革新的なサウンドとストレートなソングライティング力が魅力
— みのさんが「ゆうらん船」を知ったきっかけは?
もともと「ゆうらん船」より先に、フロントマンの内村イタルくんがサポートギターで手伝っている「Gateballers」を先に観ていて、そこから彼の活動が気になって「ゆうらん船」をチェックするようになりました。
— ゆうらん船を聞いて一番印象的だったのはどんなものでしたか?
EP『ゆうらん船2』に「★」という曲が収録されているじゃないですか。あの曲に超感激したんです。
— 何がそんなに刺さったんでしょうか?
まず、イタルくんの作詞作曲が素材として超いいんですよね。フォーキーなソングラインと綺麗なメロディライン。あとは素朴な声色が一級品で、あんまり音的に“化粧”をしなくても成立している。そのうえでサウンドプロダクションが攻め攻めで(笑)。音を聴いたときに「なんだこの音は!」と。『MY GENEARATION』という1stアルバムのリリースにもこう書いてあるんですけど、まさに「素朴と前衛は矛盾しない」という感覚ですよね。
— 「推し曲」があれば、教えてください。
「山」かな。こういう昔からあるいわゆるポップスのソングフォーマットを使った楽曲も書ける。そういう中で実は新しいみたいな。そこができる人って実はあんまりいなくて。志摩遼平さん(ドレスコーズ)とかは得意だと思うんですけど。そういうメジャーな領域に目配せをきちんとしつつも新しいのは、珍しいタイプだと思うんですよね。
— あと周りのメンバーもおもしろいですよね。ベースの本村拓磨くん(元Gateballers、現カネコアヤノバンド)とか。
彼らの周辺にあるシーン全体が要注目ですよね。ゆうらん船もそうだし、Gateballersもカネコアヤノさんも。そして、小山田壮平さんのバックバンドも、Gateballersの濱野夏椰くんと久富奈良くん。もうちょっと広げると、GODに踊ってばかりの国。結構狭いコミュニティだけど、ずっといいものを作りつづけているんですよ。
— 個人的には「鉛の飛行船」に衝撃を受けました。
この曲やばいですよね。オートチューンを使ったかと思えば、途中で木琴パートがでてきたり。まったく違う視点から音楽を捉えて提示している。あとタイトルは明らかにレッド・ツェッペリン*からですよね。「MY GENERATION**」とかもそう。実はそういうめちゃくちゃストレートなロックが好きなんだなって言葉がちりばめられているけど、音楽として前衛の部分があるから、あんまり意外と連想されない。
* 1968年に「ヤード・バーズ」のギタリストであったジミー・ペイジが、ロバート・プラント(ヴォーカル)と出会ったことで立ち上げたロックバンド。レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)というバンド名はキース・ムーン(ロック史上屈指の天才ドラマー)が、彼らを「Lead Zeppelin(鉛の飛行船)」と呼んだことに由来するとされる説があります。
**先に挙げたキース・ムーンが所属したロックバンド、ザ・フー(THE WHO)の楽曲から。
ソングライティングとメロディーラインの良さを堪能すべし
— みのさんはフロントマンの内村イタル君との音楽的な交流もあるんですよね。
はい。僕がやっているバンドで「一緒に遊ぼう」という曲にゲストボーカルとして参加してもらいました。声に惹かれたんです。僕は結構金属的な声なので、憂いがある声色の人に歌ってほしくて。イタルくんが最後の方にアドリブでフェイクを入れてくれて。他のミュージシャンみんながブースで「何が出るんだろう。絶対おもしろいのが出るぞ」と見つめる中で、フェイクをやった瞬間には全員で「やっぱりすごいな」と感動しましたね。
— やはり天性のものがあるんですね。ゆうらん船の音楽としてはどの部分を楽しんでもらいたいですか?
はじめてゆうらん船を聴く人に向けて言えば、シンプルにソングライティングとボーカルが素晴らしいので、シンガーソングライター的な側面で聴くのがいいのかな。穿った目線でサウンドプロダクション云々とか、難しいことを言う前に、折坂悠太さんを聴くみたいに圧倒的なシンガーソングライターとしてイタルくんを楽しんでもらうのがいい。ひねたサウンドプロダクションというよりも、まずは声から入っていただいた方が間違いない気がします。
— 一回聞いてキャッチーでスッと馴染んで感じられる部分と、違和感があって理解できない部分や展開が両方あるみたいな。
確かにその感じはありますね。とはいえ必ずしも情報量が多い楽曲でもないんですよ。変わったことは確かにやってるけど、普通のロックバンドで使われる楽器が普通じゃないタイミングや組み合わせで使われているケースが多くて。
— 音楽として全体で聞くのもよし、メロで聞くのもよしというか。
あとシンプルに歌詞がいい。「★」の歌詞で「頑張れ ロックンロールだ」って部分にめちゃくちゃ勇気もらうんですよ。すごく嫌味のない人だから、こういうのをまっすぐ歌ってもそこに変なてらいがないから説得力がちゃんとある。心にまで最短距離で届くというか。これはイタルくんしかできないと思います。そういう部分を楽しんでもらえたらいいなと思いますね。
ゆうらん船 内村イタルさんからのコメント
みのさんご無沙汰しております。
この度はゆうらん船ご紹介頂きありがとうございます。
「MY GENERATION」を制作したのは約2年前。ちょうど世の中がコロナパンデミックを迎えた頃に制作を終えたので、僕のなかではこのアルバムを境に、コロナ以前/コロナ以降とくっきり時代が分かれてしまっていて、今となってはノスタルジーさえ感じる、感慨深いファーストアルバムになりました。
「Bridge」は、そんなアルバムの制作直後に出来た曲で、この曲をきっかけに我々はまた次のアルバムの制作に臨んでいるところです。楽しみに待っていて欲しいです。
内村イタル
New EP「Bridge」
2021.11.26(Fri.)Release
1st ALBUM「MY GENERATION」
2020.06.24(Wed.)Release
ゆうらん船
2016年結成。古き良きロック、フォークやカントリーなどを独自に解釈しストレンジなグッドミュージックを届けるシンガーソングライター、内村イタルを中心に結成されたバンド、ゆうらん船。バンドメンバー伊藤里文(Key)、永井秀和(Pf)、本村拓磨(Ba:カネコアヤノband)、砂井慧(Ds:Wannna-Gonna)の演奏が歌に寄り添いながらも優しさだけでなく、様々なグルーヴが混ざり合うことによって、懐かしくもあり新しい、心地良いけど、どこかスリリングなバンドサウンドを聴かせる。
「定期演奏会」と称した自主イベントを不定期に開催。過去にはカネコアヤノ、折坂悠太、ラッキーオールドサン、mei ehara、古館佑太郎、東郷清丸等が出演。
2019年にはFUJI ROCK FESTIVAL 19’(ROOKIE A GO-GO)に出演し、2020年6月には1st Alubum「MY GENERATION」をリリースした。
みのミュージック
YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在33.3万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、今年5月には自身初となる書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。
text:冨手公嘉
photo:照沼健太