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歌舞伎町タワーで交差する“多様性” 「関口メンディー×GOLDNRUSH PODCAST」公開収録レポート

歌舞伎町

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イベント 東急歌舞伎町タワー
DATE : 2025.08.10
2025年7月6日(日)、『GOLDNRUSH PODCAST』の公開収録イベントが東急歌舞伎町タワー2F「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」で開催された。今回のゲストは、アーティスト・俳優・タレントとして活躍し、自身もミックスルーツを持つ関口メンディー。多文化をテーマにした「GOLDNRUSH PODCAST」と、国籍や世代を問わず人々が集まる“歌舞伎町”という舞台。その融合が生んだ特別な一夜をレポート。

関口メンディー

1991年アメリカ生まれ。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ関口メンディーは、日本体育大学在学中に芸能界入りし、EXILE、GENERATIONSのメンバーに。俳優やバラエティでも存在感を発揮。2024年6月にすべてのグループを脱退し、所属事務所を退社。現在は世界をまたぐアーティストを目指し活動中。

Isaac Y. Takeu

1997年札幌市生まれ。カメルーン人の父と日本人の母を持つクリエーター・起業家。”多文化人が活躍する日本社会を創る”というビジョンを掲げ、様々なジャンルの多文化人をゲストに迎えるビデオポッドキャスト番組”GOLDNRUSH PODCAST”を運営、ホストも務めている。現在、SNSの総フォロワー数は40万を超える。

ミックスルーツ&カルチャーの声に耳をすませる『GOLDNRUSH PODCAST』

『GOLDNRUSH PODCAST』は、日本で活躍する多文化人をゲストに迎えるビデオポッドキャスト番組だ。ホストを務めるのは、クリエイター・起業家のIsaac Y. Takeu。自身も日本人とカメルーン人のミックスであり、多文化環境で育った。そんな彼が、軽快なトークでゲストの人生を掘り下げ、そのルーツやアイデンティティを浮き彫りにしていく。

チャンネル設立から3年、これまでに日系オーストラリア人の音楽プロデューサー・Taka Perryやハーフ芸人のぶらっくさむらい、スケートボード選手の堀米雄斗など、さまざまなジャンルの“多文化人”をゲストに迎えてきた同番組。この度チャンネル初となる全国ツアーの開催が決定し、これを記念して開催されたのが今回の公開収録というわけだ。

舞台は、国籍・世代を問わず人々が集まり、カオスとカルチャーが入り混じる街・歌舞伎町。そしてゲストは日本・アメリカ・ナイジェリアと複数のルーツをもち、ソロ表現者として新たな道を歩む関口メンディー。まさに“多文化”を体現したような、必然というべきめぐりあわせだ。

関口メンディーはどこから来たのか? 歌舞伎町で語る、そのルーツといま

定刻となりIsaacの呼び込みでスペシャルゲストのメンディーが登場すると、会場は大きな拍手で包まれた。かねてよりテレビに映る彼から「同じブラックルーツとして、憧れを感じていた」Isaacと、もともとGOLDNRUSH PODCASTのファンだったというメンディー。お互いに「とても楽しみにしていた」とあたたかなムードでトークがスタート。テーマはずばり、「関口メンディーはどこから来たのか」。

まず、これまでにミックスルーツを持つがゆえの「葛藤」はなかったかIsaacにきかれると、「よくも悪くも、わかりやすい差別を受けた経験はないんです。そういう意味では大きな苦労はないのですが…見た目の違いを周囲にいじられて傷ついたり、コンプレックスを感じたりはありました」とメンディー。

その“違い”を肯定的に受け入れられたきっかけは、小学生の頃。マイケル・ジャクソンの大ファンだった担任の先生が「あなたは、スーパースターと同じルーツを持っているんだよ」と言ってくれたのだとか。

「子供のころは、先生の存在って大きいですよね」(Isaac)
「その先生と出会っていなかったら、違う人生を歩んでいたかもしれないです」(メンディー)

とはいえ、すぐには音楽に興味を持たず野球少年だったというメンディー。けれど「いま思い返すと、洋楽好きだった母の影響で自宅では常に音楽が流れていましたね」。ローリン・ヒル、ダイアナ・キング、そしてm-floのような日本アーティストも。幼少期から染み込んだ多彩な楽曲たちが、いまでも自身の音楽を支えるバックボーンになっている。

