w.o.d.は圧倒的にストレートな「ロックバンド」
— 今回紹介いただくw.o.d.はどんなアーティストでしょうか?
シンプルに「ロックバンド」ですね。それも今どき珍しいぐらい直球のロックをやってるトリオ。スタジオレコーディング作品も生々しくて、ライブハウスでの迫力ある演奏をそのまま聴けるかのようです。
— まさに彼らの最新アルバム『感情』は、ベッドルームやスタジオで作り込まれた作品が多い現代においては珍しいくらいシンプルなレコードでした。
ちょうどこの前w.o.d.のみんなと会って一緒に動画を撮ったんですけど、ついに今作からデジタルレコーディングではなく、アナログテープを使って録り始めたと言っていました。自宅でDAWをいじってトラックを作り込むかっこよさもあるけど、w.o.d.はそれとは真逆。ギターのオーバーダブとかは多少あるにせよ、ライブの迫力をパッケージした作品だなと感じましたね。
w.o.d.
— なんで今こういうバンドが出てきたんですかね。
うーん、シンプルに「ロックが好き」なんじゃないですかね(笑)。彼らに最近の目標を聞いたら「レッドツェッペリンになることです」って言ってて「最高!」って思いましたよ(笑)。
— 年配の世代ウケもいいだろうし、若い世代も新鮮に聴けるだろうなと感じますね。ロックバンドってメンバーの立ち姿が重要だと思うんですけど、彼らはそんな華もあっていいなと思いました。
うん。ロックスターっぽい見た目や風格がありますよね。
日本のガレージロックブームは30年周期で訪れる?
— SuchmosやKing Gnuを筆頭に、最近のロックバンドは「R&Bやヒップホップの要素があって当たり前」みたいな感じでしたが、w.o.d.にはそういう感じがなく、まさに「ガレージロック」という印象です。
最近「ガレージロック30年周期で日本で売れる」説を提唱してるんですよ。最初が60年代のGS。ザ・スパイダースとかムッシュかまやつの頃ですね。次は90年にミッシェル・ガン・エレファント、ブランキー・ジェット・シティ、ゆらゆら帝国などが。そしてそこから約30年を経て、そろそろまた売れるんじゃないのかなと。
— なるほど。たしかに日本ってガレージロック好きな土壌ありますよね。
ですよね。で、そのきっかけになりそうだと感じたのが、w.o.d.の「バニラスカイ」です。
今までのw.o.d.のサビに対するアプローチって、洋楽みたいに曲のタイトルなんかをひと言程度、数回言うだけみたいなのが多かったんですよ。でも、この曲のサビはメロディーが長くて、大きなうねりで気持ち良さを作る、いわゆる邦楽的なサビになってる。これは今回彼らw.o.d.にとっての新しい境地だったのかなと感じました。
— チバユウスケ(元ミッシェル・ガン・エレファント、現在ザ・バースデイ)が書くメロ寄りの曲に近い雰囲気を感じます。
まさにそうですね。ミッシェル・ガン・エレファントの「スモーキン・ビリー」みたいな”ひと言系”に対する、「世界の終わり」あたりの歌メロで聴かせる感じ。
w.o.d.は今回メロウな感じを開花させて、その両方が楽しめるバンドになったと思います。素晴らしいと思いますね。
ベースサウンドが肝? w.o.d.のグルーヴを分析
— ロックバンドにとっては、メロディーと同等かそれ以上にグルーヴが重要ではないかと思います。w.o.d.のグルーヴはどう分析しますか?
個人的にはw.o.d.のアンサンブルの鍵はベースにあるんじゃないかと思っています。というのも、ライブを観に行ったらベースの音が驚くほどデカかったんですよ。最初は「デカすぎない?」と思っていたんですけど、曲をよく聴くと主に鳴っているのは実はベースで、ギターはそんなに歪(ひず)んでいなくて上で軽めに鳴っている感じなんですよ。だんだん「このベースサウンドがバンドの肝なんだ」と思うようになりました。
しっとりした曲でも、ベースの音が大きくて歪んだままでしたからね(笑)。ストレートなガレージロックではあるけど、その辺りに普通じゃない印象を受けましたね。
— こうしたサウンドの方が、打ち込み主体のビートが強い音楽に慣れている現代人に受け入れられやすい部分はあるかもしれないですね。個人的には2000年代後半に活躍した、ベース&ドラムの2ピースであるDeath From Above 1979を思い出しました。
ロイヤルブラッドとかにも近い感じがしますね。ベースがギターの役割を担ってる部分があるという点で。
まずは最新作『感情』を聴いてほしい
— w.o.d.を初めて聴くリスナーに1曲おすすめするとしたら?
