歌舞伎町は、新たな人生経験をさせてくれる場所
— ゆうたろうさんは、やはり原宿・渋谷のイメージが大きいですが、新宿・歌舞伎町にはどんな印象を持っていますか?
実は、数年前まで新宿と渋谷の真ん中あたりに住んでいたので、伊勢丹でよく買い物もしましたし、映画を観に歌舞伎町にも来てました。友達にテルマー湯(歌舞伎町にある温泉&サウナ施設)に誘われて行って以来、ハマってよく行ったり。あとは、ゴールデン街にも行ったことがあります。なので、新宿は僕にとって拠点でありながら、人生経験をさせてくれる不思議な場所、って感覚ですかね。
— 人生経験というと、やはり歌舞伎町は、ちょっと怖い場所というイメージですか?
歌舞伎町は、場所によって違いますよね。映画館やライブハウスのような場所と夜の煌びやかなエリアがあって。全体的に10代のころは入りこむには怖い場所ってイメージでしたけど、20歳を超えて、ちょっと視点を変えてみるといろいろな体験ができるエンターテイメントがたくさんある場所なんだなって感じがします。
ラーメンをほとんど食べたことなかった自分にとって衝撃だった「えびそば一幻」
— ゆうたろうさんの「新宿のヒトサラ」は「えびそば一幻」さん。
はい。どこにしようかものすごく迷ったんですけど、思い出のお店といえば、「一幻」さんしかないなと思って。広島から上京してきてすぐは、ショップ店員として働いていた原宿でしか遊んだことがなかったんです。その頃は、東京にはいろんな料理があるけど、どれもおしゃれにしたがるな~ってイメージだったんです。
— しかも、どれも高いな、って。
そうそう。ドリンク一杯がろ、ろ600円!? って驚いちゃうみたいな(笑)。しかも、ラーメンは太ると思っていたので、ほとんど食べたことがなかったし、新宿のラーメン屋さんはだいたい行列ができているので自分から行こうとは思わなかったんですね。ある時、友達に誘われたので行ってみるかって軽い気持ちで食べてみたら、びっくりするぐらい美味しくて! 今まで思ってたラーメンとはまったく違う印象でした。
— 「えびそば」という名前だけあり、えびの旨味が凝縮されていて。
ほんっとに、すごいですよね。しかも、スープの濃さや麺の細さが自分で選べるっていうのもうれしかったです。
— どのメニューがお気に入りですか?
いちばんベーシックな「えびしお」「細麺」が好きです。スープも「そのまま」「ほどほど」「あじわい」の3段階あって、だんだんこってりしていくんですよね。「しお」「みそ」「しょうゆ」と全部試したんですけど、えびの風味や旨味をしっかり感じられる「しお」が好きでした。今日はどれにしようかなって、いろいろ試すだけでも楽しいし、自分のお気に入りが見つけられる感じがしてうれしかったんですよね。
「えびそば一幻」は、北海道で生まれたえびの旨味がぎゅっと凝縮されたラーメン。スープは、毎日大量の甘えびの頭部を大きな寸胴でコトコト煮込むことで生まれる旨味と奥深さが魅力。独自製法でつくった「えび油」とスープ、背脂を中華鍋で炒めると、コクがあって濃厚な旨味を感じられる「えびスープ」がベースとなるそう。
中央に乗っているのは、ネギと紅生姜にえびの風味を練り込んで揚げたカリカリの天かす。そして、とろーり味玉とこだわりのチャーシュー。最後に、甘えびのあたまを焼いて粉末にした「エビ粉」が風味を際立たせます。
今回取材したのは、ゆうたろうさんイチオシの「えびしお×そのまま×細麺」。初めての人は、まずそのスープの「えび感」に驚くはずだ。口の中いっぱいに広がるえびの旨味と風味。なのに、後味がくどくないので、どんどん食べ進められてしまいます。ネギと天かすをスープに混ぜると細麺にいい感じに絡んでくれる。箸でつかむと黄身がとろーりと出てしまうぐらいとろとろの味付け玉子とチャーシューを挟みながら、するすると、そしてしっかりとエビの旨味を感じながら、あっという間に完食。
お店の方によると、「そのまま」と相性がいいのは細麺。「ほどほど」から「あじわい」になるにつれスープが濃厚になっていくので、しっかりとした太麺で食べると最後まで美味しく味わえるとか。実は、「一幻」に細麺を入れることを助言したのは、あの北海道の大スター・大泉洋さんだという裏話も教えてくれました。
現在は、感染対策でカウンターの席にアクリル板の仕切りが置かれていますので、安心して食べに行ってください。
食生活の管理がなにより大事だと知った体力勝負の俳優という仕事
— さて、ゆうたろうさんは広島時代、洋食屋さんで働いていた経験がありますよね。
そうですね。高校に行かなかったので、働こうと思って求人情報誌を見て片っ端から連絡したんですけど、やっぱり中卒だと雇ってくれるところが全然なくて。そんな流れで連絡した洋食屋さんの社長さんが、すごく豪快な方で、「1時間後に面接に来て!」って言われて、大慌てで行ったら、「じゃ明日から来て」って言ってくれて(笑)。人と接する仕事をしたかったので、すごくうれしかったです。
— どうして、人と接するお仕事を?
