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ゲイカップルの夜パフェ専門店が、新宿二丁目ではなく歌舞伎町にある理由

歌舞伎町

インタビュー 食べる
夜パフェ
DATE : 2019.11.14
歌舞伎町のはずれに、深夜だけ営業しているパフェ専門店がある。

「ロイトシロ(RoytoSilo)」と名付けられて2019年6月にオープンしたそのお店は、足を踏み入れると軽やかなアコーディオンの音楽が流れる。

所狭しとペンギングッズが飾られており、壁は一面パステルブルーで、床は白っぽい木目調。深夜の歌舞伎町とは思えないほど明るい店内は、穏やかで優しい印象だ。

夜に食事やお酒を楽しんだあとにパフェを食べる“シメパフェ”の文化は近年札幌すすきので始まり、東京にも店舗が増えているが、歌舞伎町ではロイトシロが初出店となる。

色とりどりのパフェに飾られた絵本、まるで子供の夢のなかにいるようなそのお店は、なぜ夜の歌舞伎町で営業しているのだろうか。

新宿二丁目でオープンしなかった理由

カウンターの中には男性が2名。パティシエの和志(かずし)さんと、ギャルソンの玄太(げんた)さん。彼らはゲイのカップルだ。

左が玄太さん、右が和志さん。笑顔で穏やかな二人が優しく迎えてくれる

なぜ彼らは「ゲイカップルによるパフェの店」とオープンにしながら、新宿二丁目ではなく歌舞伎町に店をつくったのだろうか。

「『ゲイだから』と新宿二丁目にお店を出してしまうと、二丁目の中では話題になるかもしれないけど、そこに馴染みのない方々が来づらくなってしまう。いろんな方が交流しやすく落ち着いた場所をつくりたいと思っていたので、歌舞伎町のはずれにお店を出しました」(玄太さん)

「ゲイカップルは世間的にクローズドな存在ではありますが、それでも僕ら二人が同じ夢をもってやっていることを、多くの人に知ってもらいたいと思っています」(和志さん)

実はペンギンは同性愛の象徴。中央にある絵本『タンタンタンゴはパパふたり』に出てくるペンギンが「ロイ」と「シロ」

「昼営業のカフェだと行きづらい」という男性客も、安心して甘いものを楽しむことができる。昼に働きお酒を飲んだ帰りの人もいれば、歌舞伎町で働く夜の仕事をする人が息抜きにも来る。LGBTのお客さんも来る。

場所は歌舞伎町、店員はゲイの男性2名、パフェ専門店。結果的に昼間のカフェ以上に客層は幅広くなっていた。

パティシエ歴9年目の和志さんが作るかわいくておいしいパフェ

パフェは定番メニューが3種類。

ホワイトチョコレートとミントで構成される「SILO(シロ)」、キャラメルのアイスとソースにバナナとオレンジをあわせた「ROY(ロイ)」、そしてピスタチオといちごをあわせた見た目がかわいらしい「TANGO(タンゴ)」。そして2週間に一度変わる季節限定のパフェが1〜2種類ある。

右から「SILO(シロ)」、「ROY(ロイ)」、「TANGO(タンゴ)」
メニューには、2周間ごとに変わる季節限定パフェも(ロイトシロ公式インスタグラム@roytosiloより)

パリのパティスリーでも修行を積んだ経験がある、パティシエ歴9年目の和志さんが手がけるパフェは、どれも素材や味のコントラストが楽しく、見ても食べても最後まで飽きない工夫がされている。

「お酒やお食事のあとにも気軽に楽しんでいただけるよう、小さめの器を使用しつつ、素材や味わいの軽さにこだわっています。たとえば『SILO』には中間にミントのジュレを使用して、さっぱりしつつ食感も楽しんでいただけるようにしています。食べ切りやすいサイズと味わいのせいか、“追いパフェ”と言って2杯目を注文される方も少なくありません」(和志さん)

実際3種のパフェを食べ比べてみたが、「SILO」は刻んだホワイトチョコレートがミントアイスの中に混ぜ込まれていて、濃厚かつ爽やか。「ROY」は甘いものが得意でなくても食べやすいほんのりビターな味わいが印象的。「TANGO」はマカロンやクッキーが乗っているので他よりも食べ応えがあるが、味のコントラストが強く飽きずに食べきれる。

パフェは同じものをいつも頼む人もいれば、毎回違うものを頼む人も、追いパフェで一度に何種類も楽しむ人もいるという。それぞれに個性が大きく異なるので、いくつも楽しみたくなるのには納得だ。

「昼営業も始めます」二人で描くロイトシロの夢

二人で集めたペンギングッズは、お店にも自宅にもどんどん増えているそう。「パフェも絵本もあるので、お子さま連れの方にも気軽に来てもらいたいです」と二人は話す

彼らは深夜にお店を営業しながら、昼の仕事も続けている。朝4時までパフェを提供し、帰宅して数時間眠り、朝には出勤する。

「ロイトシロには、昼のお仕事をされている方々もいらっしゃいます。僕としては、昼の話も夜の話もできる人でありたい。夜だけ働いているとどうしても感覚が変わってしまうので、昼の感覚を忘れたくないと思っているんです」(玄太さん)

激務の日々を過ごしながらも、SNSやブログはこまめに更新されている。営業日はもちろん新作パフェの情報、画像や動画の投稿まで。お店へ行ったことがない人も、つい思わず応援したくなるはずだ。

お店でもSNSでも、自分たちが提供するものでお客さんに喜んでもらいたい。そんな気持ちが伝わってくる二人の、これから描く夢を聞いた。

「先月から月に一度、お子さま連れ優先で予約制の昼営業を始めました。すごく好評だったので、継続的にやりたいと思っています。夜パフェ専門店として始めましたが、今後はもっといろんな方々にも来ていただけるようなお店にしていきたいですね。

『ちょっと甘いもの食べたいな』だけじゃなく『ロイトシロのパフェを食べたいな』という方々にも来ていただけるようになっていったら嬉しいです」(和志さん)

text:鈴木梢
photo:小坂茂雄

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