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女優・小林涼子が体験。繁華街に佇む創業76年の寄席「新宿末廣亭」の魅力

新宿3丁目

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伝統芸能 落語
DATE : 2023.01.19
落語は近年アニメやドラマ、米津玄師さんのPVなど、メディアで取り上げられる機会が増え、興味を持ちはじめた方も多いのでは? かくいう私も、アニメの影響で落語に興味を持ったひとりです。

せっかくなら実際に目の前で観てみたいけど、寄席となると「年配の方ばかり?」「少し敷居が高い?」など不安に思うこともありますよね。しかし実は今、寄席は若い女性も多いホットなスポットなんです。新宿3丁目の繁華街にある「新宿末廣亭」も例外ではありません。

そこで、私のように興味はあるけど、一歩が踏み出せなかった人のために、もっと気楽に寄席を楽しんでもらえるよう、「新宿末廣亭」での体験を通して、服装や鑑賞マナー、楽しく鑑賞するためのコツなど、寄席ビギナーのための鑑賞レポートをお送りします。

早速、「新宿末廣亭」へ

新宿三丁目駅から徒歩3分の「新宿末廣亭」。

パタパタとカラフルな幟(のぼり)や提灯が目印です。入り口には「番組表」といわれる看板があり、黒と赤の太文字で本日の出演者がズラリ。ナイツさんや、ねづっちさん……あれ? テレビに出ている芸人さんも? と驚きました。

寄席は基本的に15分ごとに演目が変わり、落語だけでなく、漫才やマジックなど、さまざまな娯楽を一度に楽しめます。番組表の黒文字は「落語」。マジックや漫才などは「色物」と呼ばれていて赤い文字で書かれています。

まずは、「木戸銭」と呼ばれる入場料を支払い入場。

大人一般3,000円、学生2,700円、小学生2,200円で、一日中どっぷり落語を楽しむもよし、サッと演目を楽しむのもよし。一度出てしまうと、再入場はできないのでご注意を!

行こう!と思った日が吉日。ふらりと寄れて、一日中楽しめます。

「新宿末廣亭」の寄席は基本的に毎日開催していて、昼夜2部制。昼の部は12:00~16:15、夜の部は16:45~20:30。講演時間中は、誰でもふらりと入場できます。なんと、基本的には映画館のように入れ替えがないので、「一日中笑い倒したい!」なんて方もOK! 特別興行でないかぎり、一度入ってしまえば昼から夜まで通して寄席を楽しむことも可能です。

人気興行がある際は、チケットぴあでの販売もしています。チケットの争奪戦が予想されるので、お目当ての噺家(はなしか)さんがいる場合はぜひ利用してみてください。事前にチケットを入手できなかったとしても11時頃より当日券の入場整理券が配布されます。

ホームページやネットで検索してみると、上席・中席・下席という言葉を発見しますが、これは席の場所ではないので、要注意! 上席は毎月1日~10日、中席は毎月11日~20日、下席は毎月21日~30日と期間のことで、時期によって出演者が変わるので、寄席に行く前にはチェックしてみてくださいね。

日本最古の木造建築の寄席

入り口を通った途端、タイムスリップしたような木の温もりあふれる館内は、創業76年目。

昔江戸では、御座敷に落語家さんを呼んで芸をやってもらっていたことから、「新宿末廣亭」では、「御座敷」をコンセプトにしているのだそう。

高座(こうざ)と呼ばれる舞台上にも床の間があったり、障子があったり……まるで、江戸の御座敷に招かれたような舞台は世界中でここだけ。ここの高座は76年前からそのまんま手を加えていないので、その当時の名人たちの息吹や汗、涙、笑い全てが染み込んでいるのだそう。

後ろの額には「和気満堂」と書いてあり、「和やかな気がホール(お堂)に満ちている」という意味なのだとお聞きして、まさにピッタリの言葉だなぁと感じました。

座席はすべて自由席なので、初心者はズズイと前へ。勇気をだして左右の畳の御座敷へ座れば、噺家さんと目が合うこともあるのだそう。

いざ、鑑賞!

落語家・瀧川鯉斗さん(※取材日の公演とは異なります)

待ちに待った鑑賞タイム。この日は、酒好きな大旦那と若旦那の親子が共に禁酒をしようとするけれど、なかなかうまくいかない「親子酒」という古典落語や、三太、赤鼻と中井さん(サンタ、赤鼻トナカイさん)でアレンジされた季節に合わせた落語、さらに「奇術」と呼ばれるマジックや太神楽(だいかぐら)と呼ばれる曲芸、紙切りなどなど……次々と始まる演目に終始笑いっぱなし! 凝り固まった脳みそがゆるゆると解されます。

中でも太神楽は、今まであまり詳しく知らなかったけれど……すごいんです! 顎にバチを立てて、その上に板と茶碗を組み合わせて積み上げていく「五階茶碗」というバランスの曲芸や、2本の出刃包丁を縦に重ねた上でお皿をくるくる回す「出刃皿」など、終始ヒヤヒヤしながらも「体幹強くない!?」とびっくり。そして、最後は「末広がり」の傘を使いクルクルと升(マス)を回して「ますますのご繁盛を」と締めくくり。曲芸は、今まで観た経験がなくなじみがなかったけれど、こんなに誰でも観やすく楽しい演目だったとは!

