「リハーサルから100%の力を出さないと、100点は取れない」「後悔はネガティブ、反省はポジティブ」など、我々の生活にも直結する“GO語録”満載のインタビューをどうぞ!
50年やってきたからこその持論
― 2022年の50周年イヤーは2つのツアーをまわり、その最後は50曲を駆け抜ける武道館公演でした。さらに2023年に入って41本の最新ツアー「Hiromi Go Concert Tour 2023 NEW INTENTIONS」を終えたばかりと。しかも「NEW INTENTIONS」(新しい目的)はそのタイトルからもわかるとおり、かなり新しいチャレンジに満ちた内容でしたよね。
そうですね。どのツアーもそうなんですけど、良いものができるということは間違いなくわかってるんですよ。だけど、結局は蓋を開けてみないとわからないというのが正直なところ。時間をかけてスタッフのみんなと打ち合わせを重ねて、それをギリギリまでやるわけじゃないですか。だから100点を取る自信はあるんです。でもそれが120点にできるのか、150点、200点にできるのかっていう部分はどうしても未知数なんです。
僕の持論に、「リハーサルから100%の力を出さないと、100点は取れない」というものがあるんです。だから70%、80%でリハーサルをやったら、どんなに良くても70点、80点なんです。リハーサルは抑えて本番にとっておくっていうのは錯覚だと、僕は思ってるんです。要するに、全力でやった人間にしか、それ以上の力は出せないんですよ。
― それは逆にいえば、100点を取れなかった苦い経験があるということですか?
そうなんでしょうね。たくさんの失敗の中から学ぶ――そりゃそうですよね。人間は失敗からしか学べない生き物ですから。本番が終わって、「今日良かったよー!」っておいしいものを食べて、お酒を飲んで終わる。そうすると何もないじゃないですか。「何が」良かったのだろうか? なんて考えない(笑)。失敗はわかりやすくて、「何を失敗したのか」を見ようとするので。
でもそこで、こんなことしなければよかったなっていうネガティブなふうには思わないんです。反省はするんですよ。反省は僕にとっては非常にポジティブなものなんです。「やらなきゃよかった」じゃなくて、やったことの現実を見つめる。失敗したのは、ここか。じゃあこの部分のエッセンスを抽出して引き出しにしまっておこう。そうすれば、次に同じようなシチュエーションに遭遇しても、すぐにその引き出しから経験なり解決策なりを取り出せる。
それを見ようとしなかったりすると――つまりゴミ箱に捨ててしまったら、もう何も残っていないわけですよね。
― ショーに対するハードル、合格点はどんどん上がっていっているのですか?
上がっていっていますね。自分で上げてるんでしょうね。前回よりもいいものを、と常に思っていますから。だから“新しいチャレンジ”というのは「自分に出来そうなもの」ではなくて、「できるかどうかわからないもの」なんですよね。
ただし、ジャンプしても明らかに届かないところは目指さないですよ。それは僕からすると無駄なんです。ジャンプしてギリギリ届きそうなところを超えていくのが、自分の中のハードルを超えていくということなんですよね。常にそういうふうにやってきた……って、昭和っぽいですか?(笑)
― いえいえ、決してそうは思いません!
もしかしたらそういう常に上を見続けるようなやり方は、今の人には合っていないかもしれない。けれど僕にはそれが合っている、ということですね。
「誰も観たことがない、聴いたことがないステージになると思います」
― 2023年12月8日(金)から8日間、10公演、THEATER MILANO-Zaで「HIROMI GO SPECIAL SHOW 2023 THEATER HIROMI-Za “Majestic Voyage”」が行われます。こちらはどんなショーになりますか?
バラードが多めの選曲にはなるのかな。
少し話が変わりますが、コンサートにおいて、いわゆる僕の代表曲があるじゃないですか。『2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-』『お嫁サンバ』とか。それはもう僕の曲ではなく今やみんなの曲という気持ちがあるんですよね。だからそういう曲を歌わないっていうのは、もはや僕のエゴでしかない気がします。
ただし、コンサートにおいてですよ……。今回のTHEATER MILANO-Zaはどうかな……。
― その中で、例えばジャズアレンジにしたり、ロックテイストにしたりという音楽的なアプローチの変化も重要になってくるわけですね。
そうですね。手を替え品を替えというかね(笑)。その時々のツアーやショーのコンセプトに合わせて、今回はこういうアレンジがいいんじゃないかっていうふうにブラッシュアップしていくことは大事にしています。
それは郷ひろみという存在自体にもいえることなんですよ。ショーを通していろいろな見え方をしないと、飽きられてしまいますよね。それに、自分で自分のやってることに飽きるのが一番ダメなんです。
もしかしたらそうやっていろいろな見え方を追求していくことはエゴと捉えられるかもしれないけど、自分が飽きないでやるっていうことは、実はショーにとっての真実。本音で表現しているということなんですよね。
裏返していえば、自分が本当に楽しんでいないのに、「楽しんでますよ、最高!」っていうのは嘘になります。やっぱり出発点は自分が心から楽しめるショーを作ることで、それがお客さんに伝わるんです。だからそれはエゴじゃないって僕は思っています。
― やっている方と観ている方がフィフティ/フィフティであることっていうのが大事なんですね。
そう、関係性ですよね。まずは表現する側が、受け手の人たちのことをきちんと考えているかということなんですよね。表現なので、そこの匙(さじ)加減は難しいといえば難しいんですけど。
― これまでツアーとディナーショーという大きな2本柱がありましたが、“Majestic Voyage”はそこにまた別軸のショーができるということなんでしょうか?
