この日は東急歌舞伎町タワー内で行われていた「第20回東京国際ミュージック・マーケット」に合わせて、隣接するZepp Shinjuku (TOKYO)の周辺でも路上ライブが行われていた。いろいろな要素を飲み込んで、より一層、路上ライブシーンは盛り上がっていきそうだ。
世界を股にかける路上ライブ
ナタリアダナエ
一日目のトップバッターはメキシコ出身のシンガー、ナタリアダナエ。TikTok、17LIVE での配信を中心に活動し、テレビ東京「THEカラオケ バトル」など多くのカラオケ番組で優勝を果たす。歌手以外にはモデルとしても活動している。メキシコの国旗をマイクスタンドに掲げ、「こんにちは! Hola! Hello!」と三カ国語で挨拶。「2年前にメキシコから日本に来ました。夢は日本でシンガーになることです!」と語り、Ado「ギラギラ」のカバーからライブをスタートさせた。打って変わって明るくダンサブルな広瀬香美「Groovy!」、島谷ひとみ「ANGELUS -アンジェラス-」とメドレー形式で矢継ぎ早に歌っていく。テンションの高いパフォーマンスに引っ張られて、オーディエンスもどんどん盛り上がる。
「盛り上がってますかー!」と短いMCをはさみ、BENI「Darlin’」、Superfly「Beautiful」、そしてセリーヌ・ディオン「TO LOVE YOU MORE」を披露。シネシティ広場を通りがかった海外からの観光客も反応する。続いてはオリジナルソング「Wonderful」。日本で歌手になりたいという長年の思いを込めた曲を高らかに歌い上げた。ボーイズ・タウン・ギャング「Can’t take my eyes off you」、あいみょん「ハート」に続き、ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー「Despacito」をスペイン語で歌う。「この曲はラテン系です。ラテンの人はいますか?」の呼びかけに、少なくない歓声が上がる。遠い日本でも自身のルーツを大切に思う気持ちが歌声にこもっていた。最後は、彼女が日本に来た理由であり、一番好きなシンガーだという宇多田ヒカルの「Automatic」をカバーして締めくくった。
「めちゃくちゃ緊張しましたが、とても素晴らしかったです! みんなのエネルギーも感じたし、うれしそうで、楽しそうでよかったです。歌舞伎町はパリピなイメージがあります(笑)。音楽もいっぱいありますよね。今、私が日本で活動できている事も信じられないですが、もっともっとたくさんの人に私の歌を届けたいです。夢は宇多田ヒカルさんみたいに! 来年は自分のアルバムが出るので、たくさんの人にオリジナル曲を聴いてもらいたいです」
ナタリアダナエ(なたりあだなえ)
メキシコ出身Jpopシンガー。6歳の時にメキシコでアニメを見て、アニメキャラクターよりもテーマソングが好きになる。インターネットを使えるようになり、好きなアニメの歌が日本の歌だと初めて知る。そこからJpopに、そして日本に興味を持ち始める。
Jpopを中心に聞きながらも、幼い頃からアメリカ、ラテン音楽を幅広く聞き、歌うようになっていった。メキシコでは日本大使館主催のイベントで歌うなどしつつも、日本に行くことを夢に持ちながら会社員として働く。そしてついに2021年に念願の日本に住み始め、歌手になるために本格的に活動を開始する。
髙橋一輝
二人目はソロシンガーの髙橋一輝。ボーカルグループ「ANFiNY」のメンバーとして活動し、路上ライブに1000人以上を集め、メジャーデビューも果たす。グループの活動休止に伴って、2022年にソロ活動を始動している。ステージに登場するなり「今日はいつもの感じで路上ライブやらせてもらいます」と宣言。東急歌舞伎町タワーの巨大な屋外ビジョンに映る自分を見て「おお、全国デビューやな」と喜んだり、オーディエンスとコミュニケーションをとったり、ラフでリラックスしたムードを作りながらコブクロ「君という名の翼」をカバー。
「普段は対バンライブもあまりしないから、こういう場所だと緊張するね」と話し、リクエストを募って歌ったのはサザンオールスターズ「TSUNAMI」。「アップテンポとバラードはどっちがいいかな?」と観客の雰囲気を探りながら秦基博「鱗」を披露するなど、まるで友達の家で歌っているかのようだ。菅田将暉「虹」、サスケ「青いベンチ」とカバーし、「ありがたいことにYouTubeで280万回再生された曲があるので、それをやります」と中西保志「最後の雨」を披露した。「あと3曲くらいだから、ゴールに向かっていこう」とNEWS「恋を知らない君へ」、きゃない「バニラ」、WANDS「世界が終わるまでは」を歌い上げた。
