特集

エリア

歌舞伎町から生まれた“新たな聖地”──「Kabukicho Street Cypher」決勝を追う

歌舞伎町

東急歌舞伎町タワー 観る
イベント ダンス 東急歌舞伎町タワー
DATE : 2026.04.27
ジャンルやキャリアを問わず、すべてのダンサーに開かれたサイファー&バトルイベント「Kabukicho Street Cypher」。2025年6月のスタート以来、ほぼ週1回のペースで開催を続け、歌舞伎町にダンスカルチャーを急速に根付かせた。全31回のイベントに参加したダンサーたちは全部で約1,400人。いまや東京のダンスシーンでも存在感を放つようになったこのイベントの集大成となるチャンピオン大会「KABUKICHO STREET CYPHER GRAND CHAMPIONSHIP」が、歌舞伎町シネシティ広場とZepp Shinjku(TOKYO)にて2026年3月20日に開催された。

これまでのイベントに繰り返し出場し、勝ち残ってきたダンサーたちが一堂に会し、真の頂点を決するこの日。歌舞伎町のストリートで出会ったライバルたちとの戦いは、どのような結末を見せたのか?一部始終をレポートする。

「Kabukicho Street Cypher」は、円形の即興セッション=サイファーを軸に、ポイント制のトーナメントを組み合わせたイベントだ。交流と競争が自然に生まれるこのフォーマットによって、短期間でシーンに欠かせない存在へと成長してきた。

その集大成として開催されたのが本大会だ。2025年6月から2026年2月までのランキング上位者が一堂に会し、年間チャンピオンを決定。さらに当日予選からの勝ち上がり枠も設けられ、誰にでもチャンスが開かれた、このイベントらしい構成となった。

雨の中でも揺るがない熱量、白熱の「当日勝ち上がり枠」予選

大会はまず、年間ランキング上位者たちとともに本戦に加わる「当日勝ち上がり枠」を決める予選からスタート。シネシティ広場を舞台に、1on1、2on2ともに参加者全員がサークルを組んで踊る「サークル予選」から始まり、そこからジャッジに選出されたダンサーによるトーナメント形式の2次予選へと進む。

当日はあいにくの雨。しかし、そのコンディションさえも“遊び”へと転化するのがストリートの強さだ。滑りやすい床を逆手に取ったフロアワークや、即興性を際立たせる自由なムーブが次々と飛び出し、会場はむしろ独特の高揚感に包まれていた。ダンススキルだけでなく、音楽を理解する感性と瞬発力、そして個性のぶつかり合いが、勝敗を左右していく。

大人数で囲むサイファー形式の一次予選から、二次予選は一対一のバトル形式へ。FUNKY MUSICとHIPHOP MUSICという2軸の選曲もまた、バトルの重要な要素となる。ダンサーたちのスタイルは、hiphop、lock、break、waack、popなど実に多彩。国籍や世代を超えたダンサーたちが互いをリスペクトしながら踊る様は、イベントのコンセプトを象徴する光景だった。

その中で、1on1では櫻子とKumise、2on2ではdarkとファニーカープが当日勝ち上がり枠を掴み、本戦へと駒を進めた。

櫻子
KMS
dark
ファニーカープ

本戦突入──ランキング上位者と熾烈なバトルへ

予選を突破したダンサーたちは、年間のポイントランキング上位者たちと合流し、本戦へと突入する。イベント常連の実力者たちが一堂に会する様子は壮観で、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。

SORA
弥楼
くじら

1on1ではKMS、$、くじら、YOHがベスト4へ進出。2on2では邪鬼、多舞川、HGS、ファニーカープが勝ち残る。ここまでの戦いを経て、舞台はいよいよZepp Shinjukuへと移る。

Zeppで迎えたクライマックス──セミファイナルとファイナル

大音響のクラブ空間へと移ったことで、バトルはより一層の緊張感を帯びる。約1年間の総決算として、すべてを出し切るラウンドが続いた。

1on1セミファイナルのカードは、$ vs YOHと、くじら vs KMS。ここを勝ち上がったYOHとKMSがファイナルで激突し、最終的にYOHが勝利。年間王者の座を掴み取った。

