一日目は雨、二日目は強風と過酷な環境になったが、出演者も観客もびくともしないくらいの盛り上がりを見せた。
雨の歌舞伎町を照らす音楽
Day and Night
あいにくの雨に見舞われ、急遽シネシティ広場から屋根のある東急歌舞伎町タワー1Fの屋外ステージ(KABUKICHO TOWER STAGE)に変更された1日目。Day and Nightは2019年にninaとfuuによって結成されたシンガーソングライターユニットで、二人のキャラクターのバランスが絶妙。この日もninaは黒のジャージ、fuuは白のチュニックと衣装も対照的だった。「てるてる坊主を作ってくれたファンの子もいて、みんなのおかげでライブできることになりました!」とninaがお礼を言い、「サイダー」、「アーカイブ」とオリジナル曲を続けて歌う。切ない曲調とハーモニーが雨空に美しく響いた。
「雨の中で歌うのは貴重だね」、「素敵なシチュエーション」と話しながら、続いてはあいみょん「ハート」のカバー。サビの<寒さに負けないようなぬくもりで>という歌詞が、このシチュエーションにピタリとハマる。「友達であり尊敬するバンド」だという、ねぐせの「日常革命」をカバーし、観客からのリクエストタイムに。オリジナルの「still I…」やYUI「Good-bye days」カバーなど、その場でハーモニーのアレンジを即興的に組み立てながらパフォーマンスしていく。「sugary」では観客も寒さを忘れて自然と手拍子が起こった。最後はninaが「全力で歌います!」と宣言し、「my story」を歌いきった。
nina「歌舞伎町の焼肉屋さんで働いていたことがあって、ここから1分の距離なんですよ。だから、すごく新鮮でうれしかったです。雨の中でこうやってストリートライブができることもなかなかないし、こうやってちゃんと場を設けていただけるのはありがたいですね」
fuu「公認なのは大きいですね。無料だから学生さんも来やすいですし、こういう場が増えるといいなと思います」
nina「普段はライブハウスに出演することが多いんですけど、外でこんなに大声で歌うことってないじゃないですか。ストレス発散というか、ハッピーになります(笑)」
fuu「普通に生活してる人もいる空間で、非日常のライブをやるっていうのは確かに新鮮だよね」
nina「ライブハウスとは違った良さがあるよね」
fuu「今は12月29日のワンマンライブに向けていろいろがんばっているんですけど、もっと路上ライブだったり、いろんな人が来やすいライブもやっていきたいです」
nina「コロナ禍が落ち着いて、対バンライブにたくさん出演させてもらったことで成長できたので、それをワンマンでは見せられたらと思っています!」
かなまる
7歳の子どもを育てるママでありながら、個人事務所FRUITSの代表も務めるシンガーかなまる。ライブ前に観客一人一人に「このあと歌うのでよかったら聴いていってください!」と声をかけながらビラを渡す、真摯な姿が印象的。中西保志「最後の雨」のカバーでライブはスタート。途中バックトラックを止めてしまい、「配信でもよくやっちゃうんですよね」と苦笑い。観ている方もつられて笑ってしまう。ミスもほほえましい光景に変えてしまう人間力が垣間見えた。宇多田ヒカル「First Love」に続いて、槇原敬之「もう恋なんてしない」をカバー。曲中で「最近失恋した人いる? もう恋なんてしないなんて言うなよ! 恋しろ!」と煽る。
雨も止んできて、東急歌舞伎町タワーの巨大屋外ビジョンに映るライブの様子を見上げる人も増えてきた。Mr.Children「しるし」を歌いながら、「空に向かって歌えるのが路上ライブのよさ」と夜空を見上げる。いつか共演したいという、さかいゆう「君と僕の挽歌」でカバーは終了。「みなさん一週間お疲れ様でした! 自分のことをいっぱい褒めてあげてください!」とオーディエンスを労って「日常」を、そして感謝を込めて「Circle」を歌う。「これからも命がある限り歌い続けたいと思います!」と決意を新たにした。
