーカル&ギター)のソロアルバム『Fantasia』には、細野晴臣さんがミックスで参加していたりと、はっぴいえんど周辺にリスペクトを表明している若いアーティストが最近はたくさんいますよね。

とはいえ、サニーデイとかくるりも、往年のサウンドに影響を受けつつ時代ごとに新しい音楽を展開しているバンドだったように、グソクムズやnever young beachも昔の音楽をリファレンスとしている部分があっても、決して当時そのまんまの感じではないんですよね。グソクムズは昨年末にフルアルバムを初めて出したのですが、アルバムを通して聴くと”彼らの音楽”をやってるなという感じがします。

— どんなに一見レトロな音楽をやったとしても、どこかに必ず“今っぽさ”は出てきますよね。

レコーディング機材の変化もありますし、そもそも作り手が生きている時代が違うので、たとえ意図しなくても、絶対に“今っぽい音”になる部分はありますよね。これはくるりとかサニーデイにも言えるとは思うんですけど、グソクムズははっぴいえんど以上に“ポップスとしての完成度の高さ”を目指しているような印象を受けます。

はっぴいえんど入門!いまさら聞けない疑問に答えます

あくまで個人的な見解なんですけど、はっぴいえんどは「“日本語でのロック”におけるひとつの雛型を作ろう」みたいな意識が強かったと思うんですよ。そして、それが達成された70年代の成功体験がはっぴいえんどだとすると、その後の世代ではっぴいえんどを参照する人たちには「その上で何をするのか?」という課題があると思います。というのも、はっぴいえんどはすでに彼らの方法論で目的を達成しているわけですから。

— なるほど。グソクムズの過去のインタビューでは「はっぴいえんどはアングラすぎるし、山下達郎はトレンディすぎる。グソクムズはその中間がいい」という発言があり、メンバー全員が井上陽水好きだそうです。

井上陽水はある時期まで英語をほとんど使っていなかったと思うんですけど、その影響は強く感じます。サカナクションの山口一郎さんみたいな方もいらっしゃいますが、全編を日本語詞で書くアーティストって今は結構少ないと思うんです。グソクムズはそこにおもしろさを感じましたね。イントロを聴いただけで「このあと英語の歌詞はほとんど出てこないだろうな」みたいな感じがするじゃないですか(笑)。

— たしかに(笑)。

2021年に大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』のボックスセットが出たんですけど、その中に海外の方が英語で歌っているバージョンが収録されているんですよ。

[Official] 大滝詠一「君は天然色」Music Video (40th Anniversary Version)

なんでも大滝さんは当時「海外の歌手にこれを歌わせたらどうなるんだろう?」みたいプロジェクトに取り組んでいたらしくて。でも、実際に聴いてみると、英語だとメロディーの収まりに少し違和感があって、大滝さんの日本語バージョンの方がしっくりきます。やっぱり日本語で歌うって決めて曲を作っている時点で、日本語向けの曲になっているんでしょうね。

すぐれたポップセンスと、作家性のぶつかり合いがもっと見たい

— グソクムズの1曲を選ぶとしたらどの曲をご紹介したいですか。

「風の中で」は彼らを紹介する上では分かりやすい曲だと思うんですけど、もしかしたらはっぴいえんどのパロディーだと捉えられてしまうかもしれません。なので、彼ら自身の魅力が表れた作品として紹介するなら「すべからく通り雨」がいいんじゃないかと思います。

グソクムズ – すべからく通り雨 (Official Music Video)

— 「すべからく」というフレーズがすごく耳に残る曲です。

やっぱりポップセンスがいいですよね。こういう音楽でポップに聴かせようとすると、昨今流行のシティポップ風になったり、もうちょっと甘さを足すと90年代の王道Jポップみたいな方向に行ったりすると思うんです。でも、そのどちらにも行かずにポップに聴ける音楽というのは、実は結構珍しい気もします。すごくクールで都会的な空気感もありつつ、もうちょっと土臭さもあるというか。

— 今後グソクムズにはどんなバンドになってほしいですか?

ゆっくり健康的な歩みをしてほしいですね。もっと素晴らしい作品を作ってくれそうな存在なので。その上で、シンプルに売れてほしいですね。全然あり得ると思いますけど。

グソクムズ えいぞをさんからのコメント

こんにちは。
グソクムズのボーカルえいぞをです。
この度は企画に推薦していただきありがとうございます。
2021年もyoutubeの動画でご紹介いただいたり、みのさんには大変お世話になりました。
今までは画面越しに「やったー紹介されたー」と喜ぶだけでしたが、まさか今回のような企画でコメントまでできるとは思ってもいませんでした。超絶うれしいです。
グソクムズは2020年から本格的に活動を始め、昨年末に1stアルバム『グソクムズ』をリリースすることができました。
僕たちは全員がソングライターということもあり、このアルバムにはそれぞれ担当した曲が収録されています。
メンバーによって出せる色が異なるので、アルバムを全曲通して聴いて頂けると、グソクムズの音楽がより二層楽しめる事間違いありません。
なので、まだ聴いた事がない音楽ファンの方々は是非是非聴いて欲しいです!
よろしくお願いします!
1月には1stアルバムのレコ発ワンマンライブも成功させた事ですし、今年は新曲やライブ活動などをどんどんやっていくつもりです。
とりあえず、夏はフェスに参加する事が目標ですね。
これからも応援よろしくお願いいたします。

1st ALBUM「グソクムズ」

2021.12.15Release

グソクムズ

吉祥寺を拠点に活動するシティフォークバンド。

はっぴいえんどを始め、高田渡やシュガーベイブなどから色濃く影響を受けており、
しばしば「ネオ風街」と称される。

雑誌『POPEYE』に掲載されるなど注目を集め、
2020年8月にはTBSラジオにて冠番組『グソクムズのベリハピラジオ』が放送された。

2014年にたなかえいぞを(Vo/Gt)と加藤祐樹(Gt)のフォークユニットとして結成。
2016年に堀部祐介(Ba)が、2018年に中島雄士(Dr)が加入し、現在の体制となる。

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みのミュージック

YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在33.3万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、今年5月には自身初となる書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。

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Tokyo Highway Radio

text&photo:照沼健太

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