キャバクラ嬢として、アパレル「EmiriaWiz」のオーナーとして、10年以上、歌舞伎町という街を見続けてきた彼女が語る、この街の魅力とは!?
— 愛沢さんの伝説的なキャリアやSNSでの発信などを通して、キャバ嬢というお仕事が若い女性の憧れの職業になったと思うのですが、愛沢さんの人生においてキャバ嬢とは、どんな経験になりましたか?
私は10代をすごく適当に生きてきたので、キャバクラの仕事を通して、努力することの大切さを知りました。“人として”という部分をキャバクラで学んだと言った方がいいでしょうか。キャバクラの仕事は結果が目に見えてわかりやすいので、“やればやるだけ結果が出る”というのが自分の性格にマッチしたんだと思います。初めてNo.1になった時の嬉しさに加え、自信もついて、努力したらこんなにいいことがあるんだ!と頑張るモチベーションに繋がりました。自分で営業して、接客するというキャバクラのお仕事は、自己プロデュース力でもあるんですよね。
— 自己プロデュース力はどうやって身につけたんですか?
売れている人を真似するんです。当時働いていたお店にNo.1の先輩もいましたし、他のお店でも歌舞伎町No.1と言われているようなすごい人気の方もいたので、お客さんとして会いに行って、徹底的に研究していました。そこから、自分をどう見せていきたいか、自己プロデュースについて真剣に考えるようになって。
— 愛沢さんのファンは女の子が多いのも頷けます。
有難いことに、その頃モデルとして出させていただいた雑誌『小悪魔ageha』の影響で、女の子のファンがすごく増えて、キャバクラにも女の子のお客様がたくさん来てくださるようになったんです。
— やっぱり雑誌の影響が大きかったんですか?
そうです、雑誌です。それまでは私、全然友達もいないようなタイプだったので、女の子から「好きです」なんて言ってもらえるようなタイプじゃなかったんですが、「えみりちゃんを見て頑張ります」と言ってもらえるようになったり、何より同性に認めてもらえるようになったのが嬉しかったですね。でも、雑誌に毎月出させていただいて感謝しているのと同時に、「歌舞伎町の女王」と取り上げてもらうことにプレッシャーも感じるようになってしまって。最初は、自分が頑張ってNo.1になったことを取り上げてもらえることが素直に嬉しかったんですが、だんだんその重圧に苦しむことにもなりました。当時は毎月、雑誌の撮影があって、撮影のためにキャバクラの出勤を減らしたら、お客様が少なくなってしまうし…と、バランスが取れなくなってきた中で、さらに毎年、私のバースデーイベントを雑誌でも特集していただいてたので、それがすごいプレッシャーになってしまったんです。
— インスタグラムなどで拝見しています。シャンパンタワーなど、盛大ですよね。
キャバ嬢のバースデーイベントって、一年の集大成というか、周りからの評価が、数字としてみんなにわかってしまうので、ものすごい大変なんですよ。記録的な売上が出れば、さらに来年はもっと、と毎年更新していかなければならないですし、お祝いしてもらえる日なのに、実際はプレッシャーで押しつぶされそうになっちゃうんです。それで、「私はこれを一本で続けていくのは無理だな」と感じて、24歳のバースデーイベントを盛大にすることで最後にして、引退はしないけれど、昼間の仕事も頑張ろうと区切りをつけた感じですね。
— その頃、起業したきっかけにもなったんですね?
色々タイミングが重なったこともありますが、ちょうど24歳の時に起業しました。「この先、何をやりたいか?」を考えた時に、アパレルがやりたかったというよりは、アパレルなら自分が好きでやっていたSNSを活用できそう!と感じたんです。ちょうど10年ほど前なので、今ほどSNSで発信する人は多くなくて、これならできそうと…。しかも、3年間やったら辞めて、27歳くらいで結婚しようと思っていたんです(笑)。今33歳なんですが、当時は27歳くらいで結婚するものだと勝手に想像していて、仕事は3年やっていい感じになっていればいいし、そうなっていなくても辞めようと思っていたんです。
— 「何歳で●●していたい」といった人生設計をされるタイプなんですね?
計画的な部分、確かにあります! 1年単位で考えるようになったのは、キャバ嬢をはじめてからですが、その“1年”も、一般的には4月から数えると思うんですが、私の場合は自分の誕生日を基準に考えるので、9月から1年と考えていて(笑)。この1年でどこまでできるか、どこまでなら続けられるだろう? と考えるようにしています。22,23歳の頃は“結婚すれば幸せ”だと思っていたんですが、徐々に、「結婚すれば幸せになれるのかな?」という疑問も生まれて、気づいたら仕事一筋に…。でも去年の年末くらいから、結婚や出産をする友人が増えてきたこともあり、“違うカタチの幸せ”を間近で見て、すごい素敵だなと感じるので、33歳にして視野に入ってきた感じです(笑)。
— では、もしかしたらここ数年であるかもしれませんね!?
そうですね(笑)。あるといいですよね!