その通りですね。一箇所でつまり常設のステージで10公演やるっていうのは、初めてです。
― そうなんですね。これだけ長くステージをやって来られている郷さんにとっても。
ええ。記憶にないんですよね。常設のステージでのショー、ということもありますし、今回は多くのパフォーマーの方達とご一緒しますから、今から本当に楽しみですね。
― 少し遡るのですが、2019年に東京文化会館で「Hiromi Go Special Concert2019″ALL MY LIFE”」という一夜限りのショーを行いました。そのときも華道家の方やコンテンポラリーダンサーの方などとコラボレーションという形のステージを展開しました。今回はそこでのご経験がヒントになっている部分というのはありますか?
もちろん共通点というのはどこかにはあるんですけど、そこからかなり時間も経っていますからね。その間にいくつものステージもやってきていますから、かなり進化しているものをお見せできるはずだと確信しています。あれの何倍もすごいですよ。誰も観たことがない、聴いたことがないステージになると思います。
― 具体的にはどのような方達が参加されるのでしょうか?
いつものバンドメンバーが6人くらいいて、そこにパーカッショニストの丹菊正和さんが加わってくれます。さらにMuTiAという女性ソリスト集団から8名が参加してくれます。これが、素晴らしいんですよ。それ以外にも、ダンサーの方が3名、アクロバットダンス・カンパニーのG-Rocketsから2名のパフォーマーが、それとエアリアルのパフォーマーなど、とにかくいろいろと考えています。
― キャパは900席で、客席との距離も非常に近いですよね。そうした中で、多種多様な出演者の皆さんとともにどのようなステージになるのか、今の段階でのイメージをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
2022年に50周年を迎えて、新たな船出ということで2023年のツアーに入って、基本は新たな航海の旅を続けるという大きなコンセプトに則って活動をしているんですけど、その中で港に立ち寄ることもあるだろうと。その部分を今回のTHEATER MILANO-Za のショーで見せていけたらいいなと思っています。
― なるほど。異国感といいますか、そういう意味でもいろんなパフォーマンスが感じられるものになると。タイトルの“Majestic Voyage”というのはそういうことなんですね。
そうですね。点ではなく、航海という線の中で新たなショーの世界を見せていく、ということにチャレンジしたかったんですよね。(2023年10月に)今はまさにこのショーに全力で向かっている最中です。必ず素晴らしいものになります。
新宿での公演には「不思議な縁も感じています」
― 今回はTHATER MILANO-Zaのオープニングシリーズということですが、郷さん自身、新宿には何か思い出はありますか?
昔、「新宿ニューアシベ」(※)っていうホールがあったんですよ。実は、そこが僕の初めてのステージなんです。
※編集部注:1968年に現在の「新宿アシベ会館」の5・6階に「音楽劇場 新宿ニューアシベ」として開店。全国的に有名なライブハウスとして知られ、常にステージには最先端のアーティストが立っていた。現在も「新宿ACB HALL(アシベホール)」 という名で変わらず新宿の音楽カルチャーを支えている。
― そうなんですか! それは何年のことですか?
1971年でした。レコードデビューがその翌年の1972年8月でしたから、そう考えたら、デビューより前にすでに郷ひろみとしてステージに立っていたんですよね。
もう場所もどこにあったのか全然憶えていないですね……。だってそのとき、僕は15歳くらいでしたから。
― 単独のステージだったんですか?
いや、単独じゃなかったです。何人か出演者がいて、1、2曲歌ったっていうようなことだったと思うんですけど。その当時からすると新宿も大きく変わりましたよね。そして東急歌舞伎町タワーができて、その中にこんなに素晴らしい劇場があるなんてね。そのTHEATER MILANO-Za のオープニングシリーズのお話をいただけるなんて光栄ですよ。それがまた新宿ということで、不思議な縁も感じています。
THEATER MILANO-Za公式サイトでは初日ライブレポートを公開中▼
郷ひろみ
1972年、NHK大河ドラマ「新・平家物語」で芸能界デビュー。同年8月シングル「男の子 女の子」で歌手デビュー。
「お嫁サンバ」「よろしく哀愁」「言えないよ」「GOLDFINGER’99」など数々のヒット曲を送り出している、日本を代表するポップスシンガー。
HIROMI GO SPECIAL SHOW 2023「THEATER HIROMI-Za “Majestic Voyage“」
開催日:2023年12月8日(金)〜12月17日(日) ※11日(月)と14日(木)は休演
会場:THEATER MILANO-Za
URL:OFFICIAL SITE / THEATER MILANO-Za
お問合せ:ライブエグザム
[チケット情報]
ロイヤルVIP(1F前方)44,000円/特典付き
ロイヤル(1F指定)25,000円
スタンダードプレミアム(2F指定)22,000円
スタンダード(3F指定)15,000円
※全席指定・税込
※いずれの席種にもドリンク付
[販売URL]
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※先着順での受付となり、予定枚数に達し次第受付終了となりますので予めご了承ください
文:谷岡正浩
写真:小境勝巳