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【Nagakumo】渋谷系の真髄に迫るネオネオアコバンド│みのミュージック注目アーティストVol.09

歌舞伎町

インタビュー
みのミュージック注目のアーティスト 音楽
DATE : 2022.07.08
音楽紹介を行う人気YouTubeチャンネル「みのミュージック」を運営するYouTuberであり、新宿歌舞伎町でレコードBAR「烏龍倶楽部」(※)を経営する「みの」さん。会員に限らず音楽と酒を自由に楽しめるバーとして再始動した烏龍倶楽部で、みのさんが今注目しているアーティストを紹介してもらう連載第9回。今月のアーティストは「Nagakumo」です。

「烏龍倶楽部」

「ネオネオ」という宣言が何よりおもしろいバンド

Nagakumo “思いがけず雨”(Official Video)

— 今回紹介いただくNagakumoはどんなアーティストでしょうか?

自ら「ネオネオアコ・バンド」を名乗っているバンドです(注:「ネオアコ」=80年代初頭に隆盛したパンク精神を持ちながらアコースティック楽器の響きを多用した音楽)。この冷めた感じの名乗りが、すごくおもしろいと思いました。「ネオネオ」って、言ってしまえば3番煎じということじゃないですか。それを自ら表明するという。

— たしかに。

でも、ネオアコやそれを含む渋谷系って、オリジナルの時点でリバイバル的な意識の上に成り立っているんですよね。特に90年代のオリジナル渋谷系は、過去の優れた音楽のコラージュや組み合わせでできているみたいなジャンルでした。過去の引用と模倣が色濃く、大ヒット曲や有名曲をたくさんサンプリングしているせいで再発できない名盤もあるくらいです。

YOUNG, ALIVE, IN LOVE – 恋とマシンガン – / FLIPPER’S GUITAR【Official Music Video】

でも、だからこそ「ネオネオアコ」や「ネオネオ渋谷系」みたいな宣言って、逆にオリジナルの精神に忠実な部分もあると思うんです。

— なるほど。「ネオネオ」が「先人たちの音楽を引用・模倣して、新しい音楽を作る」という宣言かのように聞こえてきますね。

そこで意表を突かれた気分になり、Nagakumoは非常におもしろい存在だと感じました。一見、オリジナリティーを放棄しているようで、実はオリジナルのアティテュードに忠実。その表裏一体の感じが非常にクレバーなコンセプトだと思いますね。

その上で彼らの音楽性もまた魅力的です。宣言通りにネオアコや渋谷系の影響が色濃く感じられる音楽を作っているのですが、同時にただの模倣ではなくしっかりとオリジナリティーを感じられる。そこが良いですね。フリッパーズ・ギターっぽさに加えてピチカート・ファイヴっぽさも感じられる女性ボーカルも良いです。なんか「全部同時に味わえる」かのようなおいしさがあるバンドなんですよ。

オリジナル渋谷系の意識を継承する、新世代バンド

— 彼らの過去のインタビューを読むと、YouTubeの関連動画で音楽を知るだけでなく、楽器の弾き方もYouTubeで学んだという話をしていました。

2010年代にシティポップが海外で知られるようになった流れと一緒ですよね。アルゴリズムが人々のテイスト作りに影響している、みたいな。膨大な音楽をディグれるプラットフォームとしてのYouTubeが、リスナーだけでなく、クリエイターにも影響を与え始めているんでしょうね。

しかし、繰り返しとなりますが、これから名乗りを上げていこうという新人アーティストって、前のめりにオリジナリティを表明しがちなところなのに、ひとこと「ネオネオアコ」と言ってしまうのは、すごくクールですよね。

— Nagakumoの曲から一つ選ぶとしたら?

一番好きなのは「Awayokuba」という曲です。疾走感があってポップな、シングル性が高いナンバーだと思います。

Nagakumo『Awayokuba』CM

— 「思いがけず雨」に顕著ですが、ジャジーなドラムに彼らの奥深い音楽性を感じますね。

2000年代のネオ渋谷系って、オリジナルの渋谷系を抽象化したような、サンプリングやコラージュ的な音楽が多かったんですよね。でも、Nagakumoはオリジナル渋谷系が持っている有機的な音楽性を引き継いでいるのが良いと思います。小山田圭吾がカヒミ・カリィに書いた曲のような、ビッグバンドジャズ的フレーバーが入っていたり。

ハミングがきこえる / カヒミ・カリィ【Official Music Video】

こういう部分をしっかり引き継いでいるのも、Nagakumoを薄っぺらく感じない理由の一つになっていると思いますね。

— 最後に、今後Nagakumoに期待したいことを教えてください。

まだ発表されている楽曲が少ないので、まだまだバンドの全体像を掴めてないところがあるのですが、すでに足場がはっきりしている状態だと思います。「ネオネオアコ」と言い切ってオリジナリティを放棄することで、逆説的に立ち位置をしっかり作り、その上で優れた曲を発表している状態です。今度はそこからどれだけテリトリー外へ行けるかを見てみたいですね。小沢健二がスチャダラパーとヒップホップをやったりしたように、オリジナル世代の渋谷系はどんどん外に進んでいきましたよね。そんな感じで、どんどんいろんなジャンルにリスナーを連れて行ってほしいなと思います。

小沢健二 featuring スチャダラパー – 今夜はブギー・バック(nice vocal)

Nagakumoレイジさんからのコメント

みのさん、記事をご覧のみなさん、こんばんは。Nagakumoギターコーラスのレイジです。推薦していただきありがとうございます。というか、めちゃくちゃ驚いています。生粋のYouTube世代でして、みのミュージックのチャンネルを開設された当時の、何が始まるんだみたいなワクワク感がすごく蘇りました。
我々Nagakumoは昨年より活動を開始し、今年3月に2枚目の作品「EXPO」をリリースしました。楽曲の聴きどころとしましては、まずリズム隊のパワーです。ネオネオアコを掲げる上で、ルーツとの差別化が最も濃く表れている部分だと思います。4人でポップスをやりながら、バンド音楽のアルバムを録っているつもりですので、溢れんばかりの衝動を聴いてください。少しマニアックな話ですと、コード進行に興味のある方には是非「思いがけず雨」や「Birthday」の随所に注目して聴いてみてほしいです。結構ぶっ飛んだことをしている筈なので!
現状Nagakumoは大阪を拠点としたマイペースな活動を続ける予定です。ご好意で全国に広めてくださる、素敵な皆さんのお力添えを期待しております!これからもよろしくどうぞ。
(G、Cho / レイジ)

Nagakumo

2021年1月活動開始のネオネオアコ・バンド。写真左からBass オオムラテッペイ Vocal & Guitar コモノサヤ Drums ホウダソウ Chorus & Guitar ホオニシレイジ

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みのミュージック

YouTubeチャンネル「みのミュージック」は現在36.7万人登録者を誇り、自身の敬愛するカルチャー紹介を軸としたオンリーワンなチャンネルを運営中。
Apple Musicのラジオプログラム「Tokyo Highway Radio」でホストMCを務めており、自身初の書籍「戦いの音楽史」を発行し活動の場を広げている。

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text&photo:照沼健太

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