「久しぶりだったんですけど、ファンの方や初めましての方の笑顔をみれて、路上ライブの良さを実感しました。この声のデカさが私の持ち味かなと思っていたんですけど、立ち止まってくれる人も多くてうれしかったです。コロナの前は新宿で路上ライブもやっていたんですけど、こんなに恵まれた環境で歌えたのはアーティストとしてすごく幸せでした。配信だと私の声をなかなか伝えられなくて、どうしてもおとなしくてこもった感じになっちゃうんですけど、路上は『大勢の人に伝えるぞ!』という気持ちを一層出せるから大好きです。今後も、どんな小さな夢でも一つずつ確実に叶えていって、私の歌でたくさんの人を笑顔にしたり幸せにしていくのが目標です。それを掲げながら、確実に大きなステージに行けるように頑張りたいと思います!」
浜野はるき
福岡出身のシンガーソングライター浜野はるき。2021年に上京し、新宿や渋谷を中心に年間200本以上の路上ライブを行っている。1曲目はジャジーなピアノが印象的な「ずるいね」で、彼女が一貫してモチーフにしている「夜の街」の象徴でもある歌舞伎町の光景にとてもよく似合う。SNSを中心にバイラルヒットとなった「中洲ロンリーナイト」、「もう8時だからいいか」と呟いて歌いはじめた「セックスレス」と、次々とパフォーマンス。「急に寒くなりましたね。缶ビール飲んでて寒くないの?」とコミュニケーションも欠かさない。続いて歌われた「ギジコイ」は11月22日にリリースされた新曲ながら、発売前にSNS総再生数1000万回を突破したことが話題だ。
「歌舞伎町だからセクシーな曲しか持ってきてない」と笑いながら披露したのは「朝帰り」。「朝帰りする予定の人いる?」とのMCにオーディエンスもドギマギ。ラジオをやっているのにMCが上手にならないという愚痴(?)を挟みながら、最後の曲は「親不孝通りノンフィクション」。「最後の曲にふさわしいかどうかわからないけど」と本人は少し不安げだったが、金曜の夜が深まる歌舞伎町にまさにおあつらえ向きな時間が流れた。
「雨でもやれてよかったし、大画面に自分が映ったのもはじめてなのですごく楽しかったです。特に私はキャバ嬢とかホストとか、夜の街をテーマにしてるので、歌舞伎町っていうロケーションにずっと憧れていました。福岡の中洲と比べると、歌舞伎町は年齢層が低い感じがしますね。中洲は東京でいうと銀座っていうか。親不孝通りの方が歌舞伎町っぽいかも。やっぱりエネルギーがすごくあるから、歌舞伎町に来ると『このまま帰るのももったいないし、飲んで帰ろう』ってなります(笑)。私のファンは夜のお店の女の子が多いんです。夜の街には闇もあるんですけど、それを光に変えていけるようなポップアイコンになれたらと思ってます」
浜野はるき(はまのはるき)
福岡出身のシンガーソングライター。幼少期よりピアノやダンスを始め、音楽に触れる生活を送ってきた。2021年6月に歌手の夢を叶えるために東京へ進出。上京後、渋谷/新宿など都内を中心に路上ライブを年間200本以上実施。2022年11月には代々木MUSEにて1stワンマン『夢心地』を開催し約100名を動員しソールドアウト。
さらに2021年にリリースした、<別にいいよ 男に好かれた方が楽だし>のフレーズが印象的な「中州ロンリーナイト」がバイラルヒット。女性なら誰しも一度は考えたことがあるリアリティのある歌詞に共感する同世代の女性へTikTokを中心に広がっていき、2023年5月には渋谷TOKIO TOKYOにて2ndワンマン『時間旅行』を開催し約250人を動員しソールドアウト。
活動当初より常に掲げてきた目標は「全ての女性の味方でいる」こと。路上で培った泥臭さと現代の女性のリアルを切り取った歌詞で同世代の圧倒的な共感を得ている今注目のアーティストの一人である。