富江弘幸
ビールライター、編集者。1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務などを経てビアライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。著書に『教養としてのビール』(サイエンス・アイ新書)、『BEER CALENDAR』(ステレオサウンド)などがある。
ヤッホーブルーイングの個性的なビールが楽しめる|YONA YONA BEER WORKS歌舞伎町店
西武新宿駅から徒歩3分、シネシティ広場のすぐ横にあるヒューマックスパビリオン新宿アネックスの1階に、ヤッホーブルーイングのビールが楽しめる「YONA YONA BEER WORKS歌舞伎町店」がある。
「YONA YONA BEER WORKS」は都内に8店舗、そのうち新宿には歌舞伎町店ともう1店舗(新宿東口店)も展開している。
ヤッホーブルーイングのビールは、「よなよなエール」「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など、個性的なネーミングと味わいが人気。多くのコンビニやスーパーでも取り扱っているので、目にしたことがある人も多いだろう。YONA YONA BEER WORKSでは、限定ビールも含めヤッホーブルーイングのビール10種類前後を味わうことができる。
よなよなエールなどはコンビニでも買える……のだが、ぜひここで樽のビールを楽しんでほしい。よなよなエールは柑橘系の香りが特徴的で、缶で飲んだときよりも香りが華やかに感じられ、新たな驚きがあるはずだ。
とはいえ、普段買えるようなビールではなく限定ビールが飲みたいという人は、YONA YONA BEER WORKSでしか飲むことができない「WORKS ALE(ワークスエール)」をチェック。いつも同じ味わいというわけではなく、年に何度か新しい味わいのWORKS ALEがリリースされている。ただし、人気でなくなってしまうこともあるため、提供されていたらぜひとも飲んでおきたい。
どれを飲んだらいいか迷ってしまう……という人には、「BEER FLIGHT(ビアフライト)」がいいだろう。BEER FLIGHTは飲み比べセットのことで、「3種飲み比べセット」と、10種類のビールを楽しめる 「よなよなメリーゴーランド」の2種類がある。よなよなメリーゴーランドは見た目にも楽しく、大勢で訪れたときにはマストで注文してほしい。
また、YONA YONA BEER WORKSではフードも見逃せない。「伊達鶏のローストチキン」をはじめ、ビールとのペアリングの相性を考えたフードがそろっている。よなよなエールの特徴である柑橘系の香りと、伊達鶏の旨みはベストマッチ。クラフトビールの楽しみ方がわからないという人も、まずはYONA YONA BEER WORKSからクラフトビールの世界に足を踏み入れてほしい。
醸造設備併設のブルーパブ|Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen
「Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen」は、JR新宿駅南口から徒歩7分ほどのところにあるブルーパブ(Brew Pub)。ブルーパブとは醸造設備を併設しているパブのことで、新鮮なビールをその場で飲めるのが魅力だ。店名にもBrewery(醸造所)とあるように、店に入るとガラス越しに醸造設備を見ることができる。
1階は、キャッシュオン形式で1杯ずつ購入できるスタンドのため、少人数でビールをサクッと飲むのにもぴったり。ふらっと気軽に入れるので、仕事終わりに1杯だけビールを飲みたいというときにも重宝するお店だ。
醸造設備を見ながら、そこで造られたフレッシュなビールを飲むのは最高のひととき。ここが新宿だということを忘れてしまうかもしれない。
一方、7階は大人数の会合にも適した、開放感のあるビアキッチン。ビールに合わせやすい「カジュアルアメリカンフレンチ」が楽しめる。「骨付き上州もち豚のグリル」や「大山地鶏のグリル」といったメインのほか、ハラペーニョのフライの「ハラペーニョポッパーズ」「広島産大粒カキのNY風miniオイスターバーガー」といった、見た目からおいしそうな料理がそろっている。
