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路上で人生の岐路が交差する、エモーショナルな二日間 Kabukicho Music Live vol.12レポート

歌舞伎町

コミュニティ
Kabukicho Music Live イベント 音楽
DATE : 2023.12.27

再出発の祝祭感にあふれる一日

近石涼

一日目に比べていくらか暖かくなった二日目のトップバッターは、神戸出身でフェスなどにも精力的に出演している注目株、近石涼だ。1曲目の「あきかぜ」は指先から紡がれるアルペジオと力強い歌声が心地良い。身の回りのことをテーマに曲を書くそうで、2曲目の「ハンドクラフトラジオ」は中学生のときに技術の授業で作ったラジオがモチーフ。続いての「兄弟」はサビで「みんなみんな今日は忘れて」の合唱が起こる。

キリンジ「エイリアンズ」、斉藤和義「歌うたいのバラッド」、玉置浩二「メロディー」を熱くカバーし、自身のバラード「くだらない話」も優しく歌い上げる。前日まで神戸にいて友人の結婚式に出席していたそうで、そこで友人のリクエストで披露した「一緒に暮そうよ」を歌う。ラストは「はじまりのうた」。上京し、あらためてスタートラインに立った決意がこもった歌声に、「何回聴いても泣いちゃう」と配信で聴いているリスナーも熱くコメントしていた。

「歌ったことのない場所だったので、冷たい反応だったらどうしようと思っていたんですけど、みなさん温かく聴いてくれて。すごく歌いやすかったし、うれしかったですね。想定していないところで拍手が起きたり、合唱もしてくれたし。そもそも「兄弟」はやるつもりじゃなかったんですけど、雰囲気をみて明るい曲を増やした方が良いと思ってやりました。

歌舞伎町は神戸よりもいろんな人がいますよね。人間のおもしろさというか、自分の周りだけが世界じゃないんだなって感じられました。神戸を飛び出して東京でワンマンライブをやったり、これから企画ライブをやっていくんですけど、来年はより大きい規模でやっていきたいです。神戸で出会わなかったような人にも歌を届けていきたいし、路上ライブもどんどんやっていきたいですね」

近石涼

神戸出身シンガーソングライター。95年、阪神淡路大震災の翌年に生まれる。
『誰かの背中を押したい』
頑張っている全ての人の明日が少しでも明るくなるようにと、歌詞には強いメッセージが込められており、優しさと情熱を兼ね備えた歌声は幅広い世代の共感を得る。
アカペラと弾き語りで培った、心に直接訴えかける熱いパフォーマンスが徐々に注目されるようになり、2023年はCOMING KOBE23やアコースティックフェスティバル、TOKYO CALLING, MINAMI WHEEL, SAKAE SP-RING23など、さまざまなサーキットイベントやフェスに出演している。

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aika

当初予定されていたミュージシャンが体調不良となり、急遽の出演となったaika。今年、福岡から東京に活動拠点を移したばかりのシンガーソングライターだ。新宿駅で迷ってしまいギリギリの到着となった彼女は、大急ぎで準備するとHump Back「拝啓、少年よ」をハンドマイクで歌う。ストレートに伸びる声を響かせると、「サウナに入ったみたいに熱い!」と顔を上気させた。クールダウンのためにと中島美嘉「雪の華」をカバー。屋外ビジョンに映し出される配信画面を見て、「福岡からも観てくれてる!」と大喜び。続いてTuki.「晩餐歌」、Beyonce「Listen」をカバー。この選曲には海外からの観光客も足を止めていた。

ここで福岡在住のシンガーソングライター吉野雄太がゲスト参加。二人の共作曲「またね」を吉野のギターで歌う。二人のハーモニーにオーディエンスも盛り上がり、手拍子が起こった。次は絢香×コブクロ「WINDING ROAD」を二人で熱くパフォーマンス。再び一人になり、自身のオリジナル楽曲パートに。トヨタカローラ福岡のCMソングに起用された「私らしく」、そして最後は「一度きりの人生」を披露。「上京したばかりで、こんなにたくさんの人に聴いてもらえると思わなかった」と喜びを込めた歌声が夜空に響き渡った。

「こんなにたくさんの人が聴いてくれると思っていなかったので、すごくうれしかったです。みんなが自由に音楽を聴ける、すごく素敵な場所だと思いましたね。2ヶ月前に上京したばかりで、何もわからない状況で。そうしたら、もっちゃんに出会って今回歌わせてもらうことになりました。福岡の街と歌舞伎町では雰囲気も違うのかなと思っていたのですが、お客さんもすごく温かくてびっくりしました! 路上ライブができる場所自体が減ってきているので、こうやって歌える場があるのはありがたいです。

