昨年夏、大喝采とともに幕を閉じたLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」。極度の人見知りで陰キャな高校生・後藤ひとりが、バンド「結束バンド」のメンバーとなり、ひとりぼっちだった日常が大きく変化していく──音楽を通して出会い、成長する少女たちの姿を時にコミカルに、時に感動的に描く人気漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』(はまじあき作/芳文社・まんがタイムきらら MAXにて連載中)を初めて舞台化した作品だ。
結束バンドのメンバーはオーディションで選出され、まさに“LIVE”な生演奏・生歌唱も話題に。ファンからも続編を熱望する声が絶えなかった今作だが、ついに再演&続編上演が決定!
昨年に引き続き結束バンドのメンバーを演じる4人と、脚本・演出を手がける山崎彬さんにインタビュー。数々の経験を積み上げて、いっそう深まるバンドの絆、音楽への熱い思い。パワーアップし続ける結束バンドに意気込みを訊いた。
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この4人だから動き出す、バンドの物語! LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」インタビュー
一人ひとりの音はバラバラ。でも、4人が揃うと不思議とひとつになる
─ またこのメンバーとお会いすることができてうれしいです! 昨年の経験を経て、成長を感じることや心境の変化はありますか?
守乃まも(以下、守乃):去年より成長したところ……。あっ、追い詰められても逃げないようになりました!
小山内花凛(以下、小山内):うんうん、逃げなかったね(笑)。昨年はゼロからのスタートで、お客さんにもまだ会ったことがないし、「やってやるぞ!」という気持ちが強かったです。結果として、観劇してくださった皆さんからは、素敵な言葉をたくさんいただきました。その分、「昨年を超えたものを見せないと」というプレッシャーも感じています。でもまずは、私自身が『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界を楽しんで、その気持ちをお客様と共有できたらいいなと思っています。
大竹美希(以下、大竹):とにかくがむしゃらだった去年と比べて、気持ち的には少し余裕が出ているかな。とはいえ、新しい挑戦もたくさんあるので、私たちらしく、今年もがんばりたいです!
大森未来衣(以下、大森):前回は、初挑戦だったギターの演奏のことがずっと心配で……。お芝居の稽古中もギターのことを考えてしまうくらい。でも今年はギターに対する不安が減って、お芝居にもより集中できている感じがします。去年よりも、ギターがもっと好きになりました。
─ 役者のみなさんによる生歌唱・生演奏が、この舞台の最大の特色であり魅力のひとつです。音楽面で、自身の変化は感じますか?
大竹:昨年、はじめの頃はバンドで合わせていても不安がいっぱいでした。でも今年は、みんな堂々と弾いています。一人ひとりの出す音が合体して、強いグルーヴを産んでいるように感じていて。このまま、もっともっと音の厚みを出していけたらうれしいですね。
小山内:音楽指導の先生がたにも「バンドとして成長したよね」と褒めていただきました!
大竹:褒めて伸ばしていただいています。先生たちは本当に優しくて……甘やかされているというか、ただただ楽しくやらせていただいて(笑)。それが、私たちに合っているみたいです。
─ 先生方の指導で印象に残っていることはありますか?
小山内:個人的にうれしかったのは、音楽監督の楠瀬拓哉さんに「ベースの音量が大きくなった」と言っていただいたこと。昨年は音の弱さが課題で、今年はベース音の強さ、どっしり感を出すことを目標にしていたんです。
守乃&大森:(ふたりでヒソヒソと相談し合う)
─ 守乃さんと大森さんはいかがですか?(笑)
大森:ギター指導のKO-TAさん(SWANKY DANK)に「ギター上手くなったね」と言っていただきました!
守乃:ええと……私は褒められたこと、あったかな……?
小山内:まも(守乃さん)は、先生との個人レッスンが私たちより少なかったんだよね。
守乃:そうなんです。先生たちとあまり会えなくて、ひとりで練習することが多くて、己との戦いでした。
大竹・小山内:まものことも、先生たちは褒めていたよ!
守乃:えぇ! よかった、私もちゃんと褒められていたみたいです! 自分では全然(演奏に)納得ができていないので、記憶から抜け落ちてしまったのかもしれません……。先生方、本当にありがとうございます。(急に大きい声で)ありがとうございます!