とにかく人と話すのが苦手で。でも、それを克服したいと思っていたし、楽しく仕事をしたいと思っていたんです。母より上の世代の方が多い職場だったので、あっという間に打ち解けさせてもらいました。
— 食べ物に携わるお仕事をすることで、何か変化はありましたか?
1階がお肉屋さんで、昼は定食やお弁当。夜は2階がすき焼き屋さんになるところだったんですね。
— それは、もしや高級店なのでは!?
そうなんです。15歳、16歳の食べ盛りだったので、みんなが「とんかつが余った」と言ってくれて、「いいお肉がある」と言っては食べろ食べろと勧められ。しかも、美味しいのでもりもり食べていたら、すぐに太りました(笑)。
— ゆうたろうさんにもりもり食べる印象はなかったです。
“綿菓子ばっかり食べてる”みたいなイメージですよね(笑)。これが案外、洋菓子系はあまり食べないんですよ。ごはんは、もりもり食べる時期とまったく食べない時期があったりしますけど、基本的には食べることは好きなんです。
— 自炊をされたりも?
いやー、やりますというほどはできないですね。カレーが好きなのでパパッと作ったり、うどんを茹でたりぐらい。材料を買ってきて作って、作った後片付け……って考えると、すぐ文明の利器(デリバリー)に頼っちゃいますね。なので、賢く自炊をしてる人はすごいなと思います。作り置きとかできればお安くあがりますもんね。
— 俳優は、映画の撮影、舞台の稽古~本番と、とにかく体力が必要だと思います。食べ物でいちばん気を付けているのは、食べ方ですか?
食べるものは期間によって変えていますね。痩せなきゃいけない役作りのときもあるので。極端なんですよね。食べるのは好きなんで食べて筋トレして落としていくこともあれば、食べないで痩せるということもあって。ただ、食べないと体調をくずしてしまいがちなので、食べ方ではなく、食べるものを選ぼうという意識でいます。揚げ物よりも、野菜やお肉。白米より玄米。コーラではなくお水みたいな。そういうところを変えるようになってきたらだんだん自分で調整できるようになってきたんです。
— 食べる量は変えず、食べる内容を見直した。
そう。昼食べ過ぎたから夜はサラダだけにしよう、とか。1日の食べる量の調整ができるようになりましたね。運動はあまり好きじゃないんですけど、歩くのは好きなので、散歩したり、半身浴したりして体力をつけて。
— それは、調整がうまくいかなかった経験を重ねて学んだ感じですか。
まさに、そうです。半年間ダンスを習ったことがあるんですけど、筋力がなさ過ぎて踊れなくて、まず体力作りから始めて筋肉をつけていくっていう行程を踏みました。食べなかったときは、頭がまわらないっていうのもありましたし、殺陣のシーンで体力がないことで追いつかないとか。エネルギーという意味で、食べることってすごく大事だなと思うようになりました。
— 自分が思うような演技をするためには体力も必要だと感じたってことですよね。
そうですね。ファッションモデルのときは、体型や体力を気にしたことはなかったんです。165㎝で小さくて華奢な方なんで、逆に痩せすぎてることがイヤって思うぐらいでした。モデルは、ショーや撮影、その1日に向けて調整をするんですね。でも、舞台やドラマ、映画の撮影って1ケ月、2ケ月余裕でかかるんで、体調を崩すわけにないはいかないですからね。モデルさんの方が体に気を使ってるように思われるけど、実は舞台に出てる人って、ものすごく意識高いんですよね。体が資本。それはお芝居を始めてからすごく思いました。
— お芝居に向かう姿勢など、どなたかから言われたことなど、心に刻んでいる言葉はあったりしますか?