今後の目標は、シンプルなんですけど、元気に歌い続けることですね。ステージに立てなくなってしまった時期があって、やっぱり健康な体があるということの大切さを実感したんです。歌い続けて、目の前のお客さんを大事にしていきたいです」

aika

熊本県出身東京在住、シンガーソングライター。福岡での音楽活動を経て2023年、上京。幼少期から現在までのリアルな実体験から出来た歌は、年齢を問わず老若男女に愛されている。また、オリジナル曲の多くがCMソングに起用されている。
東南アジア・南アジア放浪、歩いて日本一周など大好きな旅と音楽で、目の前の出会った人達を笑顔に。aikaにとって歌うことは、生きること。真っ直ぐ、素直な気持ちをありのままに歌う。

 

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Lan

今年1月にBiSを脱退し、9月に名義をLanに変えてソロ活動をスタート。そして、Lanとしてはじめてのライブとなるこのステージを目撃しようと、大勢のファンがシネシティ広場に集まった。期待が高まり、異様ともいえる熱気が渦を巻いている。「おかえりLanちゃん」と書かれたボードを掲げるファンもいるなか、本人が登場すると「おかえりー!!」と大きな歓声が上がる。オーディエンスに向かって深く一礼し、「はじめまして、Lanです」とだけ言うと、1曲目はOfficial 髭男dism「HELLO」をカバー。緊張した面持ちながら、力強く歌いきり、観客からは盛大な拍手が。配信のコメント欄にも「歌声強い」、「やっぱりこの声が好きなんだよな」と、この時を待ちわびたメッセージが続々と書き込まれた。

「こうやってみなさんの前で歌うのが一年ぶりで緊張してます。ほとんどカバーになりますが、一生懸命歌います。よろしくお願いします」とあらためて真摯に伝え、ケラケラ「スターラブレイション」、CHiCO with HoneyWorks「プライド革命」、milet「inside you」、あいみょん「君はロックを聴かない」を披露。この日のセットリストは悩み抜いた末に「自分が好きな曲」を選んだそう。緊張もやっとほぐれてきたようで、歌いながら笑顔が浮かぶ。

ラストはオリジナル曲「ゼロイチ」。先ほどカバーしたケラケラのふるっぺが作詞・作曲したストレートなロックサウンドだ。「たくさんの人に勇気や愛を与えられる曲になっています」というMCの通り、オーディエンスの目は輝き、一緒に口ずさむ人も多かった。Lanの船出を祝う歓声と拍手は鳴り止まず、アンコールの声に包まれながら、デビューライブは幕を閉じた。

「めっちゃ緊張しました。途中から少しは落ち着くかなと思っていたんですけど、結局最後まで心臓が飛び出しそうになってて、表情筋が震えまくって、顔が動かなくて……。寒さも心配だったんですけど、寒さを感じてる場合じゃなかったです(笑)。

グループでやっているときもそんなに表に出るのが得意ではなかったので、1年ぶりに人前に立つとなると、余計なこともいろいろ考えたりして。会場に来てくださったお客さんもみんな緊張してて、子どもの運動会を見てるような顔してるから(笑)。私の緊張が伝わっちゃったのかなと思うんですけど、でも楽しかったですね。

アイドルのときは全部調整してくれるスタッフさんがいましたけど、今は自分でやるから、本当に生というか、ライブという感じです。やってるときは緊張しすぎて『これが最初で最後の路上ライブだな……』と思ったんですけど、またやりたいです。

ソロになって、好きな作曲家の方に『曲を書いて下さい』とお願いしたり、今日のライブも『出させていただけませんか』と連絡したり、自分でやっているんです。元々のんびりな性格なので、活動もマイペースになっちゃうと思うんですけど、自分なりに考えながらひとつずつやっていきたいなと思ってます。曲を増やして、大きいところでワンマンライブとかもやってみたいけど、まずは精神的にも良い感じで、楽しく続けていきたいです」

Lan

2000年、東京都生まれの歌手。2023年9月10日にふるっぺ(ケラケラ)が作詞・作曲を手がけた楽曲「ゼロイチ」をリリースし、ソロ活動開始。2023年12月6日には、Lanとして初のライブ「Kabukicho Music Live vol.12」にも出演。そして、その日には2枚目のシングル「タイトル未定」も解禁した。
今後の活動にも注目してもらいたい。

 

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イベント情報

日時:2023年12月5日(火)18:00~/12月6日(水)18:00~
場所:歌舞伎町シネシティ広場(東京都新宿区歌舞伎町1丁目19番先)
入場:無料
出演アーティスト:
【12/5】nene/アオイエマ。/sae
【12/6】近石涼/aika/Lan
主催:歌舞伎町商店街振興組合
後援:新宿区
協力:株式会社TSTエンタテイメント/MOTCHAN NO HEYA – もっちゃんの部屋 –

text:張江浩司
photo:落合由夏

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