一歩入れば多くの飲食店がひしめくが、実はこの界隈、鍋が名物の老舗店が多いのをご存知だろうか? オンマが作る本格韓国鍋や黒毛和牛ホルモンを使ったもつ鍋までジャンルも多彩、少人数〜数十名規模と、店のキャパシティもさまざまだ。
紹介するのはあったかおいしい、ちょっと気のきいた3店鋪。一つの鍋を囲んでじっくり話す、それが絶品ともなればいっそう、仲間との会話も弾むに違いない。
2019.12.20公開
家庭味の韓国料理店「オンマの新洞」の「番長鍋」って?
この街で営業を初めてから30年以上になる、韓国家庭料理店「オンマの新洞(しんどん)」。平日と土曜日は翌4:00まで本場の味が楽しめるとあって、近くで働く人や二次会の場としても重宝されている。
スポーツ選手を中心に著名人が通うことでも知られるが、名物の「番長鍋」は、常連の一人である“番長”こと、元プロ野球選手の清原和博氏が名付け親。豚肉や野菜、魚肉ソーセージなどを辛く煮込んだ具沢山の鍋で、誕生してからはや10年、瞬く間に店の名物となった。
「もともとホルモン鍋やスンドゥブはありましたが、番長の『魚肉ソーセージを入れたらおいしいんじゃないか?』 という提案から、この形になりました。参鶏湯(サムゲタン)と悩む人も多いですが、番長鍋は特にリピーターが多いですね」とオンマ。
味の要は手作りのコチュジャンと、韓国料理に欠かせない万能調味料・タデギ。タデギはニンニクやショウガ、数種の野菜と白みそで作ったもの。「タデギは家庭によって味が違うから、それで家の味が決まります」とオンマは話す。旨味あふれるスープは、一度食べたらやみつきになるのも納得の味だ。
鍋のほかにも、自家製の「白菜キムチ」(500円)や「ケジャン」(2000円)など、一品料理もいろいろ。ここだけにしかない“おふくろの味”は、一次会だけでなく「もう一杯飲みたいな」というときにも覚えておきたい。
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-9-3 三経59ビル2階
電話番号:03-3207-5502
営業時間:月〜土、祝前日18:00〜翌4:00(料理L.O.翌3:00、ドリンクL.O.3:30)、日・祝18:00〜翌0:00(料理、ドリンクL.O. 23:30)
定休日:なし
https://shindon.owst.jp
薬膳×白湯!「青葉」の二色鍋
台湾料理店「青葉」は、創業50年を越える歌舞伎町屈指の老舗。名物「しじみのニンニクしょうゆ漬け」をはじめ、前菜から肉野菜、麺料理など約250種にのぼる品数も魅力だ。2008年に閉館したコマ劇場があったころは、劇場に出演していた歌手らの打ち上げ会場としても人気だったそう。
オーナーシェフの李克順(り かつじゅん)さんいわく、「テーマは医食同源。毎日食べてほしいから肉野菜に薬膳料理と、栄養バランスの取れた台湾料理をそろえています。『薬膳入り激辛と白湯の二色鍋』は開店当時から出している歴史あるお鍋です」とのこと。
鍋が煮立ってきたら、薬膳と魚貝のいい匂いが。ピリッとした薬膳鍋のスープを一口すすると、ハッカクやサンショウなど約6種の薬膳が鼻を抜ける。対する白湯は、素材の味を引き立てるシンプルなスープだ。
具材は野菜、肉、魚貝の順で入れ、魚介類は素材の味がいきる白湯がおすすめだ。「そのままそれぞれのダシで食べるのがおいしいけれど、要望があればタレも作ってお出しします」と李さん。
約120席を構える店の規模とは裏腹な、アットホームなサービスもこちらの魅力。「辛さも調整しますし、『こんな料理が食べたい!』というご希望があれば、メニューに無いものでもお作りします」(李さん)。そんなサービスと多彩なメニューは、大人数が集まってもみんなの心とお腹を満たしてくれるはず。
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-12-6
電話番号:03-3200-5585
営業時間:月〜金・祝前日12:00〜翌2:00、土11:30〜翌2:00、日・祝11:30〜23:00
定休日:なし
約40年続く牛ホルモン鍋「みつる」
新鮮な黒毛和牛ホルモンの「牛ホルモン鍋」で知られる「みつる」。口コミで評判が広まった同店を営むのは、店主の安田友和さんと初代のお父さま。38年目を迎えた今年の冬も、開店早々賑わっていた。初代はもともと割烹の料理人で、鍋のスープにもそんな経験をいかした工夫が込められている。
唯一無二の醤油スープは昆布やシイタケ、鰹節で摂った和風のダシに醤油やコショウなどのスパイスを加え、奥行きある味わいに仕上げたもの。大振りにカットされたホルモンや野菜も印象的だ。
基本の具材でも十分な量だが、トッピング用のホルモンが充実しているのもここならではだ。牛ハチノスをはじめ牛センマイ、牛フワなど5種類がそろい、なかでもおすすめは牛ハチノスと牛スジ。「重くならないように、脂がのったホルモンはできるだけ脂を削いでいるんですよ。いろいろ足していただいても、あっさり食べていただけると思います」と店主の安田さんは話す。
スープは醤油のほか、白みそと赤みそをブレンドした味噌味も。双方持ち帰りもできるので、家での集まりにもおすすめしたい。そしてお店で食べる際は、その日の一品料理が書かかれた黒板メニューも忘れずにチェックを。
シメには雑炊やチャンポン玉、うどん玉も用意。どこかせわしない年末年始、優しい和のホルモン鍋がほっと気持ちをほぐしてくれるはず。
text:金城和子
photo:阪本勇