ちなみに、Y.Y.G.の由来はその住所である渋谷区代々木から。そういったこともあり、提供している定番ビールには、地名が付けられたビールがある。Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchenで飲んでおきたいのは、やはり「新宿ペールエール」だ。柑橘系の香りとモルトの味わいのバランスが心地よく、どんどん飲み進められてしまう。迷ったら1杯目にはまず新宿ペールエールを飲んでおこう。
ほかにも、フルーティーなフレーバーも感じつつ、ほんのりローストっぽさもある「代々木アンバーエール」、しっかりした苦みを感じられる「渋谷IPA」といった魅力的な定番ビールも。提供しているビールはほとんどがYYG Brewery & Beer Kitchenで造られたビールだが、時期によってはゲストビールもあり、1階では最大14タップ、7階では8タップと、提供しているビールの数と種類が異なっている。
また、ビールのメニューにはおすすめのペアリングも記載されているので、料理を注文するときの参考に。新宿で気軽にビールを飲むなら、Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchenをおすすめしたい。
ベルギービールの魅力がつまった名店|ブラッセルズビアプロジェクト新宿
こちらもJR新宿駅南口から徒歩7分ほど。YYG Brewery & Beer Kitchenと同じ通りに、ベルギービールの名店「ブラッセルズビアプロジェクト新宿」がある。2017年にオープンしたベルギービールの名店だ。
店舗は2階建ての一軒家で、1階はハイスツールもしくは立ち飲みのスペース。1階のカウンターでは、目の前にビールのタップがあるので、ビールが注がれるのを見ながら飲むのも楽しい。
2階は木目調の落ち着いたデザインで、ゆっくりビールと料理を堪能できるスペースになっている。
ベルギービールは味わいの豊富さが楽しさのひとつ。もちろんブラッセルズビアプロジェクト新宿でもさまざまな味わいのベルギービールを飲むことができる。フルーツビールのような甘いビールから、ランビックという酸っぱいビールまで取り揃えているので、自分の好みに合うビールが見つかるはずだ。ビールの味わいだけでなくグラスやコースターのデザインもさまざまで、見た目にも楽しめる。
また、数人で訪れたときには、ぜひベルギービールの大瓶を飲んでもらいたい。ベルギービールは同じ銘柄でも小瓶、大瓶、樽などの種類があり、微妙に味わいが異なることもある。もちろんビールや保管の状況によってどんな違いがあるかは変わってくるが、樽は比較的フレッシュな味わいで、大瓶の場合はまろやかさが出てくるといったような違いだ。
飲み比べをするならデュポン醸造所の「セゾンデュポン」をおすすめする。セゾンというビールは、もともと夏の農作業の合間に飲むビールとして造られたもので、ホップと酵母が織りなすフルーティーかつ爽やかな香りが特徴。小瓶、大瓶、樽の違いを試してみてもらいたい。このように、いろいろな銘柄を飲み比べするだけでなく、同じ銘柄を飲み比べするという楽しみ方ができるのも、ブラッセルズビアプロジェクト新宿の魅力だろう。
なお、ブラッセルズビアプロジェクト新宿の料理は、熟成肉のステーキが売りだが、ベルジャンフリッツ(ベルギー産フライドポテト)も食べておきたい。フリッツはベルギーが発祥でマヨネーズソースをつけて食べるのが基本。ベルギーのビアカフェにいるような雰囲気の中、ベルギービールとフリッツの組み合わせをぜひ試してほしい。
日光金谷ホテルのメニューとクラフトビールを味わえる|NIKKO KANAYA HOTEL CRAFT GRILL
新宿三丁目駅のA1出口などから徒歩1分、BEAMS JAPANが入っているビルの地下1階に「NIKKO KANAYA HOTEL CRAFT GRILL」がある。店名の通り、「日光金谷ホテル」が協力し、小山薫堂がプロデュースした、日本のクラフトをコンセプトにしたレストランだ。地下1階にあるので外から店内の様子はわからないが、高級感あふれる店内で落ち着いてビールと料理を楽しめる。