一同:(笑)。
─ 昨年の公演での守乃さんのギターテクニックには目を見張りました。速弾きもとてもかっこよくて。
守乃:いや、全然だめなんです……。自信がなくて。
小山内:本当に、まもはとんでもないフレーズを弾いているんですよ。バンド練習のたびに、「こんなに難しいことをやっているの!?」ってびっくりします。すごく、がんばっていると思います。
守乃:わあ、褒められたあ! いつも精一杯すぎてすみません……。うれしいです。
─ バンドとしてのチームワークも、パワーアップが期待できそうです。そのために心掛けていることはありますか?
大竹:どうだろう?とくに心掛けていることがないのが、良いのかもしれません。それぞれが自由にやっているけれど、不思議と合っている。
山崎彬(以下、山崎):確かにバラバラと言えばバラバラなんですよね。
小山内:そうなんです! バラバラの4人が集まって、なんだかいい感じにまとまる。本当に不思議ですよね。去年よりも顔を合わせる機会が増えたことも大きいのかな? 4人でごはんに行ったり、遊びに行ったり、頻繁にコミュニケーションを取っています。この前は、江ノ島に行きました!
─ 江ノ島は、『ぼっち・ざ・ろっく!』作中でも結束バンドの4人が夏休みに出かけた場所ですね。物語にも登場する「エスカー」は乗りましたか?
4人口々に:乗りました!
小山内:いちおう、「どうする? 階段で行く? エスカーで行く?」という一連のやりとりはしておきました(笑)。
─ 原作では階段を登ってすぐ、喜多ちゃん以外はバテていましたね(笑)。
守乃:それくらいしんどいんですよ、階段は! 気温も暑いし、すぐに「エスカーで行こう」って提案しました。でも帰りは階段しかないので、本当にキツかったです……。
─ チームワークといえば、劇中のライブシーンの変化が非常に印象に残っています。初期のライブではまったく噛み合わなかった4人の演奏が、クライマックスでは堂々としたステージへ進化していく。この差は、どのように表現するのでしょうか。
小山内:演奏面では、ドラムのお美希(大竹さん)がわかりやすく表現してくれたなと。
大竹:ほんのちょっとリズムを走らせてみたり、前後させてみたりですね。でもあまりやりすぎても聴きづらくなってしまうので……どちらかというと、大事なのは「気持ち」かもしれません。
山崎:本当に気持ちの面が大きいと思います。クライマックスでは演奏を合わせるというより、気持ちをひとつにその日のライブを作れたらそれでいいよとは話していて。もちろんプロとしての技術も大事ですが、それよりも失敗を恐れず結束バンドとしての精一杯を出そうと。一方で、序盤のオーディションのシーンやSTARRYライブの一曲目の「ギターと孤独と蒼い惑星」では「合わせよう」という気持ちが先行して、自分たちの心が熱くならない演奏をしてもらうイメージでやってもらってました。
─ 大森さん演じる、喜多ちゃんの緊張感がひしひしと伝わってきたのをよく覚えています。
山崎:あれは本当の緊張だったの? それとも演技?
大森:ふふふ、秘密です!(にっこり)
“舞台ぼっち”は、この4人じゃないとできない
─ 再演と続編が決定したときは、どんな気持ちになりましたか?
大竹:こんなに早くお話をいただけたことに、ただただびっくりしました。またこの4人で集まれたことも、『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界にまた入れることも、すごくうれしかったです。
小山内:またみんなで結束バンドをできることが、私もすごくうれしいです。お知らせを聞いたときは、思わずメンバーのみんなに「決まったね!」って連絡してしまいました。プレッシャーからか、まもは死んだような顔のスタンプを送ってきましたが(笑)。
守乃:昨年の本番を終えてから、しばらく身を隠そうかなと思っていたので……最初はびっくりしてしまいました。でも、このメンバーじゃないとできない舞台なので。(再演・続編が決まって)本当にありがたいです。
大森:私がとくにびっくりしたのは、再演と続編を同時上演すること。「続編が決まりました、再演もします」「えええー!」って。最初に驚きがきたけれど、でも楽しそうだな、とワクワクしました!
─ 再演と続編の同時上演はみなさんも初めての挑戦だそうですね。山崎さんはいかがですか?