気になる館内マナーを聞いてみました!

寄席初心者にとって、館内のマナーは気になりますよね。「新宿末廣亭」広報の林さんのお話しを参考に、よくある疑問をまとめたので、確認してみましょう。

館内マナー①洋服?和服?気になる服装は?

何を着て行けばいいのか、なんだか自信がなくて二の足を踏んでいませんか? ここ、実は私的に結構ハードルでした。歌舞伎座のイメージもあり、日本の伝統芸能なら着物を着ていくべきなのか……と勝手に敷居が高くなっていましたが、本来の寄席は江戸っ子の憩いの場。ドレスコードはありません。デニムでもスニーカーでもOK。自由な服装でリラックスして寄席を楽しみましょう。

館内マナー②飲食はできる?

コロナ禍以前は館内でお弁当なども食べられたのですが、現在の「新宿末廣亭」では、ソフトドリンクにかぎりOK。持ち込みもOKですが、もし途中で喉が乾いてしまったら、館内の売店でも購入可能なので覚えておくと便利です。なお、飲酒はNGなので注意しましょう。

館内マナー③笑っていいの?

※取材時は特別にマスクなしで撮影しています。

意外に悩んでしまうのがリアクション。公演中、面白くて、つい声を出して笑ってしまい、大丈夫かな? とキョロキョロ。でも、心配ご無用! まだまだコロナ禍は鑑賞中のマスク着用をお願いしていますが、リラックスしてたくさん笑っちゃいましょう。

館内マナー④休憩はあるの?

パンフレットやホームページに書いてある「お仲入り」とは、10分程度の休憩のこと。なんで仲入りと呼ぶのだろうと検索をしてみると、「人が大勢入るようにと人偏を付けて”仲入り”とした」のだそう。漢字に込められた願いや温かい想いを感じました。仲入り以外でも退席は可能ですが、なるべく高座の演目と演目の間にするとよいでしょう。

寄席の醍醐味は、ライブ感!

私たち俳優がお芝居で舞台に立つときには、必ず「演目」があり、多少のアドリブはあれど、基本的に毎日同じ演目を演じ、それを目掛けてお客様が来てくれます。

でも、寄席のパンフレットには、演者さんの名前だけで「演目」が書いてありません。同じ「演じること」を職業にしている身としては、とても不思議に思っていました。しかし、お客さんとして寄席の席に座ってみると、なぜ演目が決まっていないか納得。

落語家さんは、ススっと歩いてきて、身一つ。扇子や少ない小道具のみでお芝居をするけれど、実はひとりではなかったのです。

その日のお客さまに合わせて演目を決め、お客様の呼吸や反応と一緒にお芝居をしている……観ているなかで、私達もこの「寄席」の演者の一員でもあるのだなぁと感じる瞬間が多々ありました。

だからこそ、「寄席」は生で! リアルで! 観てほしいし、観る価値があるのです。配信含めさまざまなエンタメコンテンツがあふれる今だからこそ、噺家さん達の熱量あふれるリアルな寄席体験をしてもらいたい、そう思わずにはいられない素敵な時間を過ごしました。用事の合間や仕事帰りに、皆さまもふらりと足を運んでみてはいかがでしょうか。

小林涼子(こばやし りょうこ)

女優。2007年TBS「砂時計」で主演の中高生時代・水瀬杏役を務める。2008年TBS「魔王」ではヒロインの咲田しおり役で出演。そのほか、2016年テレビ朝日「家政夫のミタゾノ」、2020年フジテレビ系「姉ちゃんの恋人」、2021年TBS「婚姻届に判を捺しただけですが」、2022年NHK「正直不動産」、テレビ東京「花嫁未満エスケープ」に出演。映画では「ピンクとグレー」「轢き逃げ 最高の最悪な日」にも出演し、テレビドラマ・映画と女優として幅広い活躍をしている。
2023年にはテレビ東京「花嫁未満エスケープ 完結編」、「ダ・カーポしませんか?」、NHK「ワタシってサバサバしてるから」、映画「わたしの幸せな結婚」が公開予定。
最近ではかねてより農業に関心をもち、株式会社AGRIKOを設立。俳優業と並行して、生まれ育った世田谷にAGRIKO FARMを開園。

 

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文:小林涼子
写真:平安名栄一

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