ハードな路線なら「イカロス」。メロディアスならさっきも紹介した「バニラスカイ」ですね。2曲とも新作『感情』の収録曲です。
— どんな音楽を好む人たちにw.o.d.をおすすめしたいですか?
ロック好きはもちろんですけど、今の世代には「ロックを聴いたことすらないよ」みたいな人も多いと思うんですよ。そういう人たちに、これをロックだと意識せず先入観抜きで聴いてもらったらおもしろいんじゃないかと思いますね。
— しかし、w.o.d.はこれまでこの連載で紹介していただいたアーティストの中で、圧倒的にストレートな音楽性の持ち主ですよね。
そうですね(笑)。結構ひねくれたアーティストを選んできているので、逆に新鮮に思ってもらえるかも(笑)。
— 複雑な音楽が多い時代でもあると思うので、そこに突然w.o.d.みたいなシンプルでガッツのある音楽が売れたら、また新しい何かが生まれるような気がします。
Vol.1 全員10代の末恐ろしきバンド「chilldspot」
Vol.2 日本の音楽ファンに“命題”を突きつける「民謡クルセイダーズ」
Vol.3 ゆらゆら帝国以来の衝撃。オルタナロックの系譜に立つ「betcover!!」
Vol.4 フォークソングとしての普遍性と攻めたサウンドの融合「ゆうらん船」
Vol.5 すぐれたポップセンスで日本語を響かせるバンド「グソクムズ」
Vol.6 天才と呼びたくなるシンガーソングライター「中村佳穂」
Vol.7 謎多き新世代ミクスチャーバンド「鋭児」
Vol.8 バンドサウンドとBento Waveを融合させる「ペペッターズ」
Vol.9 渋谷系の真髄に迫るネオネオアコバンド「Nagakumo」
Vol.10 新世代らしい音楽との向き合い方を感じる「Mega Shinnosuke」
Vol.11 “音色”からポップミュージックの幅を広げる「Serph」
w.o.d. Vo.&Gt. サイトウタクヤさんからのコメント
みのさん、お久しぶりです。
w.o.d. Vo.&Gt. サイトウタクヤです。
前にYoutubeの動画でインタビューしてもらって、今回も取り上げてもらえるとのことでめちゃ嬉しいです。乾杯!
我々4枚目のアルバム「感情」発売しました。これ、全曲テープによるアナログレコーディングをした作品になっておりまして、PC使わず作りました。
演奏は相変わらず一発録りで、同じ部屋で楽器鳴らして録ってます。
実は、アナログレコーディングしたいと思ったきっかけは、みのさんでして。
インタビューの際、ご自宅にお邪魔して、撮影後にモノラルレコードを聴かせてもらったの覚えてますかね? 酒飲みながら。
あの時に聴いたThe Kinksが結構俺らの中で衝撃でした。音の立体感とか、奥行きとか、迫力とか。
アルバム「感情」はモノラルではないですが、アナログレコーディングをすることで、あのレコードを聴いたときの感動を少しは再現できたんじゃないかと思っています。ぜひ聴いてください。
乾杯!
New Album『感情』
ネオ・グランジ・バンド・w.o.d.が、
今もっとも衝撃的で進化的なロックを鳴らす!
前作リリースから1年半、9/21(水)New Album『感情』をリリース
初のZepp単独公演含む、全国13カ所のワンマンツアー開催。
ONE MAN TOUR “バック・トゥー・ザ・フューチャーⅣ”
10/01(土) 神戸|太陽と虎
10/07(金) 岡山|IMAGE
10/10(月祝) 福岡|DRUM Be-1
10/14(金) 札幌|cube garden
10/16(日) 仙台|CLUB JUNK BOX
10/19(水) 京都|KYOTO MUSE
10/21(金) 高松|DIME
10/22(土) 広島|SIX ONE Live STAR
10/29(土) 長野|LIVE HOUSE J
10/30(日) 金沢|vanvan V4
11/05(土) 名古屋|BOTTOM LINE
11/06(日) 大阪|BIGCAT
11/17(木) 東京|Zepp DiverCity TOKYO
w.o.d.
サイトウタクヤ (Vocal&Guitar)、Ken Mackay (Bass)、中島元良 (Drums) からなる神戸発の3ピースバンド。時に感情的にシャウトするボーカルと歪んだギター、鼓膜を瞬時に捉えるヘヴィなベースに、抜群のビートが息づくドラムス、極限まで研ぎ澄まされた有無を言わせぬグルーヴ。2020年代邦楽ロックシーンの中で圧倒的なオリジナリティを見せつけ、音楽リスナーや、アーティスト、音楽関係者らを惹き付ける。
みのミュージック
YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在38.4万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、今年5月には自身初となる書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。
text&photo:照沼健太