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アングラ演劇の聖地・新宿で、“まっさら”な咲妃みゆが挑む。舞台『少女都市からの呼び声』

歌舞伎町

インタビュー
東急歌舞伎町タワー 演劇
DATE : 2023.06.21
「THEATER MILANO-Za」オープニングシリーズ第3弾として7月より『少女都市からの呼び声』が上演される。劇作家・唐十郎氏が紡いだリリカルな世界がアンダーグラウンド演劇を発信し続けてきた金守珍氏(新宿梁山泊)の演出・新劇場の舞台にて新たな命がどう吹き込まれるのか。本作がストレートプレイ(会話劇)初出演となる咲妃みゆさんに、共演の安田章大さん(関ジャニ∞)の印象や、自身が担う“雪子”役への思い、新たな挑戦への意気込みなどを語ってもらった。

「アングラ演劇」は複雑なこの世界そのもの

― 宝塚歌劇団在籍時から“歌姫”として活躍し、退団後もミュージカルや音楽劇への出演が続いた咲妃さんにとって、『少女都市からの呼び声』は初のストレートプレイになりますね。

歌劇団を退団後、ストレートプレイへの出演をずっと願っていましたから、お話をいただいたときはとても嬉しかったです!

― しかも初ストレートプレイ作品出演がアングラ演劇の巨匠・唐十郎さんの戯曲で、新宿を拠点に活躍する金守珍さんの演出、凄い挑戦だと思います。咲妃さんはアングラ演劇に対してどんなイメージをお持ちでしょう。

一筋縄ではいかない深い世界観を宿した演劇だと思います。以前、唐十郎さんの劇作で、金さん演出の『泥人魚』(2021年)を拝見しましたが、その内容に衝撃を受け、気づいたら幕が下りていたという状態でした。とても美しい作品でありながら、その奥に複雑さや透明感、不思議さ、恐怖などさまざまなものが混在していて、それはこの世界そのものだと強く感じたのを覚えています。

― 「この世界そのもの」、とても本質的な言葉だと思います。そんなアングラ演劇に挑むわけですが、台本を読んでみていかがでしたか?

正直、内容の解釈についてはまだ理解が追いついておらず、わからないことばかりで少々焦りも感じています(笑)。ただ、この戯曲はシンプルに展開が見通せるものではないので、むしろ今、自分自身が感じている“ワケのわからなさ”を大切にして作品と向き合っていきたいですね。唐さんが紡ぐ言葉はとても美しく、時に古風な響きもありながら現代にも通ずるものを有する点がとても素敵ですし、セリフの語尾が独特で、それにはきっと意味があるのだと受け取っています。

― 演出の金さんとはビジュアル撮影時にお会いになったと伺っています。そのときの印象を教えてください。

金さんは新しい世界に飛び込む私のことを大きな力で受け止めてくださっていると思いました。周囲の方達からも俳優の挑戦する気持ちを大切にしてくださる方だと聞いていて、ビジュアル撮影時の数時間でその懐の大きさを実感しました。今回はわからないことばかりですが、臆することなくどんどんぶつかっていきたいです!

― 雪子にとって非常に大きな存在である、田口役の安田章大さんとも今作が初共演になりますね。

安田さんを知る方から、「とてもストイックで熱意にあふれた、真面目で素晴らしいアーティストだ」と安田さんのことをいつも伺っていて、いつかご一緒できればと思っていました。今回、初めての共演になりますが、お稽古場で勉強させていただくのが楽しみです。

「雪のようにまっさらな気持ちで、未知の世界に飛び込みたい」

― 咲妃さんは宝塚歌劇団雪組でトップ娘役を務められましたが、今回 “雪子”という役名のキャラクターを演じることに何か想いはありますか?

わあ、“雪”つながり! 今、お話を聞いて初めて気づきました! あらためて考えますと、歌劇団時代も雪組の中でさまざまな縁に恵まれ、たくさんの挑戦をさせていただいたと思いますし、多くの課題と向き合ってきました。今回、私にとって雪子という役は間違いなく新境地への挑戦だと確信していますので、今までの経験を活かしながら、そこに甘えることなく雪のようにまっさらな気持ちで取り組んでいきたいです。

― 雪子は、体の一部がガラスでできている特別な存在、かつ物語の中で重要な役割を担う難しい役どころです。

私、ガラスと聞くとお掃除を思い出すんです(笑)。というのも、宝塚音楽学校の2年間で、生徒にはそれぞれお掃除場所を振り当てられるのですが、私の担当はバレエ教室で、ガラスの窓や鏡などに指紋ひとつ浮き出ないよう命がけで磨いていました。なので、ガラスというと「曇りひとつ、傷ひとつない美しいもの」という印象があります。そんな磨けば磨くほど光るけれど、力を入れすぎると崩れてしまうこともあるガラスのイメージを大切に、体の一部がガラスでできている雪子を演じてみたいと思っています。

― 曇りなく美しいけれど強く力を入れると壊れてしまう儚い存在……現時点でご自身と雪子との共通項はどこだと捉えていますか?

雪子は普通の少女とは少し違いますが、人間が生きる世界に強い憧れや好奇心を持っていて、彼女の強い生命力は私の中にも宿っている気がします。作品世界は現実と異なりますが、雪子の芯にあるものや彼女のキャラクター自体が自分とかけ離れているとは現時点で感じていません。ただ、彼女は思ったことをとてもストレートに他者に伝えるので、そこは自分の中で整理し演じる必要があるとも思っています。

― お話を伺い、あらためて『少女都市からの呼び声』雪子役が咲妃さんにとって大きなターニングポイントになると感じました。

私の多くの部分を作ってくれた宝塚歌劇団を退団して約6年。これまでミュージカルを中心にいろいろな舞台に立たせていただきました。その経験の中で、歌劇団時代に教わったこと、培ってきたものを作品によってはあえて手放す必要があるのも実感し、型やクセのようなものを一旦封印することに多大なエネルギーを割いてきたんです。そういう意識を持って活動し、ここ数年、やっと自然に舞台上で呼吸できるようになった気もしています。
新しい劇場のオープニングシリーズで新たな挑戦をさせていただけるのは大変光栄ですし、金さんや安田さんをはじめ、カンパニーの皆さんに助けていただきながら、雪子という役を精一杯作り上げていきたいです。

THEATER MILANO-Za公式サイトにてその他のエピソードも公開中▼

あえて“徹底的”を封印!ストレートプレイに初挑戦する咲妃みゆの決意|『少女都市からの呼び声』インタビュー

咲妃みゆ

1991年生まれ、宮崎県出身。
2010年に宝塚歌劇団へ入団し、月組に配属。2014年、雪組トップ娘役に就任。
2017年『幕末太陽傳』おそめ役を最後に、7月に宝塚歌劇団を退団。
2021年、第四十六回菊田一夫演劇賞受賞。

OFFICIAL SITE

『少女都市からの呼び声』

[東京公演]
公演日程:2023年7月9日(日)~8月6日(日)
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
お問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~18:00)
東京公演主催:Bunkamura、TSTエンタテイメント

[大阪公演]
公演日程:2023年8月15日(火)~8月22日(火)
会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休業)
大阪公演主催:サンライズプロモーション大阪
大阪公演共催:PFI東大阪文化創造館株式会社

[チケット情報]
チケット:S 12,000円/A 9,500円(税込・全席指定)
MY Bunkamura チケット販売
チケットぴあ チケット販売
イープラス チケット販売
ローソンチケット チケット販売

企画・製作:Bunkamura

Bunkamura / THEATER MILANO-Za

文:上村由紀子(演劇ライター)
撮影:浦将志

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