あらゆる価値観が交差する歌舞伎町に集う次世代の才能たちの、過去・現在・未来に迫るインタビューシリーズ「NEXT UP!」。
記念すべき第一回は、2024年4月にNGT48を卒業し、現在は俳優やダンサー、モデルとして活躍する本間日陽が登場。昨年に続いて、今年もZEROTOKYOのクラブイベント「ZIPANGU the Party!!」に出演した彼女に、キャリアの分岐点に立つ現在とこれまで、そしてこれからの展望を聞いた。
<NEXT UP!的 推しポイント>
- デビュー時から現在まで変わらない開拓者スピリット
- バレエ、英会話、伝統芸能——好奇心で育む独自の感性
- 第二の小林幸子になるために…セルフラブなキャリア形成術

本間日陽(ほんま・ひなた)
俳優・モデル・タレント。1999年生まれ、新潟県村上市出身。
映画鑑賞が好きな両親のもと、芝居や映像表現に親しむ幼少期を過ごす。15歳になり、俳優になることを目指して上京を志すも、両親の反対もあって断念。「今いる環境から飛び出したい」という気持ちを抱えるなかで、48グループが新潟県内にできると知り、NGT48第1期生オーディションに応募。無事合格。2017年には「AKB48 49thシングル 選抜総選挙」で13位にランクイン、NGT48のエースとしてグループを牽引し、2024年4月にグループを卒業。
主な出演作は、新潟4局合同ドラマ「夜明け前の彼女たち」主演、テレビ朝日「Believe-君にかける橋-」、東海テレビ「嗤う淑女」、テレビ東京「ひだまりが聴こえる」、
BSN新潟放送ラジオ「ひなたまつり」レギュラー、CM「キューピーコーワαチャージ」など女優業を中心に幅広く活動中。
—Beginning—
15歳。夢の第一歩として応募したNGT48の第1期生。
─ 2015年にNGT48のメンバーとしてアイドルデビュー。当時15歳の本間さんにとって非常に大きな一歩だったと思いますが、振り返っていかがですか?
48グループといえば、卒業生の前田敦子さんや大島優子さんが当時から俳優として活躍されていました。ひょっとしたら私にもそのチャンスやきっかけが掴めるのかもしれない。そう感じて、勇気を出して挑戦したんです。両親からも、新潟県内なら…と許可してもらえました。
─ 10年前、アイドルとして初めて舞台に立ったときの気持ちを覚えていますか?
ワクワクでいっぱいだったことをよく覚えています。「これから自分の人生が始まるんだ!」という感覚でしたね。その後10年芸能活動を続けてきて、もちろんワクワクだけではなく大変なこと、辛いこともありました。それでも、あの日感じた純粋にキラキラしていた気持ちは、ずっと忘れたくないなと思います。
─ NGT48のメンバーとして活動してきた10年間では、楽しいことだけでなく、たくさんの苦労も経験したかと思います。それらをどのように乗り越えてきましたか?
そうですね。特にNGT48に加入してすぐのころは、思うように注目してもらえずに悩むことが多かったです。まわりは可愛くて個性の強い子ばかり。「この大人数のなかでどう自分らしさを出したらいいんだろう?」とかなり苦しみました。
壁にぶち当たったときは、先輩方からいただいたアドバイスを参考することもありました。けれど、いちばん効果的だったのは、先輩の真似をすること。「こんなアイドルになりたい」と思う人がいたら、その方のことを日々観察してみる。ファンのみなさんとどう接しているのか、どんなふうにお仕事に向き合っているのか、できることから少しずつ参考にしていったんです。

─ ちなみにその真似をした先輩というのは…?
AKB48の渡辺麻友さんや、岡田奈々さんです。改めてお名前を挙げるのはなんだか恥ずかしいですね(笑)。こうして振り返ると、大人数で切磋琢磨しあえて、ファンの方との距離が近い──そんな48グループだからこそ得られたものはとても大きくて、感謝するばかりです。
—Essence—
卒アイドル後の今、追いかけるのは母と「小林幸子」の背中?
─ そんな本間さんが今、目指しているロールモデルはいますか?
最近のロールモデル…難しいですね。あえて言うなら、母です。「こうなりたい」というよりも、自分と似ている部分があまりに多くて。もう、嫌なところまで全部私とそっくりなんですよ(笑)。おそらく人間界でいちばんよく喧嘩している人。でもだからこそ、これまで母が経験してきたことから自分も学ぶことが多いと感じます。母との会話が自分の成長につながっていると感じますし、それがお芝居にも生きてくると思っています。もともと、私がお芝居に興味を持ったきっかけも母の影響が大きいんです。
母には日頃から、感謝を言葉にしなさいと繰り返し言われています。思っているだけでは気持ちは通じないから、逐一言葉に出して相手に伝えることが大事。私自身も強く実感していることです。

