新・歌舞伎町ガイド

エリア

FOLLOW US:

「これはあかんって……!」デニス、怪談ライブBARで震え上がる|吉本芸人×歌舞伎町 Vol.4

歌舞伎町

インタビュー ガイド 遊ぶ
アミューズメント お笑い 吉本芸人×歌舞伎町
DATE : 2022.08.10
吉本興業の多くの芸人たちにとって、「ルミネtheよしもと」からほど近い歌舞伎町は馴染み深い街だ。そんな街で、ゆかりのお店や気になるスポットをめぐっていく連載第4回は、「怪談ライブBARスリラーナイト歌舞伎町店」×デニス。心霊系YouTubeチャンネル「デニスの怖いYouTube(※)」(通称:「デニ怖(こわ)」)が登録者20万人を突破するほどの人気を博しているデニスの植野行雄さんと松下宣夫さんのお二人に、毎晩プロの怪談師のお話を聞けるバーを体験してもらった。

デニスの怖いYouTube

怪談ライブBARスリラーナイト歌舞伎町店は、歌舞伎町の奥を進んだ先にある雑居ビルの3階に居を構えている。重い扉を開けると、おどろおどろしい装飾の壁に囲まれて、シックでラグジュアリーなソファーが並ぶ。怖さと落ち着きがちょうど半々の雰囲気で、ゆっくりしながら怪談を聞けそうな様子だ。

店内のいたるところに、どう見ても怖いインテリアが配置されている

この日、怪談を披露してくれるのは、同店所属の怪談師・スズサクさん。実はスズサクさんは今年3月まで吉本興業に所属していた元芸人で、デニスの後輩にあたる。怪談系イベントで共演経験もあるデニスの2人が「本当に話がうまくて怖い」と認める実力派だ。

久々の再会に旧交を温めてから、いよいよスズサクさんの怪談がスタート。落ち着いたトーンも相まって、デニスも取材陣もどんどんとその世界に引き込まれ、壇上のスズサクさんから目が離せなくなっていく。

スズサクさんの怪談に、真剣に聞き入る2人
まだまだ余裕な表情を見せるが……
徐々に高まっていく怖さに、メンチを切ってるような顔になる松下さん

ネタバレになってしまうため詳細な内容は割愛するが、話が頂点に達すると、店内には「ギャー!!」と全員(特に植野さん)の悲鳴が響き渡った。

恐怖と驚きで座ったまま飛び跳ねてしまい、躍動感あふれる写りになった植野さん

怪談は約15分程度。都合2度にわたって悲鳴が上がり、2人は「これはあかんって……!」と怖さを通り越して憤りすら漏らしている。ただし、植野さんは怪談が終わるとすぐ取材陣の女性たちに向かって「女子、大丈夫か?」と気遣いの言葉をかけていた。変わり身の速さに、松下さんから「格好つけんな(笑)」とツッコミが入る。

悲鳴を上げたことなどなかったかのように女性陣を気遣う。

こうしたスタイルで怪談を楽しむのは初めてという2人に、感想を聞いてみた。

植野:めっちゃ怖かった……。俺、もうソファの背もたれにへばりついてましたもん。聞きながら、何か起こったときに店内から逃げるルートを考えてました。最悪、女子は捨てて自分だけでも逃げようって。

松下:最低やなぁ。スズサクはもちろん話し方が上手で内容も怖いんですけど、話の前後がつながってくるように構成がしっかりしていて、聴き応えのある怖さなんですよね。

植野:元吉本の芸人だけあって、(話術の)地肩がある。

松下:絶対に怖くなって悲鳴を上げちゃうから、ここに女の子と一緒に来たら良いよね。吊り橋効果でめっちゃ仲良くなれるんじゃないかな。若い頃って肝試しに行ったりするけど、廃墟とかだと不法侵入になっちゃうから、ここに来れば安全に恐怖体験を味わうことができる。

植野:心霊スポットやお化け屋敷に行くよりも、怪談を聞きに行くのはすごくハードルが低くていいな。新宿だからアクセスもよくて、お酒を飲みながら楽しめる。ここならラブホテルも近いですし(笑)。

ちなみに、スズサクさんのほうはというと、「ライブで同じ舞台上にいて怪談を聞いてもらったことは過去にもあったんですけど、客席のおふたりを前にして話すのは初めてだったんで、かなり緊張しましたね……」と、汗をぬぐっていた。