そういう意味では、母なんです。昔からすごく意識が高いんです。沖縄出身なので、子供の頃から食卓は、野菜が中心で酵素玄米が出てきましたから。昔からコンビニのお弁当を買うことも許してくれなかったし、カップラーメンも食べさせてもらえなかったですね。ひとり暮らしをしていると、つい「まぁ、いいか」って思う部分が増えるんですけど、実家に帰ると、「まぁいいかじゃダメだ。もっとがんばろう」って思えるんです。
役作りには常にゆうたろうという俯瞰の目がある
— 現在公開中の映画『FUNNYBUNNY』で、主人公剣持くんの親友・田所として出演していますが。どんな役ですか?
田所くんは、いじめられっ子です。自分の中では世界観がしっかりあって。何も考えてないようで考えてる。固く見えそうで、すごく柔軟。そういう複雑な部分がすごく多かったです。実は、すごく難しい役どころでした。監督の中に、しっかりとした理想像があったので、いかにそこに近づけるかを考えましたね。田所くんは、とても儚い子だったので、シンプルに観ていて可哀そうだなと思われたらいいなと思って演じました。
— 役作りはいつもどのようにされているんですか?
原作があったら読みます。役が持つ伝えたい部分を理解して、それ以外の部分は“ゆうたろうが演じるなら”というところで考えます。役の持つ核の部分に自分なりの色付けをする感じですね。でも、今回は原作にもほとんど出てこない役だったんです。殴られるシーンがあったんですが、監督からも「本気に見せたいから当ててほしい」って言われたこともあり、リハーサルからかなり本気でやってて。撮影中はずっとあざだらけでしたね。コロナ禍ということもあって、なかなか外に出られなかったので、家でひとりで過ごす時間も多くて、病むんじゃないかと思ったぐらいでした(笑)。でも、それが逆にいい役作りになりましたね。
— 演じている瞬間が楽しいですか、もしくは役を作っていく時間の苦しみも楽しいと感じますか。
あー、そうだなぁ。役作りの過程が楽しいかな。正解がないからこそ、どこまででも突き詰められるというか。どこまでいっても100%じゃないみたいなのは、お芝居でいちばん楽しい部分だと思ってます。役作りで、考えたことをカメラがまわっているところでどれだけナチュラルにできるか、というのが楽しいんだと思います。役作りの間は、常にひとつ思考が増える感覚なんです。ゆうたろうはカレーが食べたいけど、田所くんだったらハンバーグかなって思ってハンバーグを食べたり。
— 最初はゆうたろうさん自身に近い役が多かったのが、どんどん役の幅が広がってきたのは、そういう部分からでしょうか。
役の幅が増えてきたのは、本当にうれしいです。自分の想像の範囲内で演じられていたものが、実生活では絶対に起きないようなことを想像しながら役に挑めるのは楽しいですね。
— ちなみに殴ったり、殴られたりの経験は?
兄弟げんかぐらいですね(笑)。
— 最後に、20歳を超えて視点が変わってきたとおっしゃってましたが、今後歌舞伎町で、こんなことやってみたいなと思うことはありますか?
歌舞伎町のイメージは、やっぱり夜の世界ですよね。煌びやかでちょっと怖い。「ロボットレストラン」にはいつか行きたいと思ってたんですけど、なくなってしまって残念です。(※5/14現在、店舗HPには「臨時休業」と記載されています)。以前、番組でポールダンスを見たことがあるんですけど、そのときに「魅せる」パワーっていうもののすごさを感じたんです。演劇やライブ、新宿にはそういう場所がたくさんあると思うので、生のパフォーマンスをいろいろと体験してみたいです。
映画「FUNNY BUNNY」
出演:中川大志 岡山天音 / 関めぐみ 森田想 レイニ ゆうたろう / 田中俊介 佐野弘樹 山中聡 落合モトキ / 角田晃広 菅原大吉
監督・脚本・編集:飯塚健
映画館&#auスマートパスプレミアム にて同時ロードショー
えびそば一幻 新宿店
住所 :東京都新宿区西新宿7丁目8-2福八ビル1F
電話番号:03-5937-4155
営業時間:11:00~23:00
定休日 :不定休
※自粛期間/緊急事態宣言等で営業を短縮している場合がございます
文:オオバリエ
撮影:今元秀明