新・歌舞伎町ガイド

エリア

FOLLOW US:

「理解できないものを許容する場所」DJ MONDOが見てきた歌舞伎町と歌舞伎超祭

歌舞伎町

インタビュー
歌舞伎超祭 音楽
DATE : 2022.10.31
11月3日文化の日に、歌舞伎町シネシティ広場で「歌舞伎超祭」が開催される。昨年11月の第一回(※)に続き、多種多様なパフォーマーが集結し、雑多でエネルギーに満ちた歌舞伎町を象徴するイベントだ。

90年代から歌舞伎町や新宿2丁目のクラブシーンで活躍してきたMONDOの目に、昨年出演した「歌舞伎超祭」はどのように映ったのだろう。話を聞いていくうちに、クラブカルチャーを通して肌で感じてきた歌舞伎町の核心が見えてきた。

(※)第一回

境界線を超えて楽しんでいる笑顔

— 昨年の「歌舞伎超祭」はいかがでしたか?

DJブースに立った時「空が高いな」って思ったの。時期的に客席との距離も離れていたから、どれくらい意識を広げたらみんなに届くかなと考えました。あと印象に残っているのは、お客様の表情。インスタをフォローしてくれている地方在住の方の笑顔を見つけた時は嬉しかったし、偶然通りかかって観てくれている方々も高みの見物という感じではなくて、境界線を超えて自分から巻き込まれに行くような表情をしていたことをよく覚えています。僕だけじゃなくパフォーマーや主催者側が何かしらの覚悟を持って臨んでいたから、それがお客様にも伝わったのかなと思って。「よし、やった!」という手応えがありました。

— コロナ禍でイベントがほとんどなくなって、みんながお祭りに飢えていたタイミングと合致したのかもしれませんね。

祭りって神事ですよね。奉納とか何かを感謝し願うためだけではなく、人々のエネルギーを発散するシステムも備わっていると思うんです。祭りは健やかに日常を続けられることを、コミュニティが健全に保たれることを機能させる。コロナ禍でいつも以上に抑圧されていたし、こういう機会は必要だなぁと「歌舞伎超祭」を通して改めて感じました。

今はもっと音楽に寄り添う楽しさを大切に

40年以上、街の人に親しまれてきた老舗お好み焼き「大阪家」にて。

— MONDOさんがDJを志したきっかけはなんでしょう?

生まれ育った家のリビングルームにあったレコードプレイヤーかな。父がラテンジャズや映画音楽が好きで、母はエルビス・プレスリーが好きで。クラシック全集もありました。そのレコードプレイヤーの前に家族が集まってみんなで音楽を聴いているシーンは、僕の中ですごく幸せな記憶として残っていて。ステレオの前でいつも踊り出したい気持ちでいっぱいになっていました。恥ずかしさと針が飛ばないようにじっとして聴いていたけれど、音楽を誰かと一緒に聴くことの喜びとか楽しさ、高揚感、HAPPYな感じをそこで覚えたのかな。

高校生の時にピーター(池畑慎之介)が出演された『薔薇の葬列』(1969年)という伝説のカルトムービーを観たんですけど、新宿のゲイボーイたちが集まってものすごいゴーゴーダンスのパーティーをする場面があるんです。音楽に合わせて、みんなが自由に踊り狂っているサイケデリックなシーンなんですけど、すごくワクワクして「こんなに自由に思うままに踊っていいんだ!これを再現したい!」と思ったんです。音楽好きの友達を家に呼んで、母のプレスリーをかけて「これかっこよくない?」と言いながら踊ったんです。自分の踊りたい衝動にOKを出してあげた。自分を解放できるシチュエーションを、自分でセッティングしてみたんです。それが僕のルーツかな。

太麺がモッチリ美味しい「焼きそば」を食べるMONDOさん。「歌舞伎超祭」では焼きそばも販売予定です!

