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【NEXT UP! #15】ecec:デカい箱で、独自のスタイリングで。クラブシーンで開花する新たな才能

歌舞伎町

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NEXTUP
DATE : 2026.03.17
劇場、ライブホール、屋外ステージ、路上ライブスペース、ナイトクラブ──さまざまな“表現の場”が、東急歌舞伎町タワーにはある。ダンサー、シンガー、アイドル、DJ……。そこで日々パフォーマンスを行うクリエイターたちの顔ぶれもまた、幅広い。

あらゆる価値観が交差する歌舞伎町に集う次世代の才能たちの、過去・現在・未来に迫るインタビューシリーズ「NEXT UP!」。

今回登場するのは、DJ/ファッションデザイナーとして活動するecec。サーフィンやスケボーなどのストリートカルチャーを原体験に、LAでの旅やレイヴ体験を経て、自身のスタイルを形成してきた。スターへの憧れ、大箱志向のパフォーマンス観、そして世界を志向する未来像──その輪郭をひも解く。

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<NEXT UP!的 推しポイント>

  1. 衝動を隠さないスター志向
  2. LA体験で獲得したスケール感覚
  3. 世界基準でフロアを見据える野心

ecec(イーシーイーシー)

福岡県出身。DJ/ファッションデザイナー。幼少期よりサーフィン、スケートボードなどのストリートカルチャーに親しみ、マイケル・ジャクソンに影響を受けダンスを始める。上京後、オカモトレイジの誘いをきっかけに本格的にDJ活動をスタート。LAでのポップアップ参加やレイヴ体験を経て感性を拡張し、帰国後はIori Yamakiとともにブランド「ADHD」を始動。音楽とファッションを横断しながら、クラブシーンで存在感を高めている。ZEROTOKYOなど大型ベニューでのプレイも重ね、国内外を視野に活動の幅を広げている。

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―Beginning― 
横ノリとムーンウォーク、身体から始まった表現衝動

― ご出身はどちらでしょうか。

福岡の、わりと街中のほうです。父親がサーファーで、毎朝4時から仕事前にサーフィンしに行くような人でした。その影響で自分も小学生くらいからサーフィンやスケボーを始めました。「横ノリ」なストリートカルチャーが身近にあった感じです。

― 最初にハマったアーティストは誰ですか。

小学生のとき、マイケル・ジャクソンに憧れて。今でもマイケルが一番好きですね。ドキュメンタリーで、難病の子どもたちを訪ねるマイケルの映像とか観て「かっけー!」と思って。

― マイケルが亡くなったときは、ショックだったんじゃないですか。

そうですね。マイケルが亡くなったあとの、シルク・ド・ソレイユのトリビュート公演(「ザ・イモータル ワールドツアー」)に行ったんですよ。そしたら、客席の子どもたちをどんどんステージに上げてく演出があって。そこで自分もステージに上がって、練習してきたムーンウォークをやったら盛り上がったんです。それが自分にとっての(オーディエンスを盛り上げる)原体験かも知れません。

― ececさんは「俺がカニエだ!」って叫ぶ動画がミームになっていましたが、マイケルやカニエ・ウェストのような大スターが好きなんですね。

スターの中のスターみたいな人が好きですね。昔から、やるなら自分が得意なことで、一番になりたい!と思ってます。

― DJを始めたきっかけは何でしたか?

上京したタイミングで、オカモトレイジ(OKAMOTO’Sのドラマー)くんが「石井ちゃん、うちのポップアップでDJやってみない?」と誘ってくれて。それまでも、自分のブランドのレセプションパーティーで適当に曲をかけたりはしてたんですけど、呼んでもらったからにはちゃんとやりたいと思って。前日、徹夜でDJの練習をして、そのまま会場に向かいました。

― オカモトレイジさんはカルチャーシーンのキーマンですよね。

そうですね、本当にフラットに接してくれるし、それでいてちゃんと人を見抜く力もあるし。数字じゃないところで、面白いかどうかを判断してる人ですね。レイジくんに声をかけられたらやっぱりやる気が出ますね。JUN INAGAWA(イラストレーター)を紹介してくれたのも、レイジくんでした。

― そのジュンイナガワさんとLAに行ったこともあるそうですが、それはどういったきっかけでしたか。

上京1年目のころ、自分のブランド、服作りを頑張ってたんですけど、思ったよりパッとしなくて。上京したら、もっとすぐに「カマせる」っていう自信があったんですけど、現実は厳しくて、ちょっと悩んでました。

そのタイミングでジュンから「LAでポップアップするけど、来る?」って誘われたんです。そのとき19歳だったんで「10代最後の夏だし、ここがターニングポイントだ!」と思って、頑張って服を売って、なんとか旅費を貯めました。

