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真摯な歌、ド派手なパフォーマンス、それぞれの音楽が彩る路上ライブ Kabukicho Music Live vol.15

歌舞伎町

コミュニティ
Kabukicho Music Live イベント 音楽
DATE : 2024.04.22
新宿駅南口などを皮切りに、さまざまな場所で盛り上がりを見せている路上ライブ。しかし、公共の場であるがゆえの問題もあり、なかなか思う存分にライブができる場が減っている現実もある。昨年からはじまった「Kabukicho Music Live」(以下KML)は、歌舞伎町の真ん中にあるシネシティ広場で行われる「公認」の路上ライブイベントで、演奏する側も観る側も思う存分堪能できる。
強風と寒さに見舞われながらも、熱いパフォーマンスが展開された3月21、22日の二日間の様子をレポートする。

アーティストの熱い希望で実現した組み合わせ

Anna

日本とロシア、二つのルーツを持つシンガーソングライターAnnaはKMLに3回目の出演。アコースティックギターが強風に煽られながらも、慣れた様子でスタンバイ。開演時間になると、東急歌舞伎町タワーの巨大ビジョンに映る自分の姿を見ながら「これ私です! はじめます!」と宣言し、「オーバーフロー」からライブをスタート。軽快なメロディーが弾けていく。「私が出演するときは毎回風が強いんです。群馬から風を呼び寄せてるのかも」と地元上州のからっ風を嘆きつつ、2曲目はヨルシカ「晴る」をカバー。続いてはアニメ『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』のエンディングテーマだった「花のように」。オーディエンスから「待ってました!」とばかりに大きな拍手が送られ、オタ芸を打つ人も。観客からリクエストを募ると、次に出演する703号室の「僕らの未来計画」の声が。実はAnnaと703号室は大の仲良しで、今回の共演はAnnaからの働きかけで実現したそう。うれしそうに親友の曲を歌い上げた。続いてのリクエストは自身のデビュー曲「ひとりの世界」、そしてAimer「蝶々結び」。

寒さでかじかむ手をカイロでなんとか温めながら、アニソンカバーゾーンに突入。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、いきものがかり「熱情のスペクトラム」、Mao「夢をかなえてドラえもん」とラップや声真似も駆使してパフォーマンスすると、シネシティ広場の外からも歓声が飛んだ。そしてて再びのリクエストタイム。あまりの寒さにギターが弾けず、アカペラでやることになったが、須田景凪「メロウ」、あいみょん「マリーゴールド」、レミオロメン「3月9日」、TK from 凛として時雨「Unravel」、703号室「偽物勇者」を歌い切った。最後は今年1月にリリースされたアルバム『アルストロメリア』のリードトラック「Lily」。ハンドマイクでアッパーに歌い、オーディエンスもタオルを回して応答。大盛り上がりのライブとなった。

「このイベントに出させていただくのは3回目なんですけど、最初と2回目は雨が降ってて、今回は風が強くて(笑)。でも、それが路上ライブの醍醐味というか。ライブハウスで歌うのとは音響も違って、風が吹き込む音とかもあって、それもまた特別な魅力だと思うんですよね。私はそれが大好きなので、今日も最後までやり切れて本当に良かったと思います。最初は路上ライブの経験が全くなかったんですよ。こうして呼んでいただくことで、ライブハウスとは違った盛り上げ方や対応の仕方が学べるので、本当に勉強になります。今後の一番の目標は、またアニメの曲をやりたいですね。まだ世の中に出していない曲がたくさんあるので、それも届けられたらうれしいです!」

Anna

2017年「ひとりの世界」でCDデビュー。フォロワー数75万人を越えるTikTokではオリジナル曲や、カバー動画を日々アップ。2022年、2023年と続けてドラマやアニメのタイアップを獲得し、地元・群馬でのラジオ番組がスタートするなど着実に勢いをつけている。2024年1月22日には自身初となるフルアルバム『アルストロメリア』をリリース。アルバムを通して、アーティストAnnaとして、そして1人の女性としての成長を感じられる等身大の作品となっている。