山崎:単純に、また4人に会えることがうれしかったです。続編の可能性については以前からお話は出ていたのですが、僕としては「やるなら新たなキャスティングではなく、この4人で」という気持ちがあったので。
再演と続編の同時上演はみんなにとっても未知の世界。2作品をあわせると5時間ほどの舞台になりそうです。なので4人にはがんばってもらうことも多いですが、本番までの稽古でしっかり調整していけたらと思います。
それぞれの想いが詰まった結束バンドの楽曲にも注目!
─ では、結束バンドの楽曲でいちばん好きなのはなんですか?
一同:(「あぁ〜」と悩ましい表情)
小山内:はい!(挙手)。今は「忘れてやらない」が好きです。疾走感のある明るい曲だけれど、もう戻れない青春の切なさを感じるというか。聴いていて泣きたくなるんです。
大竹:ぼっちちゃん(主人公・後藤ひとりの愛称)の歌う「転がる岩、君に朝が降る」がすごく好きです! カバー曲ですが、歌詞がぼっちちゃんに合っていて、とても良いんです。「前に進もう」ともがく姿に、勇気をもらえます。
守乃:私も「転がる岩、君に朝が降る」。ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの原曲もかっこいいんですが、結束バンドのアレンジも、「バンド感」強めですごくかっこいい!
大森:私が好きな曲は「小さな海」です。歌い出しから《あぁ また今日が終わっちゃうのか/何か一つでも 僕を 変えられたかい?》。私もよく、1日の終わりにひとりで反省会をしていて。「自分を変えられたかな」「あの人みたいになりたいな」なんて考えます。そんな気持ちが書かれた歌詞に、すごく共感できるんです。
山崎:うーん、とても迷いましたが……「あのバンド」ですかね。曲としてももちろん好きですが、物語の中での役割がたまらないです。ぼっちちゃんソロからの全員が放つ第一音、そこから歌い出しまでの時間、会場全体の空気がうねるんです。結束バンドがバンドになった瞬間を目撃したなと思ってます。そして曲の中でだんだんと、開放的になっていく4人の表情──今でも、この曲を聴くとあのクライマックスが脳裏に蘇ります。もともと好きな楽曲でしたが、昨年の本番でもとても大切に演出させていただいて、いっそう大切な曲になりました。
みなさんそれぞれに、「聴くと記憶が蘇る音楽」ってあると思うのですが、僕にとって「あのバンド」はそんな存在です。
─ では最後に、公演に向けてみなさんの意気込みをお願いいたします。
小山内:演奏面でも、演技面でも、よりパワーアップしたステージをお届けできたらいいなと思います。ぜひ会場に足を運んで「生」で体験してください。応援よろしくお願いいたします!
大竹:昨年はありがたい言葉をたくさんいただいて、2年目を迎えました。「2023年よりもっといい舞台を」というプレッシャーももちろんありますが、それよりも「自分たちらしいステージを魅せたい」という気持ちが大きくなっています。気負いすぎず、がんばりたいです。
大森:再演も、続編も……(グッとためて)楽しんでもらえるようにがんばります!
守乃:観客のみなさんは、ふだんは仕事や学校で日々がんばっていると思います。そんなみなさんに、いかに「現実」を忘れさせるか。この舞台で非日常感に没入してもらって、絶対に楽しませてやります(今日一番のキリっと力強い表情)!
山崎:昨年の本番を経て、お客さんの反応やライブ感を経験できたことは大きな強みです。確実にクオリティは上がっていると思います。
ですから新作には期待していただきたいですし、昨年は生でご覧いただけなかった方にも、ぜひ劇場であの空間を体感してほしい。楽しんでいただける自信はあります!
とはいえ昨年好評をいただいたことには甘えずに。また、他でもない僕たちが楽しむことを第一にして、この夏を乗り越えたいと思います! ぜひ、みなさんも一緒に楽しみましょう。
LIVE STAGE『ぼっち・ざ・ろっく!』2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭
(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス (C)LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」製作委員会
公演日程:2024年9月7日(土)~2024年9月23日(月・祝)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
お問合せ:アニプレックスカスタマーセンター 03-5211-7555(平日10:00~18:00/土・日・祝日除く)
主催:LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」製作委員会
チケット料金:S 11,000円/A 9,800円(税込・全席指定)※未就学児入場不可
チケット販売:イープラス
文:徳永留依子
撮影:坂本美穂子