店への階段を降りていくと、カウンターと10種類のタップが目に入ってくる。タップにつながっているのは、日本各地で造られたクラフトビール。ビールのスタイルも、すっきりとした味わいのピルスナーや苦みの強いIPA、フルーティーなホワイトエールなど、さまざまなテイストがそろっている。
NIKKO KANAYA HOTEL CRAFT GRILLでは、せっかくなので「日光金谷ホテル Specialite」の料理と合わせてビールを選びたい。大正時代から歴代料理長に受け継がれているという伝統のクリームコロッケをベースにした「大正カニクリームコロッケット」にはピルスナー系のビール、国産牛を柔らかくなるまで煮込んだ「牛肉のクラフトビール煮」には色の濃いビール、といったようなペアリングを考えるのも楽しい。
それでも迷ったら、「YOKOHAMA XPA」のようなIPAをおすすめしたい。料理はしっかりした味付けのものも多いので、それに負けない苦みのあるビールが合う。ビールで口の中もリセットされて、次の料理の一口もおいしく味わえる。
ビールと料理を楽しんだら、最後に日光金谷ホテルの100年前の味を復刻した「新宿百年ライスカレー」を。大人数で賑やかに飲むのもビールの楽しさのひとつだが、落ち着いた店内で、じっくりとビールと料理の味わいを感じてみてはいかがだろうか。
とにかくコンディションにこだわったビールを提供するビアパブ|HIGHBURY-THE HOME OF BEER
新宿御苑前駅から徒歩2分。飲食店などはあまり多くない路地に、とにかくビールのコンディションにこだわった名店がある。「HIGHBURY-THE HOME OF BEER-」は、国内外でビール醸造経験のある店主・安藤さんが「ビールで世界を表現すること」をテーマとして2016年にオープン。
カウンターはイギリスのパブを再現していたり、日本では飲めるところが少ないカスクコンディションビール(店内のセラーで熟成させて仕上げるビール)が飲めたりと、ビールの楽しさがつまっているお店になっている。
この店の魅力は、ビールのコンディションにこだわっていること。入荷したビールは必ず24時間は静置して落ち着かせてから提供するなど、とにかくビールをおいしく飲むにはどうしたらいいかを優先している。
どれを飲んでもおいしいのは間違いないが、イギリスの「ソーンブリッジ」というブルワリーの「ジャイプール」がおすすめ。ソーンブリッジは店主も醸造経験があるブルワリーで、雑味のないきれいな味わいのビールを造っている。ジャイプールはフルーティーな香りが感じられるIPAで、苦みも強いのだが麦芽の甘み・旨みとのバランスが絶妙。
また、いわゆるクラフトビールばかりでなく、「サッポロ生ビール黒ラベル」や「ヱビスビール」も一度は味わっておきたい。通常のタップはハンドルを手前に倒すとビールが出るが、同店ではハンドルを横にスライドさせるとビールが出るスイングカランを使用。スイングカランは最近ではもうあまり見なくなり扱いも難しいものだが、店主の探究心と熱意によって、他店とは味わいの違うこだわり抜いたビールが提供されるので、ぜひ飲んでみてほしい。
「いつ訪れても最高のコンディションのビールが飲める」という店をひとつ知っておくと、ビール好きは安心だ。確実においしいビールを飲みたいというときには、HIGHBURY-THE HOME OF BEER-を訪れてみよう。
新宿にはあらゆるビールの楽しさが詰まっている!
新宿にはさまざまなクラフトビールの店があるが、その中でも間違いなくおすすめできるクラフトビール店を5店舗紹介した。ビール自体がそもそも多彩な魅力を持つお酒だが、さらに各店舗の個性がかけ合わさって、ビール好きには天国のような場所だといえるだろう。
新宿には紹介した店舗以外にも選択肢はたくさんある。そのときの気分に合わせて店やビールを選べるのは幸せなことだ。新宿でぜひビールのあらゆる楽しさを体験してほしい。
文:富江弘幸
写真:玉井俊之