そんな『ぼっち・ざ・ろっく!』が、2023年8月に初の舞台化。『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』と題し、THEATER MILANO-Zaで上演される。オーディションで選ばれ、結束バンドのメンバーを演じる4人と、脚本・演出を手がける山崎彬さんに話を聞いた。
稽古場のわきあいあいとしたムード、音楽やバンドへのピュアな熱意はまさに結束バンドそのもの。「音楽雑誌に結束バンドが登場したら?」「スタジオで働く結束バンド」の2つのテーマで撮り下ろしたフォトシュートにも注目してほしい。
漫画・アニメの世界が舞台ならではのかたちで“可視化”されるのを楽しみにしてほしい
― 「THEATER MILANO-Za」でいわゆる“2.5次元作品”を上演するのは初めてです。原作の世界観を守りつつ、演劇ならではの臨場感ある演出が期待されていますが、どのような舞台になるのか山崎さんからヒントをいただけますか?
山崎:結束バンドを中心とした物語ですから、すでに発表されている通り「生演奏・生歌唱」がひとつの見どころになるのは確実です。さらに、ぼっちちゃん(主人公・後藤ひとりの愛称)の脳内妄想やパニック状態といった漫画・アニメならではの表現──それが、舞台でしかできないかたちで目の前に“可視化”されるのは、大きな魅力だと思っています。
― 原作ではぼっちちゃんが突然とろけたり、二頭身になったりしますよね。どんな演出になるのかまったく想像がつきません。
山崎:僕自身「どうやって表現するの!?」と思います(笑)。だからこそ、挑戦できることが楽しみですし、それをTHEATER MILANO-Zaという新しい劇場で、オープニングシリーズの素晴らしいラインアップに続いて目の当たりにできることを、みなさんにも楽しんでもらいたいです。しかも、同じ作品を好きな人たちがひとつの空間に集まって目撃できる。これも演劇ならではの魅力ですよね。
2.5次元作品を作るときにいつも心がけているのは、僕自身が原作を観たときに感じた衝撃だとか、心が動いた感覚を再現すること。すでに物語を知っている方も、『ぼっち・ざ・ろっく!』の魅力を改めて発見できるような、そんな体験をしてもらえたらと思います。
あふれる音楽愛! 結束バンドを演じる4人の音楽歴をひもとく
― 「LIVE STAGE」と銘打たれている今作。山崎さんも言うように、キャストによる生演奏のライブシーンが注目されています。まずは結束バンドを演じるみなさんの自己紹介と、これまでの音楽活動歴を教えてください。
守乃:ギター・後藤ひとり役の守乃まもです。以前はバンドを組んで、ギターボーカルを担当していました。今は解散してしまったのですが……ちいさいハコから、けっこう大きめのところまで、いろいろな場所でライブしましたね。サポートギターで出演することもありました。
大竹:ドラム・伊地知虹夏役の大竹美希です。私は中学1年生からバンドをはじめて、ドラマーとして、自分のバンドとサポートで活動してきました。最近だと、日比谷の野音で演奏させていただくことも。
小山内:ベース・山田リョウ役の小山内花凜です。10代のころ3年間ガールズバンドで活動していて、そのときもベースを担当していました。当時はいろいろなライブハウスに出演させていただきましたね。
大森:ギターボーカル・喜多郁代役の大森未来衣です。これまで歌はやってきたのですが、バンドを組んだことも、人前で演奏したこともなくて。ライブハウスにも行ったことがないんです。なので演奏を披露するのは、今回が初めてです!
― まさに作中の喜多ちゃんと同じ状況なのですね。ちなみに、山崎さんは楽器のご経験は?
山崎:僕ですか!? 僕はギターを通販で買って、家でひとりで練習していたことはあったのですが、当時はYouTubeもなく、近所に楽器ができる友人もいなくて、実際のところギターがどんな音なのかもよくわからないまま終わってしまいました……。あの時代の「ぼっち」は辛いものがありましたね。
ただ所属劇団で、ライブハウスや劇場でバンドありきのお芝居をやったことがあって、そのときは歌や賑やかしで参加しました!
― バンド活動を通してキャラクターが成長していく姿を描く『ぼっち・ざ・ろっく!』。音楽ファンからも熱く支持される本作ですが、みなさんがこれまで影響を受けた音楽は?
