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5年ぶりにあの熱狂を体感せよ。桐山照史と柄本時生が新たに立ち上げる「ロミオとジュリエット」の世界

歌舞伎町

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劇場 東急歌舞伎町タワー 演劇
DATE : 2025.06.09
2020年初演、シェイクスピアの古典劇「ロミオとジュリエット」を大胆に翻案した“純愛物語”が帰ってくる。作・演出を手掛けるのは、「焼肉ドラゴン」や「パラサイト 半地下の家族」日本版舞台化など、骨太の人間ドラマを手がける鄭義信。世界的に有名な傑作が立ち上がる疾走感あふれる若者たちの情熱を、戦後混乱期をたくましく生きる人々の姿と重ね合わせた力強い舞台は、圧倒的なパワーを放っていた。さらなる進化/深化が予測される2025年版は、大いに心を揺さぶる観劇体験となるだろう。主演を演じる2人に、再演への意気込みを聞いた。

ロミオ役:桐山照史

1989年8月31日生まれ、大阪府出身。A型。STARTO ENTERTAINMENT所属。アイドルグループ・WEST.のメンバー。音楽活動・バラエティのほか演技力にも定評があり、重厚なミュージカルからストレートプレイ、コメディまで自由自在に演じ分けている。持ち前のトーク力を生かしMCなどでも活躍中。

ジュリエット役:柄本時生

1989年10月17日生まれ、東京都出身。O型。ノックアウト所属。父は柄本明、母は角替和枝、兄は柄本佑の芸能一家に生まれ育つ。2003年のデビュー以来、多数の映画やドラマ、舞台に出演。ドラマ「錦糸町パラダイス 渋谷から一本」(2024年)では今井隆文とともにプロデュースを手がけるなど活動は多岐にわたる。

同い年の桐山ロミオ&柄本ジュリエット、運命の出会い

― 2020年の初演は胸が熱くなるような舞台で、震えるようなラストシーンは今でも忘れられません。コロナ禍で完走を断念せざるを得なかったのは本当に残念でしたが、2025年版として帰ってきます。まずは“再演決定”を聞いた時の思いを教えてください。

桐山:「またやりたい」と願っていた作品ですから、シンプルに嬉しかったです。初演のままで再会できるスタッフやキャストと、新たに加わってくださる方たちに感謝ですね。これまで再演から作品に参加することはありましたが、初演キャストとして再演を重ねる経験自体が人生初なんですよ。「観たい」というお客様の声がないと実現できないですから、このことも嬉しいです。ただ、精神的にも体力的にも大変なお芝居だったので、5年経ち、正直「今の俺にあそこまで気持ちを持っていけるかな?」という不安はあります。確か再演の連絡が来て真っ先に、「時生、どうする?」と連絡したよね?

柄本:うん、連絡をもらいましたね。僕も再演の知らせをいただいた瞬間、「あそこまでの熱量の芝居を果たしてもう一度できるんだろうか?」と、桐くんと全く同じことを考えましたから。でも自分の中で、これは大きな挑戦になると思えたんですよね。僕にとって再演ものをやる経験は2度目で、前回は「初演を超えよう、超えよう」と精神をすり減らした記憶があったんです。でも今はあの経験を踏まえ、また新たな方法を模索したいというか、俳優として糧となるやり方を掴めるんじゃないかと思っています。

― ロミオ役の桐山さんとしては、ジュリエット役である柄本さんに真っ先にご連絡したんですね。

桐山:はい、「やっぱりジュリエットは時生じゃないとできない」と思いましたから。

― 当時のお互いの印象はいかがですか?

桐山:これまで同級生の方とお仕事することが実はあまりなかったので、相手役が同い年の役者さんなのが、すごく嬉しかった記憶があります。会うのが久々でも、こうして気さくに接してくれるのもありがたいし。ただ……ガサツなんですわ、この男!(笑) 稽古場にサンダルでわーっと来たと思ったら、「お願いしまーす」ってぺちゃぺちゃぺちゃと入って、素足で稽古をしはじめるんですよ。初めて遭遇する人種すぎて衝撃を受けたし、自分の中に新たな枠を作ってくれたような感覚があります。見ているだけで心臓がザワザワする……(笑)。

柄本:あはははは!

