市川歩美/チョコレートジャーナリスト
5才から筋金入りのチョコ愛好家であり、世界を股に掛けるチョコレートジャーナリストとして活躍。テレビやラジオ、イベントへの登壇、記事執筆など、多岐にわたってチョコの魅力や文化を伝える。現在は、カカオ生産国のSDGsや夏チョコの普及などにも貢献している。
~パリ発、チョコレートの祭典~ サロン・デュ・ショコラ 2024って、一体どんなイベント?
スイーツファンの間ではすっかりお馴染みのイベントとして浸透している「サロン・デュ・ショコラ」だが、一体どんなものなのか。このイベントを今回初めて知った人やチョコレートビギナーのために、日本開催の第一回目から参加されている市川さんに話を聞いた。
市川歩美さん(以降、市川):「サロン・デュ・ショコラ」とは、1995年にフランスのパリでスタートしたチョコレートの祭典。世界中から有名ショコラティエやブランド、高級チョコレートが集まります。当初は小規模だったにもかかわらずじわじわと人気を集め、日本では2001年に第一回目が開催されました。そして2003年からは、現在の三越伊勢丹が主宰となり、それ以降毎年開催されています。かれこれ20年以上の歴史を持つチョコレートのビッグイベントとして人気と話題を集めるイベントとなっています。
1995年当時の日本には、海外のチョコレートショップはそれほど多くなく、さらにSNSも発達していなかったので、チョコレートに関する情報も全然入ってきていませんでした。そんな中、サロン・デュ・ショコラでは国内外の有名なチョコレートが買えるということで多くのスイーツ好きが集まり、そこでの情報交換なども盛んに行われるようになっていったんですよ。
初の3部構成になったことで、より自分好みのチョコレートに出合える!
22回目となる今回は「Touch!」をテーマに掲げ、伊勢丹新宿店では初の三部構成で実施。一般会期2024年1月18日(木)から2月14日(水)まで、約1ヶ月にわたり開催されている。
市川:今回は3部構成になっており、一言でいうとお客さまが自分好みのチョコレートを分かりやすく買い物できるようになった形かと思います。
既に終了していますがPart1の「TASTE OF CACAO」では、カカオ好きの方に向けたラインナップになっていました。さまざまな産地のカカオを使ったチョコレートや、ビーントゥバー(カカオ豆からチョコレート一環製造するスタイル)の板チョコなど、とにかくカカオに特化したブランドのチョコレートを買い求める人向けの内容になっていました。
続いてPart2の「THE ARTISANS」は、三越伊勢丹が直輸入しているチョコレートが取り揃えられており、フランスを中心としたブランドのチョコレートが店頭に並びます。このイベント自体のファンが最も注目するセクションでもあり、お目当てのブランドなどのチョコレートを食べ比べては品評会のように盛り上がるなど、会場もより熱狂的な雰囲気に包まれます。
そして2月5日(月)からバレンタイン当日まで開催されているPart3は「THE NEXT」と題し、日本全国、及び海外で人気のチョコレートブランドが一堂に会するラインナップになっています。誰もが知る有名どころのショコラティエが新作や限定品を展開するなど、3つのパートの中でも一番気軽に楽しめると思いますね。
面白いのはボンボンショコラ(一口サイズのチョコレート)や板チョコだけでなく、チョコレートを使ったお菓子、アイスクリームやパフェにパン、ドリンクに食事、チョコレートとドリンクのペアリングなども展開していて、さまざまな切り口、バリエーションでチョコを味わうことができることです。「こんなチョコレートもあるのか!」と発見があって楽しいと思いますよ。
チョコの祭典を存分に楽しむには、ガイド本を片手に歩きやすい靴と軽装、十分な時間配分を!
Part3だけでも60軒近いチョコレートブランドが出店するということで、何も用意せずにふらりと立ち寄るなんてもったいない! ここでも「サロン・デュ・ショコラ」を知り尽くした市川さんに、イベントを楽しむコツをうかがった。
市川:まずは何を見たいのか、簡単にでもいいのでお目当てを決めておくといいですね。イベントに関するガイド本が出版社や公式から出ていますので、それを事前にチェックしておくのがおすすめです。例えば旅行へ行くときも、行先の情報などは最低限調べていきますよね。それと同じように、ガイド本にはたくさんの情報が集約されているので、それを見て気になるところには付箋やチェックをつけて、会場マップとあわせて動くこと。そうすると無駄にぐるぐると動き回ることなく目当てのチョコを効率的に入手できると思います。それに、ただチョコレートの紹介だけでなく、それぞれのブランドの成り立ちやこだわり、ショコラティエに関する物語などもきちんと取材されているので、読んでから行くとさらに面白いのではないでしょうか。
意外と気をつけていただきたいのが服装です。ブランドによっては行列ができることもあり、チョコを入手するまでに想像以上の時間がかかる場合もあるので足元は歩きやすい靴を準備してください。そして会場は人も多く、白熱していて思いのほか暖かい。ダウンジャケットやファーコートなど、着るにも持ち歩くにも嵩張るアウターはできるだけ避けていただき、会場では軽装をおすすめします。時には整理券が必要だったり、入場制限がかかったりする場合もあるので、時間にも余裕を持っていきましょう。
さらにアドバイスするとしたら、チョコはボックスのものが多いのでマチがあり軽い、ナイロン素材のバッグを持っていくといいですね。あれこれ買い過ぎてしまい重くなることも考慮しておきましょう。あとはお腹も多少は空かせていくこと。空腹だと判断力が鈍ってしまうので多少はお腹を満たしつつ、イートインのメニューも楽しめるように。それに伴い、ご予算もある程度余裕を持って準備しておくといいですね。
チョコレートビギナーなら思い切ってジャケ買い、お店の人におすすめを聞いても!
