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【特別対談】THE TOKYO MATRIX × 東京ミステリーサーカス│ 新宿発!体験型エンターテインメントの未来

歌舞伎町

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アミューズメント 東急歌舞伎町タワー
DATE : 2023.04.29
2023年4月、新たな体験型エンターテインメント施設「THE TOKYO MATRIX」が東急歌舞伎町タワーにオープンしました。

謎解きや脱出ゲームなどの体験型エンターテインメントが人気を増している昨今。

なぜ今、体験型エンターテインメントが人気を集めているのか、それによって新宿のエンタメはどのような未来へと向かっていくのか。「THE TOKYO MATRIX」の運営にも協力し、同じく新宿・歌舞伎町にある体験型施設「東京ミステリーサーカス」ゼネラルマネージャー垣見良さんと、「THE TOKYO MATRIX」のプロデューサー松平恒幸さんに話を聞いた。

「東京ミステリーサーカス」ゼネラルマネージャー 垣見良さん

株式会社SCRAP。2020年より「東京ミステリーサーカス」ゼネラルマネージャーに就任。「東京ミステリーサーカス」全体のプロデュースを担当している。

「THE TOKYO MATRIX」プロデューサー 松平恒幸さん

株式会社ソニーミュージックソリューションズにて新規事業企画全般を担当。「THE TOKYO MATRIX」には、総合ディレクターとして携わっている。

いろんな人が訪れる街、新宿ならではのエンタメ施設

2017年に新宿・歌舞伎町にオープンした世界初、国内最大となる“謎”をテーマとしたテーマパーク「東京ミステリーサーカス」、そして今春オープンしたダンジョン攻略を目的とした世界初のアトラクション施設「THE TOKYO MATRIX」。

まずは2つの没入型エンターテインメント施設の概要と、こだわりを聞いた。

― 改めて、まずはそれぞれの施設について教えてください。

垣見:「東京ミステリーサーカス」は、常に15〜25の謎解きコンテンツが楽しめるエンターテインメント施設です。コンテンツは10分程度のものから2時間かかるものまでさまざま。謎解き好きな方から、体験したことのない方まで、幅広い方に楽しんでいただける場所を目指しています。

松平:「THE TOKYO MATRIX」は、新宿のど真ん中にダンジョンが出現したというのをコンセプトに作った攻略型のアトラクション施設です。ありとあらゆる知恵と体力、運、チームワークで攻略していくことにより深部へと進んでいくことができます。

東京ミステリーサーカス
THE TOKYO MATRIX

― 今回「THE TOKYO MATRIX」がオープンしたことにより、どちらも「新宿」という同じ街で、その上道路を挟んで向かい側に位置することになりますよね。お互い、新宿という街ならではのこだわりはあるのでしょうか?

松平:「THE TOKYO MATRIX」は、新宿という街のアクセスの良さを生かし、繰り返し通うことができる施設にしたいなと考えた点ですかね。当初は「新宿といえばインバウンドのメッカでしょう」とインバウンド向けの施設を考えていたのですが、コロナ禍に入ったこともあって企画をピボットしました。「東京ミステリーサーカス」さんは、そもそもなぜ新宿に?

垣見:新宿って、行けばいろんな時間のつぶし方ができる街だと思っています。だからこそ、体験型エンターテインメントに興味のない方が、ふらっと立ち寄って「他のところにも行ってみたい」と思っていただけるような、街の入り口になれたらと思ったんです。多種多様なコンテンツを揃えている理由も、そこに通じますね。

松平:なるほど。御社の他の施設と比べても、コンテンツのジャンルが豊富なのはそういう理由なんですね。ファンの方のみならず、まずは体験してほしいという部分も共感します。

垣見:先ほど松平さんがおっしゃっていたように「THE TOKYO MATRIX」は何度も来なくてはクリアできないような施設なので、東急歌舞伎町タワーの「好きを極める」というコンセプトにぴったりですよね。対して、僕らのコンテンツって、基本的に1回しか体験できません。なので、達成感という意味では共通していますが、積み上げるものがあるという点は「THE TOKYO MATRIX」ならではだなと感じています。