― LAでは、どんな体験がありましたか。

初めての海外だし、とにかく濃かったですね。そのときの想い出だけで、話が止まらなくなります(笑)。SIMカードの設定をし忘れて、向こうの空港に着いてすぐ、スマホが使えなくなっちゃって。ネットが使えるエリアでマップをスクショしまくって、それで何とかジュンたちのいるエリアにたどり着いたんですけど、マップの細かい部分までは拾えなくて。「ジュン~!」って叫んで街を歩き回って、ヘトヘトになってたら、遠くのホテルの扉がガチャッと開いて「石井ちゃん?」ってジュンが出てきて(笑)。

― ドラマのようですね。

むこうのレイヴ・パーティーにもハマったし、街で絡まれて銃で撃たれそうになったり、濃い体験ばかりでした。とくに、LAで有名なジョシュア・ツリーを訪ねたときは感動しました。サボテンしかないような砂漠をひたすら歩くんですけど、近くにエリア51もあるし、なんか「パワー」のある場所なんですよね。

当時(アイルランドの歌手の)エンヤにハマってたんですけど、その砂漠でエンヤを聴いてたら、大号泣しちゃって。今まで悩んでたこととかが吹っ切れたような感覚がありました。そこで一緒だったIori Yamakiってやつと、東京に帰ってきて始めたブランドが『ADHD』ですね。

―Essence― 
“チャラさ”の塩梅に宿る美意識

― 音楽とファッション、両方に共通しているものはありますか?

あえて古い時代の服も、見せ方によってオシャレに見せられるし、チャラ箱でかかってるようなEDMでも、展開によってカッコよくなるし。音楽でもファッションでもそういう「スタイリング」があると思います。

自分としてはまずヤバい音楽があって、服もカッコいい、ファッションと音楽が交わってる空間が理想ですね。一般的に「チャラい」とされるEDMですが、やっぱり無条件でブチ上がるし、チャラさも「塩梅」が大事だと思います。

― 今回、ZEROTOKYOの『COMET SOUNDS』に出演されますが、主催のCOMETとはどのような関係でしょうか。

彼らが雑誌(COMET MAGAZINE)を始める前から仲良くて。それで、最初の号から取材されたり、年も近いしパーティーで会ったりって感じですね。

― 互いにリスペクトしているんですね。

そうですね、今の時代にあえて「雑誌」っていうメディアに注目しているのも面白いと思います。しかもクオリティも高くて、既存の雑誌にまったく負けてないと思うし、同世代のカルチャーを担ってる存在だなと思ってます。

▼COMET へのインタビューはこちら
【NEXT UP! #14】COMET:東京を編集する新世代クルーが映し出す、カルチャーの未来図

― ZEROTOKYOはDJから見て、どんな場所でしょうか。

日本のクラブでおそらく最も大きい場所だろうし、DJやっててテンション上がりますよね。もちろん小さい会場でやるDJもそれはそれで面白さがあるんですが、自分はデカいステージが似合うDJでありたいと思ってるんで。120%やれるのはやっぱZEROTOKYOのメインステージだと思います。

― 歌舞伎町はどんな街だと思いますか?

やっぱりカオスな、欲望の街ですね。それでいて、皆が共存している。自分が行ったことのある海外の街と比べても、歌舞伎町はかなり独特だし「歌舞伎町」というひとつの国みたいだと思います。渋谷とはまた違う爆発力を秘めてる場所ですね。

―Future― 
世界のフロアへ、その先のビジョン

― 今後の活動の予定を教えて下さい。

自分でパーティーを企画したいですね。日本の仲間だけじゃなく、世界で出会った人たちを呼んで、盛り上がりたいです。あと、DJだけじゃなく、自分で音楽も作りたいですね。それを経て、やがては世界のもっと大きなステージに立てるようになりたいです。

― 将来の夢を教えてください。

旅ですね。自分はディスカバリーチャンネルとか、大自然やサバイバル系の番組が好きなんですけど、最近ディズニー+でやってる『POLE TO POLE』っていうのにハマってて。ウィル・スミスが探検家や研究者といっしょに、南極から北極に向かって旅をする番組なんですよ。

少数民族の文化に触れたり、枯れたサンゴ礁で温暖化の現実を目の当たりにしたり……という番組なんです。地位や富とは違う、本当の幸せが何かっていうのと、極地に行くことで考えさせられるというか。

なので、自分もそういう風に旅をしてみたいですね。裸で狩りをしているような部族の村とか、滞在してみたいです。

― LAの体験しかり、冒険の旅が好きなんですね。

はい、やっぱり自分自身が一番成長するのが「旅」って感じですね。自分で踏み込んだ先に、本当の「学び」があるんじゃないかと思います。

文:小鉄昇一郎

写真:Tomohiro Takeshita

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