— 今日、歌舞伎町での撮影はいかがでしたか?
歌舞伎町という場所は異文化感があるので、楽しかったです。最近は県外への移動も少なかったり、キャンペーンでどこかに行ってもなかなか出かけたりはできないので、非日常を味わえてよかったです。
— 水野さんは名古屋出身で、BOYS AND MEN(以下、ボイメン)としては名古屋を中心に活動されてますが、歌舞伎町にはどんなイメージがありますか?
僕、ゲームの『龍が如く』がめっちゃ好きで、外伝も含めて全部やってるんですよ。街のモデルが歌舞伎町なので、大学生のときに初めて友達と上京して歌舞伎町を歩いたときは「『龍が如く』の世界だ!」って思いました。
— それ以降は、歌舞伎町に来ることは?
今年1月にリリースした「どえりゃあJUMP!」のプロモーションビデオを撮ったのが、歌舞伎町の「WARP SHINJUKU」だったんです。それと、実はデビューして1〜2年くらいの時期は、よく歌舞伎町の漫画喫茶「マンボー」を利用していて。名古屋から深夜バスで新宿に着いて、スーツケース持って、夜中や明け方は「マンボー」で過ごすのがルーティンでした。
— そんな時代があったんですね。
新宿からだとオーディションを受けに移動するにも便利だったんで、よく使ってましたね。
— オーディションは今も受けていますか?
演技のお仕事でもありますし、バラエティのオーディションも受けたりします。ただ、今回の映画『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』に関しては、抜擢をしてもらいました。以前『癒しのこころみ~自分を好きになる方法』(20年)という篠原哲雄監督の映画に出たとき、スケジュールの都合もあって、当初の予定より短い出演になってしまったんです。挽回したくて集中して演じた中で、それを見ていてくださったプロデューサーがまた声をかけてくださったんですよね。
— 主演を務めた『お終活』は、剛力彩芽さん、橋爪功さん、高畑順子さん、西村まさ彦さんなど、そうそうたる方が出演されてますよね。すでにいろんなところでエピソードを語られてますが、あらためて共演してみていかがでしたか?
本当に皆さんすごかったです。僕の父親役が西村まさ彦さんだったんですよ。西村さんといえば、以前から好きで観ていた『古畑任三郎』シリーズのように、どちらかというとコミカルなイメージがあったんですが、今回は“陽”ではない姿を見せていただきました。貴重な経験をしているなと実感しましたね。
— 今回、「映画をひとりでも多くの人に知ってもらいたい」と水野さん自らすごく動いているのを感じます。
主演って「座長」と言うけれど、この出演者の中で僕が「演技で引っ張っていく」なんておこがましくて言えないし、何で恩返しできるか考えたときに、誰よりも宣伝をやって恩返ししようと思いました。名古屋では、50軒以上の店舗でポスターを貼らせてもらったし、チラシも300部くらい持っていきましたね。車のトランクにポスターとチラシを積んでるんです。声をかけてもらったときに「出演した映画があるんです」と話をして、「観たいです」と言ってもらえたら、すぐに渡せるように。
— 宣伝活動などに関して、自分で提案することもあったんですか?
今、コロナ禍でファンの人たちも情報を欲してると思うので、いいタイミングで情報を出してもらえるといいんじゃないかなと思って、そういうことを伝えさせてもらいました。それと、メンバーが映画の感想をツイートしてくれているんですが、作品の公式アカウントが単にリツイートするだけだと目にとまらないかもしれないな、と。だから、何か一言やりとりすると見ている人にもストーリーを感じてもらえるんじゃないかと思って、そういった提案もしました。
— Twitterをやっていると、公式アカウントのツイートをまず第一に見てる人も多いので、そうした感覚はわかります。これからは、出演して終わりじゃなくて、その後も重要になるでしょうね。
全部の作品でそうできるかどうかはわからないですけどやっていきたいですね。それと同時に、番組に出て映画のPRをするときも、単に決まった言葉で「こんな映画があるので観てください」とは言えないんですよ。めっちゃ観てほしいけれど、無責任に言えないところがある。もどかしいけれど、「今、映画館は大変な状況にあって頑張ってます。ぜひこの映画も観に来てください」というふうに言っています。じゃないと言いづらいので。
— コロナ禍で変化したことというと、特典会やライブなどでファンの方に直接会えない状況もあるかと思います。
会いたいけれど会えないという気持ちはもちろんあります。それにもっとシビアなことを言うと、事務所としても自分としても、ライブや特典会で直接会いにきてもらって、そこで期待を上回るものを見せて、広げていけないと経営は苦しいですよね。大きい事務所じゃないし。それと同時に、今30代で、この時期にどういうことをしたかが40代の生き方にも関わってくると思うんです。だから、すぐにお金にはならなくても、役者として認めてもらうことも大事。どっちもある中でどちらに振っていくのか、時と場合によるけれど、相談してやっていかないとやばいなと。
— ちょっと前のインタビューで、昔は「アイドル」というものに抵抗があったけれど、それが徐々になくなったと言われていました。この変化の理由は、どんなところが大きいんでしょうか。
やっぱりそれなりに苦労したからでしょうね。もともとは「『キャー』って言われるのはどうなの?」と思っていたけど、ボイメンになってすぐのときはそもそもお客さんがいなくて「キャー」って言われることすらなかったんです。もちろん、ウィンクをする相手もいないし。見られないこと、関心を持たれないことがいかにつらいか、よくわかりました。
— 自分の中のその変化を実感したのはどんなタイミングでしたか?
