今回のイベントのオーガナイザーをつとめるのも、現役ホストのRYOTAさん。昨今、さまざまなかたちで話題になる“歌舞伎町のホスト”が手がけるクラブイベントとは、一体どんなものになるのだろうか。RYOTAさんに話を聞いた。
バックグラウンド関係なくミックスされた、楽しい空間にしたい
RYOTAさんは、「風早涼太」の名前で歌舞伎町「APiTS」に勤務する現役ホスト。すらりとした高身長に色鮮やかなニットがお似合いだ。「僕、カラフルな服は普段着ないんですけど……『THE FOUR-EYED』の藤田さんに勧められて買いました」とはにかむRYOTAさん。
一見、ホストというよりもファッションモデルのような印象も受ける。
イベントオーガナイズに携わるのは今回が初めてとのこと。きっかけはなんだったのだろうか。
「シンプルに、やってみたかったんです。ホストの仕事も好きですが、それ一本だけじゃなく他の世界の人とも繋がっていきたいと思っていて。そんなタイミングで(Smappa!Group会長の)手塚マキさんが声をかけてくれました」(RYOTAさん)
これまで歌舞伎町にあまり接点がなかった人にも、イベントをきっかけに興味をもってほしいと意気込む。7年前にホストを始めたきっかけも「やりたいと思った、それだけですね」と笑うが、実はRYOTAさん、もともとは人見知りだったそう。ホストになりたての頃は、初対面のお客さんとは緊張して話ができないこともあったほど。
「今では、お仕事のときにはスイッチが入るようになりましたが、とにかく場数を踏むことでコミュニケーション能力は鍛えられたのかな、と思っています(笑)。それは今回のイベントでも生かせるといいですよね。いろんな人と交流できたらうれしいです。ふだん歌舞伎町に来ない人も来てほしいし、僕のホスト友達も来てほしい。バックグラウンド関係なくミックスされた空間──みんなが楽しめる、ピースフルな場所にできたら。今回は第一回なので、自分のルーツでもある“ホストらしさ”も出していきたいと思っていて、シャンパンタワーの演出を考えています。『ホストらしさってなんだろう?』と考えたとき、やっぱりシャンパンタワーがいちばんわかりやすいかなって」(RYOTAさん)
一方で、あくまで“音楽/クラブ好き”にもしっかりと刺さるイベントを目指している点からは、「Smappa!Night」の本気度の高さが伝わってくる。Dr.Shingo、KATIMI AI、ダイキハヤシといった、歌舞伎町内外の実力派DJが集結。最上級の音質を誇る「ZEROTOKYO」とあって、クラブファンにとっても非常に贅沢な一夜になることは間違いない。
3つのフロアでは、テクノからハウス、そしてJ-POPまで、幅広いジャンルの音楽がプレイされる。まさに歌舞伎町を体現するような、雑多でカオス、それでいて生命力あふれる空間になりそうだ。
単に“ホストが開催するイベント”ということではなく、“クラブイベント”としての質も追求する姿勢には、シーンへのリスペクトを感じる。そのうえで、クラブ初心者も気楽に、自由に楽しめるプログラムも用意。Smappa!Groupが経営するダイニングバー「麦ノ音」のブースも設けるなど、ホストだけではないグループらしさもさりげなく取り入れているのもおもしろい。「バックグラウンド関係なくミックスされた楽しい空間」を目指すべく、非常に裾野の広いイベントになることだろう。
今こそ、現役ホストがクラブイベントをオーガナイズする理由
さて、ホストの世界は時にはネガティブな視線に晒されることも少なくない。2023年は特に話題になることも多かったが、業界も大きな変化を迎えている。RYOTAさんもその空気を肌で感じているそうだ。
「これまでは月にどれだけ売り上げて、ナンバー上位にランクインして……そういった数字だけで目立てたと思います。僕としても、明確に順位が出ることがこの仕事のやりがいのひとつだと感じていますが、それだけがホストの価値ではなくなってきている気がします。
『自分がどういう人間か』ということを、発信できる人がこれから強くなっていくのかなと。僕もまずは『この人はホストだけど、クラブイベントもやるんだ。何者なんだろう!?』と思ってもらうところから。ホストをやっていると毎日違う人と会って話して、同じ日はまったくありません。やっぱり僕は対面で会って話をするのが好き。イベントを始めることで、また新しい世界と出会えるのが楽しみです」(RYOTAさん)
昨今ではSNSで自己ブランディングを目指す流れが色濃いが、“どんな人間であるか”をいちばんダイレクトに、純度高く伝えるためには、対面のコミュニケーションに勝るものはないだろう。
日々それを生業にしているホストにとっては、“人と人が出会う場”としてのイベントをつくることは、新しい命題とも言えるのかもしれない。
取材時、同席してくれたSmappa!Group会長・手塚マキさんも「ホストだからといって店のなかにとどまっている必要はないと思うんです。お店で女の子を楽しませるだけじゃない、もっと気楽に関われる、ひらかれた存在のホストがいてもいい。僕らだって、『歌舞伎町のホストは健全でクリーンだ』と言い切ることはできない。でも、ホストもこの街の一部ですから」と言う。
“歓楽街のアイコン”のイメージを飛び出し、一人ひとり違う顔を持つ“街の住民”として、自ら新しいつながりをつくっていく──ひいては、コミニュティどうしをつなぐハブになるような、これまでにないホストのかたちが動き出そうとしている。
第一回以降も、「Smappa!Night」は定期的に開催する予定とのこと。さまざまな世界線の交差点になりそうなこのイベント、回を重ねるごとにどう変化していくかも楽しみにしたい。
Smappa!Night hosted by RYOTA KAZEHAYA
開催日:2023年12月17日(日)
開催時間:23:00〜翌4:30
会場:ZEROTOKYO(東急歌舞伎町タワー内)
当日券料金:2,000円/1D
OFFICIAL SITE
文:徳永留依子
写真:玉井俊行