写真右端の黒いものがドリンクホルダー。テーブルにくっついているので、これくらいびっくりしても飲み物を倒さずに済む。

植野さんはテーブルに設置されたドリンクホルダーにも注目。観客がびっくりしてもお酒がこぼれないような親切設計となっている。ただ、スズサクさんによれば、中には机ごとひっくり返すほど恐怖におののく人もいるらしく、ここで披露されているのがいかに怖い怪談なのかがわかるだろう。

お店に入ってすぐの位置に貼られた注意書き。

「俺、何してんのやろ」朝の歌舞伎町で我に返った

今回は、夏の歌舞伎町のど真ん中で背筋が冷える体験をしてもらったデニスの2人。この街で、これまでどんな経験をしてきたのだろうか?

松下:吉本本社が新宿なので、デビュー1〜2年目の頃は先輩に連れられてよく歌舞伎町で飲んでましたね。10年くらい前かな? 朝まで営業しててすごく安く飲める居酒屋があって、ミュージシャンとかホスト、芸人とか、夢を持った人ばかりが集まっているんですよ。

植野:朝方になると、ビッグになることを夢見て客全員が泣いてる店な(笑)。従業員も夢見る若者ばかりで、店員さんを呼んでも全然来ないから奥をのぞいたらヘッドホンしてリリック書いてたことがありました。

松下:ギャル店員2人がお互いにピアッサーでピアス開けてたりね。若い頃に先輩たちとそういうお店でお酒を飲む中で生まれた深い絆はあると思います。

植野:僕は芸人になる前は西麻布の飲み屋で働いていて、持ち前の明るさとガッツでお金持ちのお客さんに可愛がられてました。それで、西麻布で飲んだ後は新宿に移動して、ホストクラブとかゲイバーとか、朝までいろんなところでワーって飲むわけです。そんな毎日を過ごしてて、ある日、朝方の歌舞伎町でふと気づいたんです。「俺、大阪から東京来て毎日何してんやろ」って。

松下:歌舞伎町が、その時の自分がダメな状況だってことに気づかせてくれたんや。

植野:朝9時にタンバリン叩いてはしゃいでる中年男性を見かけたりして、それはそれですごいけど、このままいくと俺もそういう人になってしまう、と思ったんです。そこから昼間の会社で働き始めて、その後芸人になりました。

松下:昔の歌舞伎町はそういう雑多な街でしたよね。今はもうすっかり素敵な場所になってますけど。

世界最大級のターミナルである新宿は、毎日何百万人もの人が行き交い、多種多様な人々が集う。必然、そんな街を目指して上京してくる若者も多く、それが歌舞伎町という街のエネルギッシュさにもつながっているのだろう。そして、デニスもまた、お笑い芸人としてさらにビッグになるという夢を抱えて日夜奮闘している。

松下:僕らは結成3〜4年目くらいに仕事がめっちゃ増えて、その時には結構ルミネの舞台にも立たせてもらってました。ただ、芸歴が進んでくると、ルミネに出られる芸人は賞レースのファイナリストや関西で賞を取った人たちばかりになってくるんです。

植野:一応、僕も「ハーフ1グランプリ」って大会で優勝してるんですけど……。

松下:誰も知らんから(笑)。出場組数7組とかやったやろ。今の僕らはルミネ出番がほぼないので、目標の場所になってますね。

一方で、前述の通りデニスは現在、2020年9月にスタートした「デニスの怖いYouTube」(デニ怖)がチャンネル登録者数20万人を突破するなど、心霊界隈を中心に人気急上昇中だ。そもそも、なぜ心霊系YouTubeを始めたのか?

松下:デニ怖のコンセプトは「売れてる芸能人には霊がついてる。だから俺らも売れるために霊をつけよう」ってところなんです。「売れてる芸能人には霊がついてる」説は、デニ怖のスタッフでもあるテレビディレクターの千葉(龍)さんが手がける心霊特番に出演した霊能者の方が提唱してたんですね。千葉さんは、出川哲朗さんと一緒に世界を回って熊とキスする企画とか、すごく過激な企画を担当されてる方で。お仕事でご一緒した時に行雄ちゃんが仲良くなったんです。

植野:海中で俺が薄い鎖帷子(くさりかたびら)着てるところに大量のサメを呼んだり、メキシコで飛行機に乗せられて無茶苦茶されたり、今のテレビだと絶対できないようなことをたくさんやらされました(苦笑)。そこから親しくしていて、あるとき千葉さんと松下と3人で釣りに行ったんですよ。そこで「YouTubeやりたいんですよね」と言ったら、千葉さんも「YouTubeで心霊をやりたいと思ってた」という話になって。