松平:たしかに。「東京ミステリーサーカス」のコンテンツを体験した方がSNSで「脱出成功」のパネルを掲げてる顔がみなさん誇らしげで、達成感が伝わってきますもん。

脱出成功時の様子

垣見:ありがとうございます。我々の施設同士は、先ほどの質問のように「道路を挟んで似た施設が向かい合うのか」と言われることがありますが、あくまでも共存できる関係性だなと感じています。その理由の1つが、何度も挑戦できる点と1回だけ体験できる点で、しっかりと差別化ができているから。その上、僕らはアナログなシステムなのに対して、「THE TOKYO MATRIX」は最先端技術を駆使しているという点も違いますよね。全く違う遊び方の体験型エンターテインメント施設が近くにあるのは、相乗効果が生まれそうで、とても嬉しいです。

松平:そう言っていただけて、僕らとしても心強いですし、嬉しいです。僕から見て「東京ミステリーサーカス」は、謎やトリックが非常に考えられていて、知的な喜びを感じられる、脳からドーパミンが出るような気持ち良さを味わえる施設だと思っています。そういうところが、すごく楽しいなと思うのでたくさん勉強させていただきましたし、運営にも携わっていただいていますから。(※THE TOKYO MATRIXは東京ミステリーサーカスが運営協力)

垣見:お声がけいただいたときは、本当に嬉しかったです。いつ頃から、お声がけいただけることを検討されていたんですか?

松平:わりと当初から考えていました。SCRAPさんの知性に絶大なる信頼があるので、知恵で助けてほしいなと思っていたんです。よくマーケティングの面から、ラーメン屋さんはラーメン屋さんがある場所に出店した方がいいっていう話もありますが、まさに新宿は体験型エンターテインメントのメッカ。ぜひ同じエンターテインメント施設として、一緒に盛り上げていけたら理想だなと思っています。

垣見:これまで、同業の施設同士の横のつながりがほとんどなかったので、そう言っていただけて、本当に嬉しいです。一方、街を使ったり、飲食店を巻き込んだような連携コンテンツは過去にも手がけてきたので、今回の繋がりをきっかけに、地域と密着するようなコンテンツや別のところでも一緒にトライしていけたらなと思っています。

東京ミステリーサーカスでは、2023年4月28日から歌舞伎町の街を舞台に、エヴァンゲリオンとコラボしたリアル脱出ゲームが開催される。

理想のエンタメは、予定調和がない感動を共有すること

― それぞれのコンセプトに特徴があり、そこがお互いの魅力的な部分ということが伝わってきました。では、おふたりが考える理想のエンタメとはどんなものなのでしょうか?

垣見:僕は予定調和ではない感動を作れることが、理想のエンタメだと考えています。例えば、WBCなどのスポーツ観戦は予定調和にない感動や、心の動きができますよね。エンタメとしてすごく理想だし、僕らが作っているような予定調和なコンテンツでは敵わない部分もあるなと。

松平:本当にWBCのエンタメ力は強いですよね(笑)。ただ、あえて体験型エンターテインメントが勝っている部分を挙げるとしたら、主人公が自分であるということかなと思います。SCRAPさんの謎解きって、知恵を使って頭から湯気が出るぐらい没頭できるなと感じているんです。それって誰かを応援して得られる感動とはまた違うと思うんですよね。

「東京ミステリーサーカス」ゼネラルマネージャー垣見良さん

垣見:そうおっしゃっていただけて、光栄です。僕らが手がける物語体験は、自分たちの生活や遊びを通して体験する感動を、ギュッと詰め込んで作っています。ほとんどのコンテンツが1回しか体験できないというものなので、1つ1つ短い人生をギュッと作っている感覚。だからこそ、主人公が自分であるからこその感動というのは、おっしゃる通りだなと感じました。

松平:SCRAPさんの謎解きを体験して、体験型エンターテインメントでカギとなるのは、“主人公がお客さんであるからこそ、どういう活躍ができて、どんなカタルシスを得られるか”だと思いました。だからこそ「THE TOKYO MATRIX」では、コンテンツを作って供給するのではなく、お客さんが自由度高く考えることができ、自由に力を発揮してもらえるゆるさを楽しんでもらおうと、没入作用を散りばめるようにしています。

垣見:たしかに、自由度の高さは大切ですよね。ほかにもこだわりはありますか?