大竹:振り返ると、さまざまな音楽を聞いてきましたね。最初は姉の影響でロックから入って、だんだんメタルやメタルコアが好きになって。ツーバスをドコドコ踏むようなマッチョな音楽が好きで、自分でも演奏していました。
私はドラマーということもあって、あまり歌詞を気にしないほうなのですが、「歌詞がいい!」と思ったのは、サンボマスター。サンボマスターも、姉と一緒にフェスで観たのが初めてでした。ものすごい熱気と、それに負けないくらいアツい歌詞で! ずっと印象に残っている光景です。
小山内:今でも毎回ライブに行っているアーティストは、ONE OK ROCK。中学のころから好きで、ロックを聴くようになったきっかけでもあります。
ライブに行くと、それまであったつらいことや悲しいことも全部なくなるくらい楽しくて。背中をおしてくれる存在ですね。
守乃:私は両親と、きょうだいの影響を受けていて。好きな音楽というと、いっぱいあるのでどれを答えようか困ってしまうのですが……。
楽器を始めたきっかけはTHE BLUE HEARTS。中学のころには、神聖かまってちゃんを好きになって、それで私の精神が形成されました。“センター”が飛び抜けて輝いているバンドが好きなんです! ドレスコーズの志磨遼平さんだったり、かつてはThe SALOVERS、今はTHE 2の古舘佑太郎さんだったり。
あと、私が作る音楽はグリーン・デイやオアシス、ビートルズ、邦ロックだとELLEGARDENの影響を受けているみたいです。「ギターのフレーズが“ぽい”ね」と言われることが多くて。好きだから、その要素が出てきちゃうのかな。
大森:私は平野綾さんが大好きなんですけど、好きになったきっかけは2013年のミュージカル『レ・ミゼラブル』でした。平野さんはエポニーヌ役を演じられていて、劇中歌の「オン・マイ・オウン」を歌う姿がすごく心に残っていて。
当時私は小学生だったんですが、今でも鮮明に思い出せます。そんなふうに、ずっと誰かの心に残るような歌を、私も歌いたいです。
― キャストのみなさんの音楽愛がひしひしと伝わってきます。山崎さんはいかがですか。
山崎:仕事柄、音楽はいろいろ聴くし「好きな曲」はたくさんあるのですが……今でもライブに行くし、動向を追ってしまうのは銀杏BOYZですね。
(キャスト一同、うなずきながら「おぉ…!」)
山崎:銀杏BOYZは、お芝居を続けようと思ったきっかけでもあるんです。大学卒業の年に、ボーカルの峯田和伸さんが主演の『アイデン&ティティ』という映画を観て、「僕は就職せずに、バイトをしながらでもいいからお芝居の世界で生きていこう」と決めて。
その後リリースされた最初のアルバムも、今でもずっと聴いています。もはや飽きる、飽きないの次元じゃないんですよね。インタビューやブログを読んで、峯田さんの“生き方”まで含めて音楽として聴いている感覚です。不意に「何してるんだろう?」ってつい気になってしまう人は初めてでしたね。
結束バンドと同じように、私たちの成長を観る人に伝えたい
― 公演に向けて、みなさんの意気込みをお願いします。
大竹:いま、急ピッチでバンド練習や稽古が進んでいます。作中でも主人公のぼっちちゃんは、いきなりバンドに加入したり、バイトを始めたり、猛スピードで変化していきますよね。まさにぼっちちゃんになった気分で、私自身もついていくのに必死ですが、「これを乗り越えたらもうひとつ大きくなれそうだな」って気持ちもあって。
私自身も本番が楽しみですし、みなさんも楽しみにしていてください!
大森:「等身大の私たちが、等身大の結束バンドとして生きている」──演じているとそう感じるんです。そんな私たちが作り上げる世界を、一緒に楽しんでもらえるとうれしいです。
小山内:私はアニメや漫画が普段から大好きで、だからこそ「好きな世界観を壊したくない」と、2.5次元を敬遠していたところがありました。ですが、今回出演するにあたって山崎さんの手がけた『HUNTER×HUNTER』の舞台を観劇させていただいて、そしたらもう「ここまで原作を再現しているんだ! 2.5次元ってこんなに面白いんだ!」って感動して。そのとき私が感じたワクワク感を、お客さんたちにも体感してほしいなと思います。
かつての私みたいに、なかなか2.5次元に踏み出せない人も多いと思うんです。でも、一歩踏み出せばぜったい面白いはずです! 初めての方にも、「来てよかった」と思ってもらいたいですね。
守乃:私自身初めてのことだらけなので、がんばります。そして、『ぼっち・ざ・ろっく!』の物語のなかで、結束バンドのみんなが成長していきますよね。同じように、実際にキャストのみんなも、日々たくさん成長しているんです。
それを観ている人たちにも感じさせたい。みんなで一緒になって成長している感じが、伝わったらいいなと思います。
― 守乃さんは今作で俳優デビューとなりますが、守乃さんだからこそ表現できるぼっちちゃんは、どんなぼっちちゃんだと思いますか?
守乃:ぼっちちゃんと私は、同じタイプの人間だと感じる部分が多くて……。同じすぎて、ぼっちちゃんを演じていても素の自分を見せているようで。自分をさらけ出すのを恥ずかしく感じるときもありますが、毎日「自分をどう解放するか」という気持ちで戦っています。
― キャストとキャラクターのシンクロ感も、楽しみのひとつになりそうですね。
山崎:そうですね。キャラクターのビジュアルを再現したり、お客さんが納得する演奏をしたり……というのも当然大切なことですが、人間がやっている以上、この4人じゃなきゃ、この座組じゃなきゃ出せないものって絶対にあるんです。それをちゃんと届けることがいちばん重要だと、僕は思います。
この4人が偶然集まって始まったことには、絶対に理由がある。そしてまもちゃん(守乃さん)が言ってくれたように、結束バンドの物語とこのメンバーだからこそのドキュメント性が重なって、それをそのまま本番でも出せるように、心がけて稽古しています。
みんなのことを信頼していますし、いい意味で背伸びせず、のびのびとやってもらえれば、ぜったいに面白くなると思っています。
なので、期待してくださって大丈夫です。ぜひ楽しみにしていてください。劇場でみなさんをお待ちしています!
― 新宿で目撃する結束バンドの物語、とてもアツいものになりそうです。楽しみにしています!
THEATER MILANO-Za公式サイトにてその他のエピソードも含めた記事公開中▼
生き生きとしたキャラクターと生演奏に注目!|LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」
『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』
公演日程:2023年8月11日(金・祝)~8月20日(日)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
お問合せ:アニプレックスカスタマーセンター 03-5211-7555(平日10:00~18:00/土・日・祝日除く)
主催:LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」製作委員会
チケット料金:S 11,000円/A 9,800円(税込・全席指定)
チケット販売:イープラス / チケットぴあ
URL:OFFICIAL SITE / THEATER MILANO-Za
文:徳永留依子
撮影:坂本美穂子