その都度実感はしていましたけど、やっぱり大きなきっかけは、日本ガイシホールで1万人を目の前にしたときです(2015年2月28日開催)。素直にありがたいなって思ったことを覚えています。このライブは、冠番組『ボイメン☆騎士』(中京テレビ)で「1年後に1万人の前でライブします」という目標を立てて、その期間にいろんなチャレンジをしていった上での達成だったので。
— 今でも、自撮りはアップできないとかそういうところはあるんですよね。
根本は変わってないんですよ。昔は媚びていたこともあったけれど、僕の照準が変わってきてるんです。「ボイメンをずっとやっていきたい」と考えたときに、偽りの自分でやっていくと、どこかでパンクしてしまうな、と。そうなると「ずっとボイメンでいたい」という前提から離れていってしまうので、無理することはやめようと思ったんです。
— 確かに、ずっとやっていくために、自分らしくいることって大事ですよね。
もしボイメンの活動期間が決まってるならば、せいいっぱい喜んでもらうために、いろいろするかもしれないですよ。でも、「一生やっていこう」というのが今のところの気持ちなので、じゃあやりたいようにやっていくほうがいいんじゃないかって感じですね。今はどんどん若い人も出てきているし、そこで競争しても違うのかなって。次なるものを見せていかないと。
— それで言うと、「どえりゃあJUMP!」の歌詞で、「若さ」についてのフレーズが出てくるじゃないですか(「あいつみたいに若くもなくて ご・め・ん・ね」/作詞・つんく♂)。あの部分はどうとらえましたか?
そこはつんく♂さんじゃないとわからないところですけど、でもちょっとしたジョークだと思ってます。本気で若いほうがいいのかっていうと――まあそういうこともあるかもしれないけど――ボイメンも半分が30代になって、「もうボーイズおらんやん、オールメンやん」みたいな自虐とか、「若くない」と指摘されても言い返せないので「ウッス」ってなる、みたいな感じなのかなと。
— もともとボイメンは泥臭くやっていくグループだし、同じ曲の中にも「ヨボヨボになっても俺は俺」とありますもんね。この曲、つんく♂さんから歌入れなどの指導はどのようにされたんですか?
つんく♂さんはハワイ在住なので、言葉で「こういうニュアンスで歌ってほしい」とか、ボーカロイドで歌い方を指示してくれたりしました。とにかく、いつもの自分の歌い方ではなく、ピッチを合わせて、独特の歌い方を意識してレコーディングしましたね。自分の歌い方が確立してるメンバーのほうが、難しそうにしていたところは結構あったかな。
— そうだったんですね。ずっと気になっていたんですよ。今年は7月にも新曲「ニューチャレンジャー」がリリースされますが、テレビアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』(テレビ東京系)のオープニング主題歌になっていますね。
ラッキー池田さんに振り付けをしてもらいました。その「Zダンス」を話題にしようと事務所の後輩にも踊ってもらっていて。この曲の裏テーマは、今、夢を持つのが難しくなっている子供たちに夢をもってもらいたいってことなんです。そこが伝わっていけばいいなと思いますし、そして『紅白歌合戦』を目指したいというのが、グループとしての一つの目標です。
— 個人としてはいかがですか?
もっと演技をやっていきたいです。僕、松坂桃李さんの俳優としての在り方を目標にしてるんです。松坂さんは振り幅がすごいですよね。今年公開の映画『いのちの停車場』はヒューマンドラマで、医大を卒業した診療所の運転手を演じているんですけど、その後すぐに公開される『孤狼の血 LEVEL2』では、刑事だけど裏社会を相手に一歩も引かないようなキャラクターを演じてるじゃないですか。そんな俳優になりたいです。
— 以前、ロングインタビューさせてもらったときは、好青年役が多そうでしたけど、徐々に幅が広がってるんじゃないでしょうか?
どっちもできるといいなと思うんですよ。今日の撮影で、金ピカの龍の背景と一緒に撮りましたけど、ああいう感じもできるような幅が(笑)。「俳優を頑張りたい」って言うと、自分だけが売れたいように捉えられることももちろんあると思うんです。だけど、ひとりひとりの仕事を充実させることが、グループのためにも大切なことだと思うし、ボイメンであり続けるためにも、僕個人が役者として成功することはマストだと思っているので、それも実現させないといけないと思いますね。
映画『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』
出演:水野勝 剛力彩芽 松下由樹 / 高畑淳子 / 橋爪功
監督・脚本:香月秀之
5月21日より全国で上映中
(C)2021「お終活」製作委員会
Photo:荒木勇人
Styling:矢羽々さゆり
Hair&Make:手塚裕美
Text:西森路代
Edit:斎藤岬