松苗正樹 総料理長
埼玉県出身。中学卒業後に銀座の鮨店に入門し、26歳のときに渡航先のアメリカで実力を評価され、フロリダで2軒の和食レストランを任される。やがて現地で独立し、累計約20年間アメリカで腕を振るったのち帰国。日本で出店を模索する中、現レストラングループの鈴木一生統括総料理長と出会い、入社。2022年より現職となり、「SHARI 東急歌舞伎町タワー」では開業に伴い厨房にも立つ。
「食」を通して日本文化を味わう場所。「SHARI」とは?
「SHARI」ブランドのルーツは、2010年に中国・上海で誕生した「SHARI THE SHANGHAI SUSHI BAR」にある。翌年、銀座に逆輸入の形で日本1号店が開業し、以後東京を中心にコンセプトなどを街に合わせながら展開。満を持して2025年の春にオープンしたのが「SHARI 東急歌舞伎町タワー」である。
同店が重きを置くコンセプトは「グローバルにおける和食」だ。国内外からさまざまな人が訪れる新宿。この街で過ごす多様なゲストをもてなすため、料理は和食の醍醐味を大切に、旬と素材の良さを第一に掲げる。

そのうえで、海外でも特に有名な日本料理である、寿司や天ぷらといった美食を中心に献立を構成。味付けや盛り付けなどで、随所に独創的なクリエーションを演出しながら「SHARI」流の一皿を表現している。
「SHARI 東急歌舞伎町タワー」は、幅広いシーンで利用できることも特徴だ。コースは多岐にわたり、アラカルトも豊富にラインナップ。席のタイプも複数あり、記念日やデート、あるいは会食やパーティーなどあらゆるオケージョンで有意義な食事が楽しめる。
「SHARI」の美味を支える全国の旬な食材
和食の醍醐味である、四季の恵み。「SHARI 東急歌舞伎町タワー」でも全国から旬の食材を集め、その日一番のおいしさを表現する。たとえば一般的に、魚の脂乗りは冬が最盛期となるが、その逆となる夏や春には軽やかでも美味な脂、ハリの良さを求めて吟味。寿司であれば、本マグロは長崎産、真鯛やアジは千葉産など、選び抜いた産地からその時季ならではの味わいを提供する。

肉は魚ほど季節に左右されないが、やはり全国の産地と連携。牛肉は「日本三大和牛」とも称される神戸、松阪、近江を筆頭に、北海道、群馬、栃木、茨城、鹿児島など各地の和牛から肉質の良さを見極めて仕入れている。

選ぶ基準にあるのは、生産者との信頼関係やトレーサビリティはもちろんのこと、脂乗りと霜降りの美しさ、それでいて重くなく、甘くで芳醇な香りをもっていること。赤身が魅力の部位に関しては、肉質のやわらかさやうまみの豊かさなども欠かせない。
食材本来の味わいを生かす和食だからこそ、徹底した素材選びは絶対条件。調理技術はもちろん、目利きの慧眼も「SHARI 東急歌舞伎町タワー」のおいしさの要となっているのだ。
「和」を独創的な視点で再構築したジャパニーズ・キュイジーヌ
「SHARI」のルーツでもある寿司は、同店でも特に人気の高いカテゴリーだ。オーダーは1貫からできるが、注文は盛り合わせのほうが多い。内容はおまかせとなるが、松苗さんは「できるだけ、お客様の好みに合わせてご提供することを意識しています」と話す。

「マグロなどの定番は基本的にお出ししますが、たとえば外国の方やお子様にはサーモンを入れたり、シニアの方には脂が重すぎないネタを使ったり。提供する順番や酢飯の量も、お客様の層や、注文されたタイミングなどによって変えることがあります」(松苗さん、以下同)
寿司と並んで人気の天ぷらやしゃぶしゃぶは、調理温度がおいしさの決め手。天ぷらは、野菜や魚、それぞれの適温を見極めつつ、余熱による火通りも計算して揚げることで、カラッとした衣と、しっとりジューシーな素材の味を両立させる。