— 24歳の時に起業されて、今年で「EmiriaWiz」は10周年を迎えます。
はい! 最初は単純に、「服なら売れるかも」という安易な考えで、服の作り方も全くわからなかったんですが、わかっていなかったからこそ、まず中国の広州にある工場から見に行ったんです。フェイスブックで見つけた通訳の方にお願いして…。でもそういう見つけ方をした通訳の方だったので、やはり中国語はわかってもアパレル用語まではわからず、最初は月に4,5回は渡航して、自分の目で確認しに行っていました。もし初めからアパレルメーカーさんとお仕事をしていたら、「洋服作りって、こういうもんなんだ」と、ある程度やれることやアイデアも、幅が狭まっていたんじゃないかと思いますが、自分で工場を探して、現地で生地を見ることからスタートしているので、“なんでもできる”ということを自分の目で見て、感じられたことは大きかったと思います。
— 愛沢さんが日々活動される中で、大切にしていることとは?
「大変そう」と感じることを頑張るようにしています。きっかけは、雑誌のモデル活動とキャバクラを並行してやっていた時で、2年連続で、頭にハゲができてしまったほど忙しくて(笑)! 23歳の頃だったんですが、ある人に「大変な時こそ頑張ったら、人と差がつく」ということを言われたのがずっと頭に残っているんです。その時頑張って両立したことで今があると思うので、嫌だなって感じることはたくさんありますが、そんな時こそちょっと頭を切り替えて、頑張ろう!って思うようにしています。
— 愛沢さんといえば「歌舞伎町」というイメージがありますが、最初に来た時の印象は?
“キラキラ”でしたね! 私が高校生の時に、「新宿日記」という歌舞伎町のキャバクラを舞台にした携帯小説が流行っていて、本当にドラマの世界と同じだったので、一瞬にして私はハマりました。「ナイトスタイル」というキャバクラの情報サイトも当時みんなが見ていて、歌舞伎町に行く前から、なんとなくこの辺りにこのお店があって、ここにあのお店があってという情報だけは頭に入っていたんです(笑)。
— 働いてからのイメージは変わりましたか?
20歳からこの街で働きだしたんですが、アットホームで「いい街」だなと感じましたし、それは今でも感じます。誰でも受け入れてくれる地元感があって、一つの村のような温かさがあるんですよね。歌舞伎町に来る理由は人それぞれあるものですが、どんな噂もみんな気にしないし、例えポッといなくなっても、また戻ってきたときには「おかえり」みたいな(笑)。私自身、10年以上この街で働いていて、一度も怖い目に遭ったことはないですし、意外に外から見ると、冷たそうな場所と思われがちですが、内側にいる人は歌舞伎町の温かさを感じていると思います。
— 愛沢さんにとって歌舞伎町とは?
お仕事以外でも、ご飯へ行くのにも、いつも居過ぎて、歌舞伎町は“第二のふるさと”というより、私にとっては“本当のふるさと”です。例えば銀座だと、お店も予約をして、ちゃんとした格好をしていかなきゃと気負ってしまうこともありますが、歌舞伎町はいい意味で行きやすいんですよね。
— 今回、撮影で訪れた広場から、2023年春に開業予定の「東急歌舞伎町タワー」が見えましたが、愛沢さんは歌舞伎町の今後についてどう思いますでしょうか?
「東急歌舞伎町タワー」はいい感じにスポットになりそうですよね! 歌舞伎町はかわいいカフェや綺麗なお店が本当に少ないので、すごく期待しています! 最近、電車にも乗るようになって、駅近の重要さも感じているので、駅に近いというのも嬉しいですし。
— (スタッフ一同)愛沢さん、電車乗るんですか!?
そうなんです! 最近、会社が最寄り駅から徒歩2分の場所に移転したので、駅から電車に乗った方が早いことが多く、電車の便利さに改めて感謝しています(笑)。
— 「東急歌舞伎町タワー」の施設内で気になる場所はありますか?
ライブホールと、新宿には少ない、綺麗な映画館ですね(笑)。レストランフロアも気になります。やっぱり女の子ってたくさんあるお店の中から選んで入るのが好きですし、ハシゴしたくなりますよね!
— 歌舞伎町の中で、これまで愛沢さん行きつけのお店は?
「パリジェンヌ」という風林会館1階にある喫茶店と、豚しゃぶが美味しい「吟」です。「パリジェンヌ」は同伴の男女が多いので、一般の方はびっくりしてしまうかもしれませんが(笑)。
— 今後について。また、これから挑戦したいことはありますか?
いま決まっているのは、アイドルのプロデュースです。ちょうど1年くらいかけて進めてきたプロジェクトで、2月に東京と大阪でオーディションを開催するんですが、YouTubeで募集動画を配信したのみにも関わらず、予想以上の応募をいただいているので楽しみです。「東急歌舞伎町タワー」に新しくできるライブホールでできたらいいなあ(笑)! あとは、新しい美容に関する新規事業を行う予定で、会社としても幅を広げて行けたらいいなと思っています。
2月2日に新著『SNS時代の幸福論』を発売!
新刊のテーマは「SNS時代の幸福論」。SNSを活用してより良い人生を送るつもりが、自分でも気づかないうちに振り回され、支配されてしまっている現代人へ向け、SNSなどの”自分以外のモノ“に左右されずに幸せを実感することの大切さ、ネットの世界とリアルの世界でのバランスの取り方などについて実体験をもとにお話ししています。
text:藤井存希
Photo:落合由夏