具体的なアドバイスをいただいたところで、いよいよチョコレート選びについて。そもそもデパートでチョコレートを買うという経験自体が少ないビギナーの場合、お祭りムードの中でどのようにチョコレートを選べばいいのだろうか。
市川:お店ごとにイチオシがあるのですが、「SDC限定」「新作」と書かれている商品はこのイベントならではのものなのでおすすめですので、商品紹介をチェックしてみてください。それから、「多すぎてわからない!」という人は見た目、いわゆるジャケ買いがおすすめです。パッと見た感じが美味しそうだったり、自分好みだったりするもの。またパッケージにもショコラティエの方々はこだわっているので、そこも含めて自分が惹かれたもの、ピンときたものを選ぶと、チョコレートとのいい出合いになる気がします。
またブースには、お店の方やチョコレートを実際に作ったショコラティエがいることもあるので、気軽に話しかけてリコメンドしてもらうのもいいですね。ショコラティエはお客さまに慣れていらっしゃいますし、とても気さくに答えてくださいますよ。
今年はこれ!おすすめチョコレートブランド&メニュー6選
年に一度のチョコレートのお祭り「サロン・デュ・ショコラ」の楽しみ方についてご指南いただいたところで、最後に市川さんから教えていただいた、市川さん注目の多くのショコラティエやメニューの中から、編集部が6つをピックアップ。そんな注目の6選を紹介しよう。
1:W.Boléro(ドゥブルベ・ボレロ)
市川:本店が滋賀県守山市にある「W.Boléro(ドゥブルベ・ボレロ)」は、出店当時から注目しているブランドあり、すでにとても人気です。独創的で繊細なチョコレートに美しい色や柄が施されており、中国茶や白茶など、さまざまなお茶とチョコレートをかけ合わせた「ボンボンショコラ テ・ユイット2024(8個入り 2,678円)」は間違いなく絶品だと思います。店舗が東京にないこともあり、今回も絶対ゲットしたいです。
2:teal(ティール)
市川:せっかくイートインがあるので、そこでしか食べられないパフェなどもおすすめです。「teal(ティール)」は、新作&会場限定のチョコレートパフェ「苺とカカオのティラミスパフェ(1杯3,801円)」は見た目にも美しく、味も期待できます。会場でぜひ、写真撮影しましょう。
3:LENÔTRE(ルノートル)
市川:「LENÔTRE(ルノートル)」の「フィナンシェ カカオノワゼット(1個324円)」は300円台から手軽に買って食べられますし、とても美味しくておすすめです。
4:LE CHOCOLAT DE H(ル ショコラ ドゥ アッシュ)
市川:甘くないものがいいという方にはお食事系もありますよ。日本でもすでに大人気な「LE CHOCOLAT DE H(ル ショコラ ドゥ アッシュ)」からは、アッシュ流のカレーと一緒にカカオティーが味わえる「カカオカレーセット(1人前2,801円)」を。カカオの香りのカカオティーの味も、体験していただくと面白いと思います。
5:Fushikino(ふしきの)
市川:神楽坂にある料亭「Fushikino(ふしきの)」からは、「鰻カカオ出汁茶漬け+日本酒ペアリング(1人前3,520円)」が出ていてとても驚きました。カカオハスク(カカオ豆の外皮)を使って出汁をとっているそうです。とてもユニークですよね。ちょっと上級者向けですが、エッジの効いた新作や新しい味を体験したいという人もいらっしゃると思いますので、そういう方にも喜ばれそうです。
6:MAISON CACAO(メゾン カカオ)
市川:チョコとドリンクのペアリングも流行っています。「MAISON CACAO(メゾン カカオ)」では、チョコレートとハイボールを合わせたセット「カカオビネガーハイボール1杯とショコラ・コキーユ2粒セット(1人前 2,640円)」も注目。こちらに限らず、チョコレートにぴったりと合うドリンクを作り手が選んで、提供してくれるブースがあります。チョコレートがドリンクでより美味しくなるのは、うれしいですよね。
20年以上続く「サロン・デュ・ショコラ」について、市川さんは「チョコレートとの出合いの場であり、新しい自分を発見する場」と語る。気軽に手に取れるスイーツだと思っていたチョコレートだが、イベントを通して新たな味覚、感性に巡り合う人も少なくないかもしれない。そんな期待も込めて、バレンタイン時期には伊勢丹新宿店の「サロン・デュ・ショコラ 2024」で盛り上がろう。
~パリ発、チョコレートの祭典~ サロン・デュ・ショコラ 2024
〈PART3〉THE NEXT~ショコラの多様性~
一般会期:2024年2月5日(月)~14日(水)
開催時間:10:00~20:00
※2月8日(木)は16:00終了
※最終日は18:00終了
開催場所:伊勢丹新宿店 本館6階 催物場(東京都新宿区新宿3-14-1)
OFFICIAL SITE
文:松倉和華子
写真:玉井俊行