もちろん、衣の厚さや揚げる時間も大切だ。厚すぎずサクふわっと衣をまとわせ、なおかつ素材のうまみが油に逃げないよう、手早く熱を入れる。そして、調理時に出る気泡や音に集中し、絶妙なタイミングで引き上げることで理想的な天ぷらが完成するのだ。

しゃぶしゃぶも、特に肉は熱の入り具合がおいしさを左右する。そこで同店では、ダシの温度を75~80度に保ち、肉をサッと10秒ほどくぐらせる食べ方を提唱。松苗さん自身が動けるときは、お客の目の前でプレゼンテーションすることもある。

「たとえば霜降りの美しい牛肉なら、ほんのりロゼ色のレアで味わっていただきたいですね。ほろっとやわらかい肉質と脂の甘みが、口いっぱいに広がります。こうした召し上がり方のほか、しゃぶしゃぶはダシ、食材、調味料に関しても当店ならではの味わいを用意しました。お肉好きな方には、ぜひご賞味いただきたいです」

ダシは北海道の利尻昆布と日高昆布に花がつおを加え、うまみと香り豊かな味わいに。牛肉はすべて全国から吟味した和牛を仕入れ、“日本三大和牛”の神戸、松阪、近江も用意。そして豚肉は、神奈川県の指定農場で健やかに育てられるブランド「やまゆりポーク」を使っている。

野菜は彩りの良さと豊富な種類が魅力。中でも松苗さんのおすすめは、千葉県の生産者から直送される「極楽ネギ」だ。生で食べても辛みがおだやかで、シャキシャキの食感とみずみずしい甘みがたまらない。また、薬味には粗く仕立てた鬼おろし、ワサビ、ラー油を用意するなど、味のアクセントも豊富にそろえている。

「SHARI 東急歌舞伎町タワー」は、オープンキッチンのライブ感も魅力。料理人にとっては緊張感が高まる設えだが、その意識こそが大切だと松苗さんは話す。

「オープンキッチンはエンターテインメント要素のひとつであり、いわばライブ感もおいしさのエッセンス。演者としてのプロフェッショナルな所作はある種当然であり、お客様からどう見られているかを意識しましょうと、キッチン内で共有しています」
「インテリア」に宿る「外国人の憧れる日本」
約4mの天井高を誇る開放的な空間に、110席を有する「SHARI 東急歌舞伎町タワー」。洗練されたジャパニーズモダンなデザインで、間接照明や高級感のある家具が落ち着いた雰囲気を生み出す。

窓の先には、プールを設えたバルコニー。その向こうには建物5階から望む東京の景色が広がる。このラグジュアリーなロケーションに調和するのが、あらゆるシーンに対応するシートだ。

デートなど、少人数での食事ならシェフズテーブルのカウンター、数名での会食ならソファのボックスシート、複数名で楽しむパーティーならテーブルダイニングと、それぞれのゲストが思いおもいのひとときを過ごせる。こうした自由度の高さ、多様性あふれるゾーニングは、東京・新宿歌舞伎町らしさといえよう。

歌舞伎町から「粋」を発信するという意味
ホテルのほか映画館や劇場などのエンターテインメント施設も有する東急歌舞伎町タワーは、観光拠点の側面だけでなく、文化体験としての価値も魅力のスポットだ。そして歌舞伎町は、“眠らない街”とも称される異色のエリア。
この場所における「SHARI 東急歌舞伎町タワー」は、都会の喧騒から離れてリセットできるオアシス的空間であるとともに、繊細かつダイナミックな和食の美味や、日本の伝統文化に漂う粋を再発見できるレストランである。

同店の母体企業は結婚式場も営んでいて、ホスピタリティは一流。外国語などのインバウンド対応はもちろん、行き届いたおもてなしで、優雅なひとときを満喫させてくれるだろう。大切な人との特別な時間を過ごすには、まさにうってつけの場所なのだ。
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※価格は税込表記
文:中山秀明
写真:坂本美穂子