YOH
1on1 ファイナル KMS vs YOH

2on2では、邪鬼 vs 多舞川、HGS vs ファニーカープのセミファイナルを経て、邪鬼とHGSがファイナルへ進出。

2on2のファイナルの結果は、HGSが優勝。YOHはHGSのメンバーとしても優勝を果たし、1on1との二冠という快挙を達成した。2026年夏にアメリカ修行を控えているというYOHは、渡米前に日本のシーンに強烈な印象を残すことになった。

白熱のバトルを経て迎えた表彰後、ジャッジ陣からはYOHとHGSのパフォーマンスをどう評価したかについてコメントが寄せられた。

CyberAgent Legitのenaは「どんな曲でも自分のスタイルを出せる人がトップに立つ」としながら、HGSの2人を「テクニックがありながら、しっかり“音楽”だった」と評した。k-sk(BiGooL/List::X)も「ジャッジの基準は音楽ありき」としたうえで、「FUNKYでもHIPHOPでも、どんな音楽にも乗ってかっこよく見える人」を選んだと語った。

一方で、JUN(RAG POUND)は「最後まで音楽の中で表現し続けたことに加えて、“まだ引き出しがあるのか”と思わせる瞬間があった」と、手数の多さとパフォーマンスの奥行きに言及。さらにBoo(LRL/VBPK)は、「ミスしてもやり直して成功するまでやる。その気合いとメンタルの強さが印象的だった」と振り返り、「技術以上に“やりきる気持ち”が伝わってきた」と評価した。

そしてFOOL(DYM MESSENGERS/VIBEPAK/Freedom Liberator)は、「サイファーの延長のような場だからこそ、“どっちがかましたか”というシンプルな基準で見た」と語り、「ジャンルを超えて“ヤバさ”が伝わるダンサーに票を入れた」とコメント。純粋なインパクトを伝えられるかどうかがストリートダンスの原点であることを伝えた。

ジャッジたちから表彰を受けたHGSの2人は、喜びとともに自身のスタイルへの強い信念を語った。

YOHは「バスケットボールを使った表現は、一見ダンスかどうか曖昧に見えるかもしれない。でもそれをダンスにするのが自分たち」と語り、今回の優勝を通じて、フリースタイルバスケットボールという表現をダンスシーンへと広げていきたいという意欲も示した。

HGSのYuto Bigbomberも、北海道の高校時代から共に歩んできたキャリアを振り返りながら、「この2人で優勝できたことが本当に嬉しい」とコメント。競技としてのダンスバトルにとどまらず、ジャンルを越境する存在として、今後もオールスタイルのバトルへ積極的に挑戦していく姿勢を見せた。

ショーケースが示した“もう一つの表現”

決勝戦に先立ち、Zepp Shinjukuではショーケースも実施された。数多くのチームが出演する中、特に注目を集めたのがゲストチームとして登場したCyberAgent LegitとKOSÉ 8 ROCKS、RAG POUNDのパフォーマンスだ。

バトルとは異なる構成美やチームとしての完成度、そして観客とのコミュニケーション。ショーケースは、ストリートダンスのもう一つの魅力を強く印象づける時間となった。

“聖地”へと向かう歌舞伎町──シーンの未来

Zepp Shinjkuでの決勝戦を終えたあとに待っていたのは、優勝したYOHとHGSによる凱旋パフォーマンスと、この日歌舞伎町シネシティ広場とZepp Shinjkuのフロアに立ったダンサーたちが入り乱れて踊るエキシビション。生バンドによるダンスクラシックスが最高にハッピーな雰囲気を作り出す中、オーディエンスやMCも乱入。美しいフィナーレの光景が生まれた。

わずか1年足らずで単なるイベントを超えた“場”として機能し始めた「Kabukicho Street Cypher」。歌舞伎町を、日本のダンサーにとっての“聖地”へ。そのビジョンは、すでに現実として動き始めている。ストリートから世界へ。この日、その確かな一歩が刻まれた。

文:MASHUP! KABUKICHO編集部

写真:谷川慶典

こんな記事もおすすめ