— ピュアな初期衝動を感じさせるエピソードですね。

今こんな格好をしてDJしているのも「私を見て!?こんなおかしな人がいるんだから、あなただって自分の衝動に素直になっていいんだよー!」って、自分にOKを出すお手伝いをしている感じです。音楽に寄り添ってハートを開く。そこにあるのは、最高の自己肯定感だと思っています。

ここに来れば誰かがいる

僕がクラブでDJデビューしたのは1996年。新宿2丁目にあった「AUTOMATIX」でした。その後、メインで出ていたのが、歌舞伎町にあったころの「LIQUID ROOM」なんです。毎月第一土曜日に大規模なゲイナイトをやっていて、今は亡くなられてしまったんですけれど、中村直さんというDJの方がメインフロアで回す時には必ず僕をラウンジフロアのDJに指名してくれて。オープンの22:00から朝の5:00までを1人で回していました。

— ひとりで7時間ですか!?

今だとあんまりないですよね(笑)。超ロングプレイ。自分の好きな曲を好きなだけかけられたし、実験的なことや冒険もできてすごく成長させてもらいました。その後に出来た「CODE」もゲイナイトやミックスパーティーをやっていて、楽しむことに貪欲なお洒落で尖った人たちから、クラブ慣れしていない人たちまでいい感じにごちゃごちゃと集まっていて楽しかったですね。細分化されていなかった。

— 電気グルーヴの石野卓球さんも、「歌舞伎町にLIQUID ROOMがあったころは日本のクラブカルチャーの青春期だった」とおっしゃってました。

その青春期を体験できたことは財産なのかな。

— その頃と比べて、歌舞伎町は変化していますか?

建物は新しくなっても集まってきている人達は変わっていない気がします。今も歌舞伎町祭の会場になる広場を見てきたんだけれど「なんでここに人が集まってきてるのかな?」って考えたのね。ここに来れば誰かがいるから安心するんじゃないかな。もしも何かあっても誰かが見つけてくれるっていうか。

— 危険な反面、孤独にさせない懐の深さがあると。

今も撮影で歌舞伎町内を歩いていた時に「かわいいー!」とか、声をかけてくれる人がいましたよね。これが別の街だったら、「無いもの」として私を認識する人の方が多いかもしれない。人って知らないものや理解できないものを恐れるじゃないですか。歌舞伎町は、それを許容する場所なのかもしれないですね。

— 最後に、今年の「歌舞伎超祭」ではどんなメッセージを伝えたいとお考えですか?

メッセージは……、ないです(笑)。観る方に委ねたいので。各々が自由に楽しんでもらえたらと(笑)。

MONDO

自分自身を探求する中で生まれた ”ヒゲ女装” というスタイルで、アーティストのLiveツアーやMVに出演するドラァグクイーン。
DJとしてクラブや各種のレセプションパーティーに出演するほか、“シューティング・ディージェイ”というスタイルで、撮影現場にも音楽のエネルギーを提供している。

「心を開いて音楽によりそった時、僕たちは感じるままに身体を動かしたり声をだして歌って自由だ。その時僕たちは自分を信頼し、自分を許し、自分に感謝することができる。その瞬間のハートの振動は愛だと思う。つまり、僕たちの存在そのものが愛になる。」

歌舞伎超祭2022

日 時:2022年11月3日(木・祝)16:00~20:00 ※雨天決行
内 容:特設ステージ上でのダンスやショーなどのパフォーマンスイベント、歌舞伎町の飲食店によるフード販売
場 所:歌舞伎町シネシティ広場 (東京都新宿区歌舞伎町1丁目19)
入場料:無料
主 催:歌舞伎町商店街振興組合
後 援:新宿区
協 力:歌舞伎町タウン・マネージメント、東急株式会社、株式会社東急レクリエーション、Smappa!Group
イベントプロデューサー:Oi-chan(OIP)

text:張江浩司
photo:佐藤亮

こんな記事もおすすめ