人と比べて落ち込むことは誰にでもある。それをポジティブにとらえてもいい

さて、いまでこそパフォーマー/アーティストとして活躍するメンディーだが、ダンスをはじめたのは意外に遅く、大学生のころ。当初の動機はというと…じつは「モテたかったから」。

メンディーは「見た目から入る」タイプ。ダボダボのファッションに身を包み、大学のダンスサークルへ。はじめは先輩たちも「これは大型新人が来た」という目で彼を見ていたのだが…。

「実際、『いけそうだな』って思いましたか?」(Isaac)
「ギャフンと言わせてやる!という感じではじめたんですが…全然踊れませんでした(苦笑)」(メンディー)

まったくリズムがとれず、周囲のがっかり感に悔しさを覚え、その後必死に練習にのめり込んだという。しかしながら、1年後にはLDHのダンススクールオーディションに合格し、さらに数ヶ月後にはGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーに選ばれたのだからすごい。

グループのメンバーは幼少期からダンスを続けてきたエキスパートばかり。「この差はどうしたら埋まるのだろう」と思い悩んだこともあったそうだ。

「人と自分を比べて、気持ちが落ちることって誰にでもあると思うんです。僕も悩んだけれど、見方を変えれば、長年ダンスをやってきた“先生”が周りにたくさんいるということ。それってすごくいい環境だなと。みんなのいいところをどんどん真似していけばいいんだと、ポジティブに考えられるようになりました」(メンディー)

しかし、どうしても敵わない相手もいる。だったら、別のジャンルで勝負する。「メンバーそれぞれが違う役割を担えるほうが、チームとしてのポテンシャルも上がるから」。本人いわく“シフトチェンジ力”。この柔軟な前向きさ、そして多様な才能へのリスペクトも、関口メンディーをかたち作る重要な要素といえそうだ。

テレビに映る自分と本来の自分のギャップに葛藤もあった。
でも、それもいまは自分の強み

トーク後半、話題となったのは「自分らしさ」のこと。

バラエティでも活躍を見せ、世間に「関口メンディー」というキャラクターが受け入れられることに喜びを感じつつも、「本来の自分とのギャップに、葛藤を覚えることは確かにありました」と語るメンディー。

“おもしろいメンディー”と自身の描く“アーティスト像”のはざまで揺れ動くこともあったという。だが、ある時から「それも含めて自分らしさであり、強みだと思えるようになった」と力を込める。

自分らしさはひとつではない。自身に存在するいくつものキャラクターに気づくこと、見つけてもらうこと。“多様性”とは集団のなかだけでなく、個人のなかにも存在することを思い知らされる。それらに一つひとつ丁寧に向き合っていった先に、「関口メンディー」がいるのかもしれない。

「たとえばいま、芸能界を目指す若い子たちにアドバイスするなら?」(Isaac)
「得意なことを、自分がいちばんに楽しむのが重要なんじゃないかな。そしてテレビは“人と違う人”の場所だと思うんです。“異なり続ける”ことで、おのずとそういう世界に引っ張られていくのだと思います」(メンディー)

MASH UP独占インタビュー
——関口メンディーが語る「カルチャーに、ボーダーは要らない。」

『GOLDNRUSH PODCAST』は、以前からリスナーとして親しんでいました。カルチャーや価値観、知らなかった世界とつながることができて、本当に刺激的な番組だなって。聴いているだけで学びがあるというか、視野が広がる感覚があったんです。ゲスト出演のオファーをいただいて、とても光栄な気持ちです。

きっかけは、知人を通じてMCのIsaacくんを紹介してもらったことでした。実際に会って話したら、すぐに意気投合して。彼には明確なビジョンがあるし、まだ成熟しきっていない日本のPODCASTシーンを盛り上げようと奮闘している。海外ではPODCASTはすでに文化として定着しているけれど、日本ではまだ開拓中。そんな彼の起業家精神というか、挑戦する姿にリスペクトを感じます。

今回は公開収録ということで、少し緊張もあります(※取材は収録前)。でも、それ以上にワクワクしています。リスナーとして番組を聴いていたからこそ、「どんな話をしようかな」「ちゃんと面白い話ができるのかな」って不安にもあるけれど、良い具合にアドレナリンが出ている感じです。

収録の舞台は歌舞伎町。僕にとってはThe 繁華街というか、“眠らない街”というイメージがあります。常に人がいて、いろんなカルチャーが混ざり合っていて。こんなふうに良い意味でのカオス感がある街って、日本にはそう多くないですよね。だからこそ、外国人観光客にも人気なんだろうなって。僕自身も映画を観に来たり、エンタメ施設に足を運んだりしています。来るたびに進化していて、面白い街だなと思います。

