風にも負けず、歌声が響く
音虎とErii
前日よりもさらに暖かい陽気と、ものすごい強風のなかで幕を開けた二日目。神奈川を中心に活動する兄妹デュオ、音虎とEriiがアカペラで「バカだ私は」を歌い出し、二人のハーモニーが青空に向かって伸びていく。「寒い人はハンドクラップで暖まって!」とMCで促すと、だんだん手拍子の音が大きくなり、笑顔が増えていく。
初めてリリースした曲である「君は魔法使い」、バラードの「ふたりの手」とオリジナル曲を次々と披露。部活の大事な試合の前や、受験勉強の合間にこの曲を聴いているというDMがファンから送られてきた「はなまる」では、サビで観客とはなまるポーズを。3月19日に縁ある本厚木で行われるワンマンライブへの意気込みを語り、「僕たちもこの曲に救われた」という「ポールスター」を響かせた。
音虎「すごく新鮮でした。通りがかりの人も多くて、立ち止まって聴いてくれるのも嬉しかったですね。新宿はほかの街に比べても立ち止まってくれる人が多い印象がありますね。みんな穏やかというか」
Erii「たくさんファンの方々が来てくれて、途中で止められない環境で歌えたので楽しかったです」
音虎「音量も普段より大きく出せたのもよかったです」
Erii「広いしビルに囲まれているから、すごく音が響くんですよね」
音虎「今後は、まずワンマンに200人来てもらって満員にすることを目標にしていて、より二人で作った曲をヒットさせていきたいです!」
都識
兵庫県出身のシンガーソングライター都識は、昨年TikTokで話題になった「キミがいない世界」からスタート。歌声につられて(?)大量のハトが頭上を飛び交うというアクシデントに見舞われつつも、力強いハイトーンボイスで丁寧に歌を紡いでいく。
今年1月にリリースされた「キミからのアイをもらったあの日」、3月にリリースが決まっている「にたものどうし」と新曲を披露し、「これからみんなで拡散して盛り上げてほしい」とメッセージを送った。
「路上なんだけどステージの上で歌っているような気分で、とても気持ちよかったです。普段新宿に来ることはあまりないんですけど、すごくポジティブに歌えました。これからもっとヒット曲を作って、ここのZepp Shinjuku(TOKYO)にも出演することを目標に挑戦していこうと思います」
川西奈月
「いつもとちゃう感じやから緊張するわ」とつぶやきながら自然体で登場した川西奈月。「東京といったらこの曲」と、1曲目は椎名林檎「丸の内サディスティック」のカバー。コートのポケットに片手を突っ込みながら少し気怠げに歌う姿が、この曲にハマっている。大勢集まった観客からじゃんけんでリクエストを募り、マルシィ「未来図」などを披露。オリジナル曲のアンケートでは「0.0004%のキセキ」が選ばれた。0.0004%というのは地球上で人と人とが出会う確率。「東京でこんなにたくさんの人に観てもらえることも奇跡」と話し、感慨深そうに歌っていた。
カバー曲をはさみ、続いては最初に自作したという「キミの物語」。作曲に悩んでいたときに、「この気持ちをそのまま曲にすればいいんだ」と気づいたといい、音楽活動の原点になったそうだ。ラストはさとうもか「melt bitter」、あいみょん「ふたりの世界」のカバーで締めくくった。
「お客さんとの距離がいつもと違ってちょっと緊張したんですけど、こんなにたくさんの方々が来てくれると思ってなかったんで楽しかったです。歌ってる最中にお酒の空き缶が風で転がってきて、“めっちゃ歌舞伎町やん”って思わず言っちゃいました(笑)。でも、歌舞伎町は初めて来たんですけど、思ったより普通の街やなって。これからは人が集まりすぎて路上ライブを卒業しなきゃいけないような活動をしていきたいですね。武道館に一人で立てるようになるのが目標です」
Snugs
桑原健次、杉田ゆういちろう、SEIICHI、橋場万寿男からなる4人組ボーカルグループSnugs。Rake「100万回の「I love you」」、FUNKY MONKEY BABYS「ちっぽけな勇気」などをカバーしながら4人の声をパワフルに重ねていく。オリジナルの「私の幸せはあなたの幸せ」、「ピエロタイム」、「チャレンジャー」を立て続けにパフォーマンス。ステップを踏んで軽やかに歌う姿につられ、観客の子どもたちも踊りだしていた。
バラードの「100年のメモリー」をしっかり聴かせると、会場に居合わせたシンガーのTOMIを呼び込んでフューチャリング曲「SUMMER TIME」を披露。冬の新宿にレゲエのリズムがこだまする。「少しでも僕らのことを知ってもらいたくて路上ライブやってます。これからも新宿で見かけたら1曲でも聴いていってください」と語りかけ、「LOVE」で幕を下ろした。
SEIICHI「こうやって公認で路上ライブできることは少ないので、めちゃくちゃ楽しかったです」
橋場「本当にありがたかったですね。気持ちよかった」
桑原「歌に集中できました。いつもは夜に歌っているのでこの季節はすごく寒いんですけど、今日は暖かくて」
杉田「快適すぎていいのかなってくらい(笑)」
桑原「2020年に予定していた全国ツアーがコロナで中止になっちゃって、そこからもがきながら活動してきたんですけど、去年からリスタートすることができて。また気合い入れ直して僕らを知ってもらえるように、これからツアーを頑張っていこうと思ってます」
路上ライブフェスをやってみたい
路上ライブをしているミュージシャンの動画を毎日アップし、前回に引き続いてこのイベントのブッキングにも尽力しているYouTuber「もっちゃん」はさらに大きい夢を語った。
YouTubeチャンネル「MOTCHAN NO HEYA – もっちゃんの部屋 –」
「今回は豪華なラインナップになったのでこんなに多くの人が集まったというのもあると思うんですけど、路上ライブを楽しみにしている人口が増えている手応えもありますね。この場所に限らず、安心して歌える場所が増えていけば、もっとアーティストのみなさんが活動しやすくなっていくだろうと思います。このイベントの成功をふまえて、近隣のライブできそうな場所を1日借り切って路上ライブフェスをやってみたいですね。駆け出しの子から、実力のある子たち含めて、いろいろな才能を集めてみたいです」
イベント情報
日時:2023年2月11日(土)14:00~17:00、12日(日)13:00~16:00
場所:歌舞伎町シネシティ広場(東京都新宿区歌舞伎町1丁目19番先)
入場:無料
出演アーティスト:茉ひる、まるり、伊集院香織、音虎とErii、都織、川西奈月、Snugs
主催:歌舞伎町商店街振興組合
後援:新宿区
協力:一般社団法人歌舞伎町タウン・マネージメント、株式会社TSTエンタテイメント、MOTCHAN NO HEYA – もっちゃんの部屋 –、TikTok
text:張江浩司
photo:落合由夏