「いつもと全然違う雰囲気で、屋外ビジョンを見て集まってくれた人もいたし、すごくいい場所でした。ゴジラもめちゃくちゃいいっすね(笑)。お酒を飲みながら聴いてくれた人もいて、歌舞伎町っぽかったです。普段は南口の方でやってますけど、そっちだと止められることもあるので、こういう場所があるのはすごくいいですね。こうやって地域全体で路上ライブを盛り上げようという動きがあれば、優里さんのような人も出てくるだろうし、僕もそうなれるようにがんばります。12月1日には3回目のワンマンライブもあるので、ぜひ来てください!」
髙橋一輝(たかはしかずき)
1995年、大分県出身。2016年、3ボーカルグループ『J-NUiNE』のメンバーに抜擢されたことを機に上京、音楽活動を開始。路上ライブを活動の軸に、2017年には結成半年で1stワンマンライブを開催し300人超満員となった。2018年、プラチナムプロダクションに所属し、1stシングル「Last Train Home」でCDデビュー。路上ライブ映像がSNSで総再生数1,000万回を突破する。2019年には duo Music EXCHANGEにて700人超満員のワンマンライブを成功させ、デビュー前から続けていた路上ライブの卒業を発表。卒業路上ライブの日には、全国各地から渋谷ストリームに1000人以上を動員した。
2020年、1stミニアルバム「僕らの夢」でVictor Entertainmentからメジャーデビューし、2021年にはマルチに活動の幅を広げ、REVIアンバサダーに就任する。2022年、ANFiNY活動休止に伴いソロ活動を始動させ、6月の1stONEMANLIVEは300名超満員。1stアルバム『YOU&I』をリリースする。
MindaRyn
一日目のラストはタイ出身のアニソンシンガーMindaRyn。父親の影響で日本のアニメに興味をもち、幼少期からアニメソングを歌いはじめ、大学生のころからアニソンカバーを中心にYouTuberとしての活動を開始。現在では登録者数100万人超、総再生数は約1億回にのぼる。LiSA「炎」のカバーで口火を切ると、『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』の主題歌となった「Make Me Feel Better」、『神達に拾われた男』エンディングテーマ「BLUE ROSE knows」、『神達に拾われた男2』オープニングテーマ「Way to go」と、テーマソングに起用された自身の曲を次々と歌う。シネシティ広場の熱量も上昇し、「暑い!」と上着を脱ぐ。しかし、タイは一年中暑いので、これから寒くなる日本の気候が楽しみだそうだ。
『SHY』オープニングテーマ「Shiny Girl」、『ありふれた職業で世界最強 2nd season』オープニングテーマ「Daylight」、『ウルトラマンブレーザー』前期エンディングテーマ「BLACK STAR」、『彼女が公爵邸に行った理由』オープニングテーマ「SURVIVE」と、後半も惜しげもなくオリジナルソングを披露。あらためて日本語と英語で自己紹介し、「日本だけじゃなく、世界中の人にMindaRynのことを知ってもらうきっかけになった曲」と、『転生したらスライムだった件 第2期』オープニングテーマ「Like Flames」を熱唱。「めちゃくちゃ楽しい!」と満面の笑顔を見せた。オーディエンスの名残惜しそうな歓声に包まれながら、最後に『サクガン』エンディングテーマ「Shine」で幕を閉じた。
「ストリートライブも新宿でのライブもはじめてだったので、みなさんに私の曲を届けることができてとても楽しかったです! 初めて私を観てくれる人も多くて、スマイルバックもしてくれてうれしかったですね。歌舞伎町はネバースリープな街で賑やかな場所なので、またライブしたいです。私はアニソンを歌っているのですが、これからは日本だけじゃなく世界中の人たちにアニソンの素晴らしさを伝えていけるようになりたいです!」
MindaRyn(マイダリン)
アニソンを歌うために日本に拠点を移し、活動するタイ出身シンガー。アニソンカバー動画の投稿から始まり、現在(2023年11月)のYouTube登録者数は113万人を超え、動画の総再生数は約1.2億回を数える。
2020年11月、Lantisよりデビュー。『転生したらスライムだった件』、『ありふれた職業で世界最強』、『ウルトラマンブレーザー』などをはじめとする数々の人気アニメ・特撮の主題歌を担当する今注目のアニソンシンガー。TVアニメ『転生したらスライムだった件 第2期』オープニングテーマ第二弾「Like Flames」は、総ストリーミング再生数が現在3,700万回を超え、世界中で知られるきっかけとなった楽曲である。