─ 2025年8月22日には、歌舞伎町・ZEROTOKYOのクラブイベント「ZIPANGU the Party!!」に二度目の出演を果たされました。伝統芸能や歌謡曲とEDMが融合するこのイベントで、本間さんはヘッドライナーである小林幸子さんと共演していますね。

昨年同様、幸子さんが「サクラガミ」を歌うなかで、石見神楽の全長約17mの大蛇とともに踊りました。初めてこの演目に参加した時は、「クラブで神楽を舞う」ってどういうこと!?と(笑)。未知との遭遇に心がおどったことを覚えています。これまでクラブイベントにはまったく縁がなかったこともあって新鮮な経験でした。さまざまな文化がひとつのステージに集まって、新しい世界を作る。その一部になれたことを、しみじみうれしく思います。

とはいえ、昨年の出演はアイドルを卒業してから初めてのダンスパフォーマンスだったんですよ。振り入れの次の日はもう歩けないくらいの筋肉痛に襲われたり…。実は緊張のせいか、本番では頭が真っ白になってしまって。でもちゃんと身体が覚えていて、最後まで踊り切りました!
─ 小林幸子さんは同郷のスターでもありますよね。
幸子さんとはアイドル時代からご縁があって。メジャーデビューイベントに駆けつけてくださったり、幸子さんが復興支援で続けていらっしゃる「幸子米」の収穫のお手伝いをさせていただいたり。そんな幸子さんと、今度はなんとクラブで!特別なパフォーマンスをご一緒できることにとても感動しました。
芸能活動を始めてからずっと…いや、始める前からもずっとですね。小林幸子という新潟の大スターを見てきたので。今、こうして幸子さんの背中を間近で見られているのが本当にうれしいです。

─ アイドルを卒業されてから1年以上が経ちましたが、本間さんの近況について教えてください。まずは、最近はプライベートはどんなふうに過ごすことが多いですか?
今年に入ってから習い事を3つ増やしまして。今はクラシックバレエとピラティス、英会話をやっています。
─ 大忙しですね。ゆっくり寝たいとかは思いませんか?
これまでは寝たい派だったのですが…(笑)。アイドルを卒業して自分ひとりで仕事をしていくにあたって、今は新しい知識を吸収したいタイミングなのかもしれません。英会話を習い始めたからには使わなきゃ!と思っているので、来年は英語圏を旅してみたいですね。
—Future—
「好き」を増やして模索する、NEXTキャリア
─ お話を聞いていると、普段のお仕事も習い事も、好奇心を原動力に向き合ってらっしゃるのかな、という印象を持ちました。
そうですね。でも少し前までは、自分の中にある悲しみだったり、過去の傷だったりが表現の原動力だったかもしれません。けれど今年に入ったあたりから、これでは瞬発的なパワーしか生み出せないことに気づいて。それだとこの先もたないなと。
なので、これからは新しいことに挑戦して、自分の「好き」を広げていきたい。プライベートでも知識を増やしたり、初めての場所に行ったり、そんな経験を積み重ねるようにしています。
─ アイドルグループを卒業して、心境の変化もあったのでしょうか。
卒業してから1年で、お仕事に対するマインドが変わったのは、自分でも感じています。NGT48時代は本当に、血も涙も汗も全部注ぎ込んで全力!という感じでしたね(笑)。アイドルの私は「ファンのみなさんを喜ばせたい」が大前提だったけれど、今は、長くお仕事を続けるために「自分が幸せでいること」に重きを置けるようになってきた気がします。
─ お仕事で新たに挑戦してみたいジャンルはありますか。
「ZIPANGU the Party!!」で幸子さんがDJをされているのを見て、興味が沸いています。すごく面白そうで。DJって何から始めたらいいんでしょう?というレベルなのですが(笑)。どんな音楽をかけたいかというと…前回の出演時に、スタンバイ中にm-floさんの楽曲が流れていて、私までノリノリになったのが印象に残っています。私もあんなふうにフロアを沸かしたいです!
─ いいですね。DJ・本間日陽誕生に期待です! では最後に、今後の目標について。将来はどんな人になりたいですか?
ずっと大好きなお芝居を、もっと極めたいのが第一の目標です。長く芸能活動を続けられたらと考えているので、ゆくゆくは…「第二の小林幸子」と呼ばれるような存在になりたい! 地元・新潟の人たちにパワーを与えられるような、そして新潟県の魅力を全国に広められるような、そんな存在を目指したいです。

アイドルグループを飛び出し、ひとりの表現者として歩みを進める本間日陽。新しい世界へ踏み出す「ワクワク」を語る彼女のまなざしは、とても真摯だ。今年2025年11月には、石見神楽の本場・島根での“サクラガミ”公演が決定。「自分が想像していた以上に、神楽の道に足を踏み入れることになりました。みなさんの力を借りながら、楽しんで取り組みたいです」。「その先」を目指す眼差しは、きっと10年前ステージに立ったその日と変わらぬまま。本間日陽の新しい世界に、期待を膨らませたい。
文:徳永留依子
写真:山口こすも