松下:僕らは当時、TikTokしかやってなかったんです。周りの芸人のYouTubeを見ると、人気がある人は登録者数が伸びているけど、僕らが今さら“面白チャンネル”をやっても厳しいだろうと思っていて。良い案が出ずに悩んでいたところでした。千葉さんは千葉さんで、今はなかなか地上波で心霊番組ができないからYouTubeでやろうかと考えていたところだったらしくて、お互いにタイミングがハマったんですよね。

植野:だから僕らは別に、もともと心霊に興味あるとか怪談が好きとかじゃ全然なかった。心霊好きな人がこんなにたくさんいるんや、ってYouTubeを始めてから知りました。

松下:出来上がった映像を見たら、千葉さんはじめプロの方たちがつくってくれているので、ほかの芸人YouTubeと比べてもすごくクオリティの高い番組になってると思いました。テレビ番組に出てるような感覚で撮影してますね。あと、僕らはこれまで行雄ちゃんが前に出る仕事が多かったんですけど、YouTubeだと心霊スポットで“めっちゃビビる行雄ちゃん”と“ガンガン行くヤバい僕”ってキャラ分けが生まれて、それが際立つような編集をしてくれていて、すごく感謝してます。そうか、俺らの良いバランスを出すには心霊が一番だったんやな!って。

植野:いや、そんなことはないで?

来る8月13日(土)には、よしもと有楽町シアターにて『デニ怖プレゼンツ「真夏に凍える絶叫ライブ~気狂いたちのサンバカーニバル!!~」』ライブが控えている。これまでのデニ怖イベントでは、いわく付きの最強呪物を決める『呪物-1グランプリ』や、呪いのアイテムに呪われる罰ゲームといったハードな企画を展開してきた。

松下:今回も、“怖い”だけでなく、楽しめるような企画を準備中です。ありがたいことに会場チケットは完売しているんですが、デニ怖イベントは配信も盛り上がるんですよ。毎回、動画を見てる人たちがコメント欄で「今、変な声しなかった?」とか「何か映った!」ってなっていて。

植野:僕ら、みんな霊感ゼロで心霊スポットに行ってるんです。だから、霊媒師の人たちがデニ怖の動画を見たら、一番霊が集まってるスポットで休憩したりしてるらしいです。もしライブに来て、何かに取り憑かれて体調悪くなっても除霊はできませんが、水を飲ませて夜風にあたってもらうくらいの対処はできます。だから安心して来てほしいですね。

松下:それこそ怪談バーに行っても女の子の前でビビらんように、デニ怖イベントで心霊モノへの耐性をつけておくのもええかな、って思います。

植野:デニ怖はポップなんで、心霊の入門編にちょうどええと思いますよ!

……ちなみに本取材は、怪談ライブBARスリラーナイト歌舞伎町店での怪談体験取材と、「MASH UP! KABUKICHO」編集部の会議室でのインタビューという形で行われた。取材中はその場にいる誰も気づいていなかったが、本稿執筆にあたって会議室でのインタビュー音源を聞き返したところ、植野さんが話している途中、そこに被さる形で猫のような鳴き声がはっきりと入っていた(当然、ビルの上層階にある会議室近辺に猫がいるはずもない)。もしかしたら、YouTubeで数多くの心霊企画に挑戦するうち、すでに2人には何かが憑いてしまっているのかもしれない……。

このときの2人は、そんなことが起きていたとは知るよしもなかった……。

デニス

植野行雄(うえの・ゆきお/1982年7月17日生まれ、大阪府出身)と松下宣夫(まつした・のぶお/1984年5月28日生まれ、徳島県出身)のコンビ。東京NSC15期の同期で2010年結成。

YouTube「デニスの怖いYouTube

▼植野行雄
Twitter
Instagram

▼松下宣夫
Twitter
Instagram

ライブ『デニ怖プレゼンツ「真夏に凍える絶叫ライブ~気狂いたちのサンバカーニバル!!~」』

日時:2022年8月13日18:00開場18:30開演
場所:よしもと有楽町シアター
出演:デニス/ウォーリーズジャパン シークエンスはやとも/ウォーリーズジャパン 金城めくるくん/他
会場チケット完売/配信チケット販売中
FANY Onrain Ticket

Photo:映美
Text:須賀原みち
Edit:斎藤岬

こんな記事もおすすめ