※平成28年 総務省統計局・経済産業省「経済センサス-活動調査」より
西口駅前のディープな良心|新宿西口 思い出横丁
新宿西口駅前から線路沿い北側へ、青梅街道側まで広がる約630坪のメモリアルな楽園。ここが、終戦直後の焼け野原にできた露天商をルーツとする「思い出横丁」だ。もつ焼きや焼鳥店を中心に約80店舗(チケットショップ等含め)がひしめき合い、国内外の人々がえびす顔で行き交う、ディープな雰囲気がたまらない。
当然、各店は実力派ばかり。横丁の誕生時当初から営業する町中華の「岐阜屋」やもつ焼きの「宝来家」、豚足が名物の「らくがき」に、串煮込みが魅力的な「ささもと」といった最古参のほか、珍しい食材を豊富に扱う「朝起」や、自家製麺ラーメンと焼きそばの名店「若月」の流れを汲む「次作」など個性派も粒ぞろい。
また、天玉そばの元祖といわれる「かめや」、純喫茶の「但馬屋珈琲店」など、食事やくつろぎの時間を楽しめる名店もあまた。昼から飲める店が多く、アクセスの良さから気軽に立ち寄れることも人気の理由となっている。新宿でちょっと飲んで帰りたいとき、重宝する場所だ。
世界的にも有名な木造長屋の酒横丁|新宿ゴールデン街
住所は新宿区歌舞伎町1丁目。新宿区役所と花園神社の中間付近にあるのが「新宿ゴールデン街」だ。こちらの出自も「思い出横丁」同様に、戦後のマーケットがルーツ。約2000坪の区画に低層の木造長屋が連なるレトロでミニマムな商店街だが、そこには200軒以上の飲食店が密集し、独特のカオティックな世界を醸し出している。
かつては文壇バーが多く、作家や映画監督、編集者などの文化人が夜な夜な集まりサブカルチャー発信地としての存在感を示していたが、昨今は近代化や店主の世代交代などもあって業態が多様化。また、国内外からの観光客が多いこともあり、入店しやすいオープンな雰囲気の酒場が増えている。
老舗の有名店を挙げるなら「呑家 しの」や「Bar ロベリヤ」など。近年ではレモンサワーが名物の「OPEN BOOK」や、いまやグローバルなブランドとなった「ラーメン凪」の1号店などが有名。最近は店の外にメニューや料金が貼り出されているケースも多いので、初めて訪れる人はそういったお店からデビューしてみるのがおすすめだ。
レジェンド店も多数の酒飲みの聖地|末広通り商店会
都内に4軒存在する落語定席のひとつ「新宿末廣亭」を中心に、新宿通りから靖国通りへ抜ける飲食店街が「末広通り商店会」。1951年に「新三親交会」として発足したのがルーツだ。最寄りは新宿三丁目駅で、歌舞伎町エリアとはまた違った意味での大人な雰囲気を醸し出している。
こちらも場所柄、エンターテインメント関係の業界人が昔からよく訪れる飲み屋街となっていて、「ESPA」「呑者家」「鼎(かなえ)」「新宿 栄寿司」「薩摩おごじょ」といった老舗は文化人のファンも多数。作品やドラマに登場することもあり、名実ともに酒場の聖地となっている。
近年は立ち飲みの「日本再生酒場」、ホルモンやもつ煮込みが人気の「沼田」、鶏料理が名物の「大衆酒場 鳥の素揚げ ほしの2号店」、コスパ抜群な「がむしゃら」などの実力派も台頭。さまざまなお店ではしご酒を楽しみたいなら、ここがおすすめだ。
繁華街の奥地で輝く赤提灯の飲食施設|歌舞伎町レッドのれん街
新宿区役所の北側にある「思い出の抜け道」。この通り脇に戦前からあった3棟の長屋を改築した飲食施設が、2018年開業の「新宿歌舞伎町レッドのれん街」だ。
店内では7種の業態が営業し、1階は5店舗。姫路で人気の炭火串焼き酒場「まるまさ」、牛タンをメインとした大衆酒場「牛タンいろ葉」、ホルモンと肉指しが名物の「トッコちゃん」、素材と向き合った焼鳥がウリの「神鶏」、昭和レトロな空間で豊洲直送海鮮串カツを堪能できる「東京串カツ かっちゃん」が軒を連ねる。