そんな街で今回のようなイベントができるのは、すごく意味のあることだと感じています。歌舞伎町って、つねにアップデートを続ける“挑戦の街”でもある。そこで自分の思いを言葉にできるのはありがたいことだし、自分の存在をより多くの人に知ってもらえる。僕の目標は日本だけでなく、ワールドワイドに活動していくこと。そのためにも、こうした機会は大切にしたいです。

そしてちょうど、僕にとって初めてのEP『R777』がリリースされるタイミング。このEPは自分が心から「一緒にやりたい」と思ったクリエイターたちと、ともに制作した作品です。僕は父がナイジェリア人で、母が日本人。アメリカにもルーツがある。そういった背景や、自分が聴いてきた音楽、訪れてきた土地、触れてきた文化──それらを音にするとこういう形になるのかなと。結果、ヒップホップもあれば、R&Bの要素もあって、いろんなジャンルの音楽が詰まったEPになりました。

制作にあたり海外のフェスにも何度も通って、世界の音を体験して、自分なりの音楽を探し続けてきました。その結果が込められた初めてのEPということで、いまはみなさんの反応が本当に楽しみです。

「自分らしさ」ですか? うーん、説明するのはなかなか難しいですね。でもきっと、自分が見てきた景色、聴いてきた音楽、経験してきた出来事…そういった全部が“自分らしさ”なんじゃないかなって思います。

小さな頃から、自分の見た目がまわりと違うことには気づいていました。ストレートヘアーに憧れたり、悩んだりしたこともあった。でも結局は、誰もが自分の持っているカードで勝負するしかない。だったらこのアイデンティティをどう生かすかを考えた方が良い。その問いかけが、自分らしさにつながっていくのかもしれません。

東京という多文化の街で育ったことも、自分にとっては大きな財産です。ありがたいことに、目立った差別を経験したこともありません。でもそれゆえに、“多様性”について深く考えるきっかけもなかった。いまは、課題も含めて人種やルーツについてもっと学びたい。そんな想いを深めるきっかけとしても、『GOLDNRUSH PODCAST』は自分にとって大切なコンテンツなんです。

よく覚えているのが、小学4年生の時に母から言われた言葉。「メンディーは、日本と世界の“かけはし”になってほしい」って。その言葉がずっと自分の中に残っていて。当時はその意味を深くわかっていなかったけれど、漠然と「そうなるんだな」と思った。その気持ちはいまも変わっていません。

混ざり合うからこそ面白い。歌舞伎町で、これからのカルチャーの話をしよう

公開収録のあとには、番組とゆかりのある次世代DJやプロデューサーたちが集結するDJイベントを開催。これに先駆け、イベントの次の日にリリースされる関口メンディー初のEPをいち早くお披露目するリスニングパーティーも行われた。

タイトルの『R777』はリリース日の令和7年7月7日にちなんだもの。メンディーいわく「それぞれに違う色の、ボーダレスな6曲」だ。

どこかエキゾチックなムードが光るヒップホップナンバー“ZONE”、メロウな歌声が沁みわたるR&Bテイストのラブソング“CloseToMe”、中東を思わせるダンスブレイクパートが印象的な“MANDEMIC”──まさにボーダレス、ジャンルレスな楽曲たち。

音楽が鳴った瞬間、グッと“アーティスト”の表情になるメンディーに心を掴まれる。

「“Spinnin”、この曲めっちゃ好き(笑)」(メンディー)
「いいですね! めちゃくちゃキャッチーです」(Isaac)

はしゃぐように音楽に身を委ねるふたりの姿が、リスナーたちの記憶に刻まれたことだろう。

「何回でもリピートできるような曲順になるよう考えました。ぜひいろんなシーンでみなさんに聴いてほしいです!」とメンディー。さらに新曲も目下制作中とのことで、今後の音楽的挑戦にも期待が高まるところだ。

ふたりは固い握手をかわし、リスニングパーティーはフィニッシュ。その後も終電間際まで、DJがまわす個性豊かな音楽が「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」を鮮やかに彩り続けていくのだった。カルチャーに境界はない。混ざり合うほどに面白い。GOLDNRUSH PODCAST、そして歌舞伎町は、これからも“多文化”のホットスポットであり続ける。

文:徳永留依子

写真:古末拓也

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