ファッション、そしてカルチャーを共通言語に、THE FOUR-EYEDと「ナラッキー」の化学反応がもたらしたものとは。多幸感あふれる一夜となったDJパーティーの模様をレポートする。
ファッション通を惹きつけてやまない「THE FOUR-EYED」のユニークで尖ったセンス
Google Mapを頼りにしても、初見でTHE FOUR-EYEDに辿り着くのはなかなか難易度が高い。ちいさな青い看板を目印に、ラブホテルのエントランス脇を通り抜けるとそれは現れる。まるで秘密基地を探し当てたように気分があがる瞬間だ。
もともと廃墟だったというビルを改装した店内には、独自の審美眼で買付けした国内外の気鋭ブランドがずらり。そのユニークで尖ったセンスには、多くのファッション通が惹きつけられるという。この場所が単なる服屋にとどまらず、カルチャーを通じたコミュニティスペースとしても機能しているのも、その求心力の賜物だといえるだろう。
アニバーサリーの舞台に、王城ビルの地下が選ばれた理由とは?「東京のカルチャーの、新たなランドマークになりうる」
2023年9月11日に開店7周年を迎えたTHE FOUR-EYED。「四目的闇落7周年派對 in『奈落』东京新宿歌舞伎町的尻穴」と題し、9月9日にアニバーサリーイベントが開催された。
会場は歌舞伎町・王城ビルの地下1階。現在、王城ビルではChim↑Pomによる展覧会「ナラッキー」が開催中で、地下は《Asshole of Tokyo》と名付けられたイベントスペースとなっている。
▼「ナラッキー」詳細レポはこちらから
歌舞伎町の新アートプロジェクト第一弾。Chim↑Pom from Smappa!Groupが見出した「奈落」から見上げるものとは?
まずはこの場所が会場に選ばれた理由とは? THE FOUR-EYEDオーナー・藤田佳祐氏に話を聞いた。
「最初のきっかけは、Smappa!Group会長の手塚マキさんに声をかけていただいたことでした。お話を聞いて、新宿の風景の一部や、そこに集まる人たちも『ナラッキー』という作品の一部になればいいなと思ったんです」(藤田氏・以下同)
「ナラッキー」は、王城ビルの「歌舞伎町アートセンター構想」プロジェクト第一弾でもある。新宿のファッションカルチャーを牽引するショップとして、意識はしていたか? そう聞くと、意外にもこんな答えが返ってきた。
「THE FOUR-EYEDは、新宿のカルチャーをひっぱる存在というよりも、”この街に生まれつつあるカルチャーの発信地”、というのが正しいと思っています。歌舞伎町というとやはり繁華街のイメージが強いので、服屋はある種、異端な存在である自覚はあって。だからこそ、これからの歌舞伎町を“カルチャーのある繁華街”にしていく、一石を投じる存在でありたい」
実際、近頃の歌舞伎町には新たなカルチャーの芽生えを感じる瞬間もあるという。
「今年春にZEROTOKYO(東急歌舞伎町タワー内のナイトエンターテインメント施設。クラブイベントなどを実施)ができたことで、これまで渋谷や原宿で遊んでいた子たちが、新宿にも来るようになっているのを僕らも肌で感じています。ここ王城ビルも、新宿の──ひいては東京のカルチャーの、新たなランドマークになりうるのではないでしょうか」
奈落の底がDJフロアに! 多幸感あふれるその現場をスナップ
アニバーサリーイベントには、DJ/アーティストとしてEtherion、Sharar Lazima、NTsKi、ViDA、MARZY、tamanaramen、ぼく脳、A-FOXが出演。
ブッキングは藤田氏自らによるもの。お店に縁のあるアーティストたちを呼んだという。なんでも、THE FOUR-EYEDをきっかけにDJを始めた人も多いのだそうだ。
「うちに来るお客さん、特に若い方たちは、世の中に対するモヤモヤを抱えている人も少なくありません。そんななか、店を介してお客さん同士、スタッフ同士で刺激を受け合って、DJを始めたり、イベントを主催したり、さまざまな形でアクションを起こす人たちを数多く見てきました」と藤田氏。
そんな日々のわだかまりを晴らすように、DJ一人ひとりの手によって王城ビルの地下空間──新宿の“奈落”が音楽で満たされていく。まるで演者同士で手渡ししていくように、切れ目なくビートが紡がれていくのが心地いい。
この日は、まだ外に明るさが残る夕方からDJプレイが始まり、思い思いのお気に入りに身を包んだTHE FOUR-EYEDファンが続々と集まってきた。夜が深くなるにつれ、目に見えて盛り上がりも加速していく。
気づくと、ナラッキーに在廊していたChim↑Pomのメンバーもフロアに登場!
同じくナラッキーに在廊中だったもしもしチューリップの3人もフロアに降り立ち、DJプレイの音に乗せたゲリラパフォーマンスで観客たちの目は釘付けに。予定調和なし、突然に始まる「今、ここ」だけの物語もまた、どこか歌舞伎町らしさがあってグッとくる。
もともと展覧会目当てに王城ビルを訪れていたと思しき人々も、気づけばパーティーの渦の中へ。「アート」や「カルチャー」という共通言語を媒介に、各々が自由に過ごし、シームレスにつながっていく。
カルチャーと出会い、人と出会う「場所」がある意義
イベント終了時には夜の0時をまわっていた。ビルの階段を上がり、地上へと出ると、歌舞伎町の夜がいっそうの賑わいを見せている。
多幸感の余韻をまとったまま歩くと、この街のカオスもなんだかいつもと違って見えるから不思議だ。
「場所」があって、人が出会い、カルチャーが生まれる。THE FOUR-EYEDとは“新宿に生まれつつあるカルチャーの発信地”であると藤田氏は言ったが、7年前に投じられたその波紋は、確実にこの街に新しい色を呼び起こしつづけているのではないだろうか。
そして今、王城ビルという新たな起点を得て、歌舞伎町にさらなるうねりが誕生していきそうな予感がする。そんな期待を感じる一夜だった。
文:徳永留依子