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703号室

シンガーソングライター岡谷柚奈によるソロプロジェクト、703号室。「今日みたいな機会がないと一生来れなかったなぁと思う場所だから、うれしいです」と感謝を述べると、「せっかくだから一緒に歌いたいね!」とライブを終えたばかりのAnnaを呼び込む。二人ともアニメ好きということで、Ado「私は最強」、KANA-BOON「シルエット」とアニメソングをデュエット。息の合ったハーモニーを聴かせた。一人になると上着を脱ぎ、「案外寒くないかも、たまに真冬に川や海に浸かったりするんですよ」と驚きの発言。トラックを鳴らし、ギターをかき鳴らして歌われたのは代表曲の「偽物勇者」。拳を上げて聴き入る観客もいた。その様子に「寒さを全く感じないくらい楽しい時間です」と微笑む。

爽やかな「裸足のシンデレラ」、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」のカバーを終えると、リクエストを受けてAnna「旅行計画」、日食なつこ「水流のロック」を披露した。ギターを置き、ハンドマイクで「非釈迦様」。ギミックフルなトラックの上でパワフルな歌声を聴かせる。続く「人間」でも変幻自在の歌唱を見せる。最後には再びギターを持ち「僕らの未来計画」を熱く歌って幕を閉じた。

「寒いしお客さんがいるかどうかも心配で、はじまる前は不安だったんです。でも、たくさんの人が立ち止まってくれて、本当にうれしかったですね。音楽ってやっぱり楽しいなと思いました。やってる最中は寒さを全然感じなかったんですよ。ヒートテックのおかげかもしれないけど(笑)、ポカポカした気持ちで歌うことができました。後半になるにつれてどんどん熱くなっていきましたね。Annaちゃんと一緒に歌えたのもうれしくて。大親友なので絶対に一緒にやりたいと思っていましたし、お客さんもすごく喜んでくれました。最初は、この場所に対して怖いイメージがあったんです。でも、実際には全然そうじゃなくて、歌いやすいし、目の前にゴジラもいるし、もっと新宿に遊びに来ようかなって思いました。音楽をはじめたときからずっと、ドームやスタジアムでワンマンライブをやりたいという気持ちでやってきたので、この先絶対に叶えたいです!」

703号室/岡谷柚奈

2018年に横浜の専門学校の同級生3人で「703号室」を結成し、卒業と同時に岡谷柚奈のソロプロジェクトとして本格始動。音楽サイトのストリーミングは1億4,000万回再生を突破。TikTokフォロワーは47万人。日本から世界で活躍する才能を発掘するグローバルプロジェクトでは、ファイナリストにも選ばれた。また、Instagramのフォロワーが18万人を超え、様々な国から支持を集めている。

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LUV K RAFT

KAREN、Mishuのツインボーカルと、ギター/マニュピレーション担当の北野正人からなるポップロックマルチクリエイターユニット。普段は関西を中心に活動している。「心温まる曲をお届けします!」と、1曲目は二人のエモーショナルなボーカルが絡む「SOMEDAY」。「大阪も昨日は雪降ってましたけど、暦の上では春なので」というMCから、桜をモチーフにした曲を集めたメドレーへ。中島美嘉「桜色舞うころ」、FUNKY MONKEY BΛBY’S「桜」、森山直太朗「桜」、コブクロ「桜」、河口恭吾「桜」、いきものがかり「SAKURA」、宇多田ヒカル「SAKURAドロップス」、福山雅治「桜坂」、aiko「桜の時」、ケツメイシ「さくら」、アンジェラ・アキ「サクラ色」の11曲。こんなに桜の曲があったのかというほどの桜づくしは圧巻だ。春つながりで『秘密のケンミンSHOW 極』のエンディングテーマだった「春色」も披露。

「(寒さで)膝がずっと笑ろてる」「ほんまに寒い中観に来てくれてありがとうございます!」と、MCの掛け合いも軽妙。「寒い時期にこそ聴いてほしい曲」と、バラードの「ありがとう…」、「Heart」を切なく歌い切ると、再びメドレーに。今度は平成ヒットソングがテーマで、Nobodyknows+「ココロオドル」、Mr.Children「HANABI」、SEAMO「マタアイマショウ」、EXILE「Lovers Again」、ポルノグラフィティ「サウダージ」、大塚愛「プラネタリウム」、アンダーグラフ「ツバサ」、ORANGERANGE「以心電信」、BUMP OF CHICKEN「天体観測」、青山テルマ「そばにいるね」、Aqua Timez「等身大のラブソング」と、ある世代を狙い撃ちするような選曲に悶絶するオーディエンスたち。最新曲「バリア」、2021年リリースの「カラバリ」でラストスパート。80年代フレーバーを感じさせるダンサブルなパフォーマンスで締めくくった。