桐山:時生に対する鄭さんの最初のコメントが「踏んだら怖いから、お願いだから靴履いて」やったのが、いまだに忘れられないし(笑)。

柄本:そうだね、そうだった(笑)。裸足だと落ち着くんだもん。逆に桐くんに対しては豪快なイメージを抱いていたけど、ここまで相手の気持ちを汲み取って接してくれる人だとは想像もしていませんでした。最初に一緒に取材を受けた時に、カメラマンから「向かい合って喋ってください」って指示が出たんです。これ、緊張するし照れ臭いじゃないですか。そんな時に「どっちの目から見る?」とか聞いてくれて、さりげなくこちらの気持ちを楽にしてくれる優しさを感じましたね。

桐山:それはほら、俺らいつもグループで活動してるから、メンバーとの間で編み出した技やねん。

柄本:にしても、こんな気遣いができる人なかなかいないですよ。みんなの話もきちんと聞いてくれるし、真剣な対話もちゃんとできるし。僕は桐くんのこうした優しさですごく助かったんです。「女性ってこんな気持ちなんだな」と、自然にジュリエットになっていました(笑)。

初演を超える舞台、新たな気持ちで挑む

― 劇作家・演出家の鄭義信さんによって翻案された今作は、鄭さんのルーツである関西、戦後の港町に舞台を移し、全編関西弁、キャストは全員男性(オールメール)という大胆な演出が施されています。吃音症に悩む奥手で泣き虫のロミオは、かつて愚連隊“モンタギュー”に所属するほどの不良でしたが、更生し屋台で真面目に働いています。王子様のような青年という通常のイメージとは全く違うロミオ像ですね。清純な乙女ではなく、散々ダメ男に貢いできたジュリエットというのも斬新。それぞれ、どのように役作りをしていったのでしょう。

桐山:実は関西弁で喋っていると、どんどん桐山に寄ってきてしまうんですよ。でもそこに鄭さんが吃音という個性を入れてくれたので、全く違う人間、物語の中のロミオになれたような記憶があります。吃音と一言で言っても、その様態は多種多様。本を読んでいろいろと勉強したり、実際の吃音の方からお話を聞かせてもらったりと、試行錯誤しながら考えていった記憶があります。

柄本:ジュリエットはもう、鄭さんの書いた台詞のおかげで全てが出来上がった感覚でした。なんせ、「あたし、ジュリエットです……どっからどう見てもジュリエットやない」という語りかけから始まるオープニングの長台詞から、お客さんが全てを受け止めてくれるような空気が出来上がってしまうんですから。書かれていることに素直に乗って流れに沿っていけば、その気になれるというか。無理に何かを作らなくてもジュリエットになれる。見た目のことはもうプロに任せる以外ないので、これまたメイクさんと衣裳さんに身を委ね……僕が自発的にできることはムダ毛の処理ぐらいでしょうね(笑)。

桐山:それは大事やな。

柄本:少しずつキレイになると、気持ちも化粧もノってくるんだよね、不思議と。

桐山:ノってた、ノってた。(ジュリエットの姉のような存在を演じた)八嶋(智人)さんと時生は、どんどんキレイになっていって、初日と公演終盤ではまるで違う人みたいやった。

― 改めて思う作品の面白さ、再演への期待を教えてください。

桐山:ちょっと昭和レトロな雰囲気を含め、鄭さんが描く世界観が僕は大好きなんですよ。堅苦しいイメージのある古典がリアルな口調に翻案され、グッと親近感のあるものになっていますしね。あと鄭さんはお笑いが大好きなので、隙あらば笑いを入れてこようとするんですよ(笑)。それに対して「それ、いる!?」と大人たちがツッコむ稽古場の雰囲気も最高でしたし、また新たな気持ちで取り組めるのが楽しみです。