そして2階は歌舞伎町ならではの、個性的な空間。色とりどりのランタンが美しいBAR&カラオケの「灯鏡」、フレンドリーな接客と時間無制限飲み放題が人気のエンタメ酒場「類は友を呼ぶ」が朝まで営業している。ここに行けば、きっと好みの一軒があるはずだ。まずは「思い出の抜け道」に足を運んでみよう。
20軒の飲み屋を有する代々木の新名所|ほぼ新宿のれん街
最寄り駅でいえば代々木だが、新宿から歩いてでも訪れるべき横丁が「ほぼ新宿のれん街」(本館、倉庫別館)だ。ここは2017年に7店舗からオープンし、徐々に増床を繰り返して2023年には計20店舗の陣容に。当初は7棟だったが古民家群が拡大し、まさにのれん街へと発展した。
各店舗は顔ぶれも多彩で、シャンパン&餃子バル、スパニッシュイタリアン、うな串焼鳥、鉄板もんじゃ、カラオケバー、韓国料理、寿司居酒屋、スペアリブ&世界のウイスキーなど、定番に個性派にとより取り見取り。背後にそびえるドコモタワー(NTTドコモ代々木ビル)とのロケーションなど、写真を思わず撮りたくなるスポットも多く、訪れるだけでも価値がある飲み屋街だ。
業態が数多く、「ほぼ新宿のれん街」に来れば必ず目当ての食や酒にありつけること間違いなし。ターミナル駅から適度に離れた距離感は、かえって新宿で飲んだ後の酔い覚ましにちょうどいいともいえる。
24時間営業の眠らない飲み屋街|新宿カブキhall~歌舞伎横丁
2023年、「東急歌舞伎町タワー」の開業とともにオープンした同施設2階の飲み屋街が「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」だ。コンセプトは“古き良き文化を現代に甦らせ、次世代に繋げ、次代の「溜まり場をつくる!」”。約1,000平方メートルのフロアに、「祭り」をテーマに食と音楽と映像を融合させた空間が展開されている。
全10店舗あり、食のジャンルは北海道から沖縄までのご当地料理。加えて韓国も含めた地域のソウルフードと酒が集まっている。そのうち、「中国四国食祭」「横浜中華食祭」「九州沖縄食祭」はほぼ24時間営業しているのもうれしい。
また、ホール内には大型LEDビジョン、DJブース、ミラーボール、カラオケなど最新の照明と音響を完備したステージが用意され、不定期でイベントも開催。その目の前にあるカフェバー「KABUKI CAFE」は日中から気軽に、または夜カフェとしても利用できる。にぎやかな雰囲気を楽しみたい人には特におすすめのスポットだ。
多彩なグルメが集う不夜城|龍乃都飲食街~新宿東口横丁
新宿駅東口から「ルミネエスト新宿」の東側に徒歩約2分。2022年にオープンした全17店舗のエンタメ系飲食街が「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」だ。深海の底にあるといわれる竜宮城のある都「龍乃都」をイメージした、艶やかな空間となっている。
1階は、24時間営業で展開。日本全国のご当地グルメが一堂に介する「日ノ本」や、韓流飯の「韓明洞」、タイ屋台飯の「バングラ」などアジアなジャンルとなっている。
そして、地階は日本の名所をモチーフとした全12業態を昼の12時から翌朝5時まで営業(店舗や曜日によって営業時間の変動あり)。九州屋台×博多飯の「博多屋台屋」、吉原×鶏料理の「炎上」、伏見稲荷×鉄板焼きの「鉄板堂」、厳島神社×貝料理の「貝道」、東照宮で肉尽くしの「肉宮」などバラエティ豊かにラインナップされている。新宿駅の近くで24時間営業と実に使い勝手がよく、終電まで飲みたいときにも重宝する飲み屋街だ。
次の乾杯は「とりあえず飲み屋街」で!
国内外のさまざまな食と酒を楽しむことができ、にぎやかな雰囲気にあふれる新宿の飲み屋街。それは、この歓楽街の魅力をギュッと凝縮したパラダイスともいえるだろう。昭和的な飲みの作法に「とりあえずビール」というキラーフレーズがあるが、新宿で飲みたくなったら「とりあえず飲み屋街」が大正解なのかもしれない。
文:中山秀明