新・歌舞伎町ガイド

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【映える写真を撮る方法】フォトグラファー北村渉が切り取る新宿の街

新宿3丁目 歌舞伎町 西新宿

コラム
PHOTO
DATE : 2024.07.31
エリアによって違った風景が見えてくるのが新宿。思わず写真に収めたくなる、そんなフォトジェニックなスポットが点在している。フォトグラファーの北村渉さんの案内のもと、映えるスポットを撮影テクニックと併せてご紹介する。

北村 渉

近畿大学中退後、独学で写真を学び始める。現在は大阪・東京を中心に国内外の企業・ブランドの撮影を中心に活動中。ライフスタイルを軸としたドキュメンタリータッチな撮影を得意としている。

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ストリートスナップやシティスケープは写真を撮る原点

今でこそモデル撮影が仕事の中心になっているが、僕が写真に興味を持つようになった原点は、ストリートスナップやシティスケープだった。見慣れている景色が、カメラというフィルターを通すことでまったく知らない場所のように感じられる。その驚きと面白さが、僕を写真の道に誘った。

大阪出身で数年前に上京したので、東京の街は僕にとって新鮮な場所が多い。なかでも新宿は、度重なる再開発の影響もあって新旧の建物が入り混じるユニークなエリアという印象。たくさんの表情を持ち合わせていて、少し歩くだけでたくさんのシャッターチャンスに巡り会える。今回は「新宿3丁目」と「歌舞伎町」、「西新宿」で撮影してきた写真を紹介したい。

【新宿3丁目】商業施設が立ち並ぶ大通りと簡素な裏路地の対比が面白い

まずは新宿3丁目。商業施設が立ち並ぶこのエリアのなかで特にシンボリックな場所といえば、「伊勢丹 新宿店」だろう。1933年竣工の建物は、アール・デコ様式が特徴。この建物だけを切り取ることで、過去にタイムスリップしたような気分にさせてくれる。

建物を撮る際のポイントは、建物の全体像がわからないように撮ること。写真の外側を想像する物語性を含ませることができる。また、手前に人を配置することで奥行き感も加えている。全体にピントを合わせるのもいいが、装飾など何かフォーカスしたいポイントがあるときは撮りたい対象に絞ってみるのもいい。このときは、1Fの垂直性を強調した外観を目立たせるために、手前の人物をぼかして撮るようにした。

そのまま「伊勢丹 新宿店」の周辺を歩いているなかで目についたのが商業施設間の裏路地。このときは天候が悪かったこともあり、空のグレーと建物の無機質な印象がモノトーンでマッチしていると感じた。写真を撮るうえで、天候はとても重要だ。晴れているのか、曇っているのか、光はあるのか、ないのか。そういう条件が違うだけで、同じ場所でもまったく違う表情の写真になるからだ。

この写真では、なるべく人の気配が感じられないように意識した。広角(※1)気味に撮ることで、建物の迫力も増すようにした。また「止まれ」の文字を中央正面に置いているのもポイント。道路の黒色とのコントラストも相まって、最初に目がいくようになっている。

※編集部注1:写真レンズの写す角度が広いこと

【歌舞伎町】日本随一の歓楽街で、建物や看板を通じて街の歴史を切り取る

次に訪れたのが歌舞伎町。“眠らない街”と呼ばれるだけあり、ネオン看板の数は随一ではないだろうか。昼夜問わず人が入り乱れ、歓楽街としての賑わいに妙な心のざわめきを覚えるのは僕だけでないはずだ。それだけでなく、「東急歌舞伎町タワー」や「TOHOシネマズ新宿」など再開発によって誕生したビルもあり、街の移り変わりをリアルタイムで感じさせる場所でもある。

この歌舞伎町の入り口にある、歌舞伎町一番街のアーチを写真に収める人は多いだろう。当然ながら、どの場所から撮るかで写真の雰囲気は大きく変わるが、このときは歌舞伎町の内から外に向かってレンズを向けてみた。

そうすることで人が自分のほうに向かってくる感じが増して、歌舞伎町の雑踏のなかにいる感覚に浸れる。ピントはアーチを中心に左右にひしめく「歌舞伎町一番街」の看板に合わせるようにした。無数に散らばる看板たちが、この街の活気を象徴しているようだ。望遠レンズ(※2)で撮ると距離感が圧縮され、繁雑さがさらに強調される。

※編集部注2:遠くの被写体を大きく写し、ディテールまではっきりと捉えることができるレンズ

続いて撮影したのが、「東急歌舞伎町タワー」前のシネシティ広場。ここは夜になると賑やかだが、昼は人もまばら。このときはビル間から日の光が綺麗に差し込んでいて、形成された陰影をうまく収めたいと思った。

被写体ではなく背景の明るさを基準に撮ることで、通行人がシルエットのようになっているのがポイント。こうした写真をスマホのカメラで撮る場合、レンズの性質でのっぺりとした印象になってしまう。スマホカメラの「コントラスト」を調整してみると雰囲気のある写真を撮ることができるので、ぜひ試してほしい。

そして、今の歌舞伎町を撮るうえで欠かせないのが、「TOHOシネマズ新宿」のゴジラヘッドだ。世界中でここにしか存在しないこのアイコンは、ゴジラ誕生60周年を記念して造られたもの。地上から約40メートルの位置にあり、映画第1作目のゴジラと同じサイズなのだとか。雄大な姿を写真に収めたいところだ。

このゴジラを上手に撮るためには、少し離れた場所から望遠で撮るのが理想。手前にあるビルの看板をうまく入れ込むことで、対比が生まれてゴジラが新宿の街中を歩いているような迫力感が伝わるようになる。

【西新宿】超高層ビルが林立する街並みは角度によって視点を変える

新宿3丁目とも歌舞伎町とも異なる雰囲気が漂うのが西新宿だ。このエリアは、オフィス街となっており、超高層ビルがひしめく。その圧倒的な存在感を写真でも感じさせることはできないかと考えた。

ビル群の重なり合う雰囲気を伝えるために、奥行きのある構図を選んだ。人が手前に入ることで、ビルの巨大さがさらに引き立つようにもなっている。こうした写真の場合、人をあまり入れ込まないほうがビルの無機質な感じが印象に残る。

高層ビルを撮る場合には、普段と視点を変えて上空を見上げてみるのも面白い。下から上に向かって角度をつけて撮ると、建物をよりダイナミックに表現できる。晴れていると視界が開けるので、ビルが空に向かって伸びているかのような錯覚に陥る。

こうした視点の提案ができるのも写真の魅力だ。今、何を見ているのか。そこから何を思うのか。ビルと空だけというシンプルな構図だからこそ、西新宿という街の特性が際立つ写真になっているのではないだろうか。

また、街全体を俯瞰してみるのも面白い。西新宿から歌舞伎町方面にレンズを向けてみると、先ほど自分がいた場所の違った姿が浮かび上がってきた。賑やかな印象とは対象的な、やや静けさを帯びた雰囲気が漂う。

写真は被写体との距離感がとても大切だ。対象が街となってもそれは同じ。物理的に距離を撮ることで新たなアングルを見つけられる。そうした場所を探してみるのもシティスケープの面白さだと思う。この写真では、縦に伸びる道路を構図に組み込んだ。そうすることで、立体感が生まれる。

そのほかにも、新宿には写真映えするスポットが各所に点在するので、カメラを片手にいろいろ歩き回ってほしい。ただし、車や通行人にはご注意を。写真を撮ることばかりに意識が向いてしまうと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、気をつけながら映えスポットを見つけてみよう。

文・撮影:北村 渉

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