柄本:僕は稽古で存分に悩むタイプなので、正解を提示してぐんぐん進む鄭さんのスピーディーな稽古は、最初、戸惑いがありました。でも初日のラストシーンが終わって暗転し、客席からの拍手を聞いた瞬間「あ、この舞台は成功したんだな」と確信して……。あの鳥肌が立つような感覚を手に入れるためには、もう一度またみんなで何かと戦っていかなくちゃいけないんだろうと思うし、ワクワクがいっぱいあるんですよね。さらに深く掘っていける機会があるのはとっても嬉しいことだし、もう一度悩みながら楽しもう! という気持ちです。と同時に、同じことをなぞってしまわないように注意しないと。再演はそういう怖さもありますね。

桐山:わかる。なぞらないのはすごく大事やね。初演から共演している平岡亮とはずっと仲良くて、この間も「初演を脳内でめっちゃ美化してるよね」と喋ったところなんですよ。自分の中でも代表作のひとつだと思っているし、だからこそ初演の面白さの上をいけるように頑張らないと。

関西人と東京人、それぞれの“新宿”

― 最後に、THEATER MILANO-Zaのある歌舞伎町や新宿でお好きな場所や思い出を教えてください。

桐山:もう東京に出てきて15年になるんですが、実は歌舞伎町に行くと怖くて緊張するから、あまり足を踏み入れたことがないんです……。

柄本:桐くんの男らしいキャラから「怖い」「緊張する」ってワードは意外だね(笑)。

桐山:やっぱり独特な街やんな。ドラマ『ごくせん』(2008年)をやってた時に共演してたメンバーでよく遊んでいたんですが、(三浦)春馬が当時沖縄料理にめっちゃハマってて、みんなで食べに行ってビリヤードして……みたいな、学生みたいな思い出もあるけど。夜に映画を観に行った時もドキドキしたし、関西人からしてみると“東京といえば、どーん!歌舞伎町!”みたいなイメージがあるんですよ。

柄本:今回はみんなで飲みに行こうよ。

桐山:お願いします! おのぼりさんみたいにキョロキョロして、急に無言になる可能性あるけど(笑)。時生は東京生まれ、東京育ちやもんな。

柄本:新宿は思い出がいっぱいありますね。おそらく保育園の頃から親父(柄本明)に連れられて、唐(十郎)さんの舞台を花園神社で観て、ゴールデン街に行って。

桐山:おい、すげえな。

柄本:親父の世代の演劇青年はまず形から入ったらしく、寺山修司とかベケットを、新宿の喫茶店で読むのがおしゃれだったらしいよ(笑)。僕も小さな頃からそんな話をいっぱい聞いていたから、中学2年の時、別役実さんの戯曲を持って新宿の喫茶店でおもむろに取り出して読んだりしてました。あれは西口にある「ピース」だったかな。もうなくなっちゃいましたけど、花園のすぐ近くにあった「沙婆裸(サハラ)」も行っていました。

桐山:おい、かっこよすぎるやろ! 俺も公演中、どこかの喫茶店で戯曲を読んでから劇場に入ります(笑)。

Bunkamura Production 2025『泣くロミオと怒るジュリエット2025』

 

【東京公演】
公演日程:2025年7月6日(日)~7月28日(月)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
お問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~18:00)
主催/企画・製作:Bunkamura
チケット料金:S席12, 500円/注釈付きS席12, 500円/A席9,500円(税込・全席指定)
チケット販売:Bunkamura
URL:OFFICIAL SITE  / THEATER MIRANO-Za

 

【大阪公演】
公演日程: 2025年8月2日(土)~8月11日(月・祝)
会場:森ノ宮ピロティホール
主催:ABCテレビ サンライズプロモーション大阪
チケット料金:12,500円 (税込・全席指定・未就学児入場不可)

ヘアメイク:(桐山)井上ゆか/(柄本)稲月聖菜(マービィ)
スタイリスト:(桐山)村田友哉(SMB International.)/(柄本)矢野恵美子
衣装協力:(柄本)Y’s for men
問い合わせ先:ヨウジヤマモト プレスルーム
電話:03-5463-1500

文:川添史子
写真:浦将志

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