松平:忘れられない思い出になること、ですかね。1人で持つのでもいいし、誰かと共有してもいいのですが、体験型エンターテインメントは思い出を共有できるものだと思っています。だからこそ“思い出を強くするため”にちょっと難しくしているんですよ。苦労しながら体験して、最後の最後にかけがえのない、号泣ものの思い出を持って帰ってもらえたらいいなと思って。

垣見:すごくわかります。SCRAPのリアル脱出ゲームも、脱出できた時の思い出をより感じていただけるように、ちょっと難しくしていますね。実は、松平さんに1つ伺ってみたいことがあったんですが、いいですか?

松平:もちろんお聞きください!

垣見:ありがとうございます。私自身「THE TOKYO MATRIX」に携わらせていただく中で、なにか“ブレない軸”のようなものをとても感じていたんですが、松平さんの中で、そうした1つの芯というか、「THE TOKYO MATRIX」をつくるにあたって大事にしていたことってあるんでしょうか?

「THE TOKYO MATRIX」プロデューサー松平恒幸さん

松平:そうですね、軸というか、根底になっている思いはあります。コロナ禍になって、若者を中心に精神的にも経済的にも鬱屈が溜まっていき、伸び伸びと活動できない、かつ未来の希望があまりない風潮が強まったように感じました。でも、この施設を立ち上げる上でいろんな調査をしたときに、実は今の10代って自分たちの頭脳にも肉体にも自信があって、俊敏性もあることがわかったんです。それなのに、そういう風に僕らが受け止めてしまうのは、そういう強みを使う社会になっていないし、それを受け入れるような場も少ないだけなのではないかと感じたんです。

だからこそ、彼らの燃えたぎる情熱やアビリティを「ドーンとかかってこい!」と受け止められる施設を作ろうというのが根幹にあります。関東圏からアクセスしやすい、東京の中心、新宿でならそれができるかなと思ったので。

カオスな街、“新宿”を世界一の「遊べる街」に

― 施設に込められている思いがとても感じられました。では、そんな施設を出されている“新宿”は、おふたりにとってどのような街でしょうか?

垣見:いろんな人に出会える街だと思っています。ここ数年は、コロナ禍で機会が減ったのですが、新宿という街でなきゃ出会えなかった人も多いですし、本当に良い意味でカオスな街だなと。普段は出会えない人に会いたいからこそ、行きたくなる街が新宿だと思います。

松平:特に近年感じることなのですが、許容度の高い街ですよね。ここはこれをしなきゃいけない場所というのが、良い意味で明確に区分けされすぎていない、なんでもありの街。そういうところに居心地の良さを感じられるし、それを受け止めてくれる懐の深さを感じます。すごく大好きな街です。

垣見:たしかに許容度が高いからこそ、ご飯も遊びもショッピングも楽しめるんでしょうね。エンターテインメント施設から劇場まで多種多様に揃っているのも、いろんな人がいろんな楽しみ方をできるようにということなのかもしれないと改めて思いました。

松平:僕もそう思います。アジア最大の歓楽街であり、東京のヘソであるというところが新宿の最大の魅力であり、みんなが入り混じって楽しむ場所なのかなと。“新宿”と聞いた時に、そういう姿を世界中の人が想像できるからこそ、たくさんのエンターテインメント施設があるのかもしれませんね。古くは新宿TOKYU MILANOのボウリング場から始まり、今は体験型エンターテインメント施設。新宿って何十年もの間みんなで集って遊ぶ場所だったんだなと、今話しながら再確認しました。

垣見:ただ、なんでもありが魅力だからこそ「行けば楽しいんだけど、どこから入っていいかわからない」街でもあると思います。そう感じる方にとっては、僕らの施設は入り口にしやすいですよね。お互いの強い部分を強め、地域の人たちと協力しながら、いろんな楽しさに繋がる導線作りをしていけると、もっと楽しくなるんじゃないかなと思っています。

松平:日に日に海外の観光客の方が戻りつつあり、さらに魅力が増していきそうですもんね。数年後には世界中の人たちが「遊ぶなら新宿」「タイムズスクエアよりも新宿」っていうぐらいの実力は十分にあると思うので、それが実現できるような施設を作っていきたいなと思います。

文:於ありさ
写真:平安名栄一

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