Mishu「気温は寒かったんですけど、みなさんあたたかくてすごくうれしかったです」

KAREN「海外の方もたくさんいて。踊り狂ってた方もいたし(笑)」

Mishu「外ならでは楽しさがありました」

KAREN「今私たちはROAD TO 武道館ということでやっているんですけど、それに向かってオンラインでの活動もですけど、こういう風にオフラインでのライブも増やしていきたいと思ってるので、みなさんぜひ来て下さい!」

LUV K RAFT

80’s/90’sのエッセンスが残る楽曲から、エレクトロなサウンドまで楽曲毎に全くイメージが異なるボーダーレスなスタンスが特徴の一つでもあるポップロックマルチクリエイターユニット。KAREN(Vo)、Mishu(Vo)に加え、北野正人(Gt/Mani)が作詞/作曲/アレンジ/映像撮影をプロデュースするなど、メンバー全員でサウンド、ヴィジュアルすべてをコントロール。SNSで話題となり、ライブパフォーマンスや数々の映像制作など、リスナーの支持を獲得し続けている。

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カブキの民も巻き込んで大盛り上がり

なかねかな。

TikTokから飛び出した、ボーカルなかねかなとメロディーメーカーゆでたまご安井によるユニット。サウンドチェックの段階からファンが集まり、タオルを回している白熱ぶり。メジャーデビュー曲でもある「モテすぎて草、誘ってて森」がはじまれば、なかね曰く“カブキの民”たちもどこからか集まってきて大盛り上がり。「ライブ体操第一」でも「声出せ!」の煽りに負けじとオーディエンスも大声で応える。「めちゃくちゃ寒い中、立ち止まってくれてありがとうございます!」と感謝を伝え、続いては真夏のドライブソング(に見せかけた)「demo」。シティポップ調の爽やかなメロディの上でも、どんどん煽る。

1週間後に控えた対バンツアーのチケットを無料で22枚配布すると、我先にとステージ前に観客が詰めかける。「スケジュールあいてるの? ほんまか? まじで顔覚えたぞ」と牽制し、「年始の109やん」とツッコミながら一瞬で全て配り終えた。「寒いやんな? 体動かした方がいいな。筋トレやな!」と「マッスルコール」ではバスドラムに合わせてスクワットし、「おしり派」では観客みんなでジャンプ、最強の自己肯定ソング「ハッピーバースデー己」では二人ともステージを降り、サークルを作ってオーディエンスをぐるぐる回していた。遠巻きに眺める人々も、全員笑顔に。最後は歌舞伎町にぴったりな「AWA」でシネシティ広場を掌握。もう一度「demo」を披露して幕を閉じた。

なかね「歌舞伎町の人たちは元気ですね。めちゃくちゃ楽しかったです」

安井「『カブキといったらなかねかな。』ということに」

なかね「絶対あかんやろ、そのキャッチコピー(笑)。あのカブキの民たちは対バンツアーのチケットかさらって行ったけど、本当に来てくれるんですかね?」

安井「来てほしいな」

なかね「動画を作るときも初めて見る人のことを考えることが多くて、ライブでも意識していることなので、みんな楽しんでくれたみたいでよかったです」

安井「僕ら免許ない曲(「demo」)を歌ったんですけど、海外から来た人たちがめっちゃのってくれてたんですよ。歌詞わかったら激昂するんやないかと」

なかね「いい曲なんで、歌詞さえ聞かなければいいなと思いました(笑)。今は対バンツアーを完走することを目標にやってますが、いずれはZepp Shinjuku (TOKYO)に立てるようなアーティストになりたいので、よろしくお願いします!」

なかねかな。

令和のクソングメーカー「なかねかな。」は元劇団研究員(ダンスが下手すぎてクビになる)であり、アポロシアターで開催されたアマチュアナイトに出演するほどの確かな歌唱力を持つ“なかねかな”と、ポップで耳に残るメロディーメーカーの“ゆでたまご安井”の二人で活動するTikTok発のユニット。

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