2024年8月には、新たに2つの個室「ROYAL ROOM」が登場。ブラックライトで照らされるレーンで、寿司をつまみ、超高級シャンパンを飲みながらプレーできるなど、エンタメ特化型のボウリング場ならではの空間だ。リニューアルしたばかりのROYAL ROOMで唯一無二のボウリングを体験してきた。
ワインやシャンパンを飲みながら楽しめる「個室ボウリング」
新宿コパボウルには4階に16の通常レーンと、3階にブラックライトの幻想的な光と音の空間演出を施した「ファンタジックボウル」が15レーンある。後者の一角に新設されたのが、2024年8月1日にオープンした「ROYAL ROOM」だ。最大10名の「Kingルーム」と、最大8名の「Queenルーム」があり、個室で大いに騒ぎながらボウリングを楽しめる。
「一般的なボウリング場で大声を出すのはマナー違反ですが、新宿コパボウルにはそうしたルールはありません。思いっきり騒いでもらってOKです」と、新宿コパボウル支配人の尾見大輔さん。
こうしたコンセプトは創業以来、変わっていない。「うちはボウリングで遊ぶことがメインではありません。ここはお酒を飲んだりしながら、みんなでワイワイ楽しんでもらう場所ですから」と支配人が語ってしまうほど、エンタメ特化型に振り切っている。だからこそボウリングブームが去り、コロナなどの逆風が吹き荒れても、新宿で唯一、生き残ってこられたのかもしれない。
かつて歌舞伎町には、現在の歌舞伎町シネシティ広場を取り囲むように4つのボウリング場が存在した。全国のボウリング場の施設数は600ほど(※)といわれているが、最盛期には3600を超える施設があったという。レジャー性を大事にする施設や競技性を重んじる施設など、それぞれに特色を持っていたが、そのなかでも「他では味わえないワクワク体験を提供する」という新宿コパボウルのスタイルは当時から異端だったようだ。
尾見支配人「それは歌舞伎町という立地も関係していると思います。歌舞伎町には居酒屋やカラオケ、ビリヤード場など、楽しく過ごせる場所が数多くあります。そのため、うちの競合はボウリング場ではなく、居酒屋やカラオケなんです。そのなかで選んでもらうために、こうしたスタイルになっていきました」
2019年にも一度リニューアルし、フードメニューとともにドン・ペリニヨンやシャンパーニュのボトル、シャンパンクーラーが置けるサイズのテーブルを新調するなど、より歌舞伎町色が強くなっている。
そして、今回の「ROYAL ROOM」。個室からテーブルオーダーできる特別ドリンクは7万円の「ドンペリ」や10万円の「アルマンド」、フードは寿司、うな重、中華オードブル5種など、ボウリング場とは思えないメニューが揃う。
スコアが低くてもいい! ボウリング+αが充実した仕掛け
エンタメ要素は他にもある。たとえば、バラエティ番組で見るような、本格的な「罰ゲームセット」のサービス。6つの罰ゲームから2つを選ぶというもので、ライトな「(酸っぱい)クエン酸ドリンク」から、ヘビーな「昆虫食(コオロギ、セミの幼虫)」まで、充実のラインナップだ。なお、昆虫は専門業者から食用のものを取り寄せており、味は悪くない。
尾見支配人「ボウリングって、スコアが低いと面白くないですよね。でも、そこにちょっとした要素を加えれば、誰でも楽しめるゲームになります。罰ゲーム以外にも、たとえばカラーピンを1本だけ残した人にプレゼントを進呈するといった、運要素のあるチャレンジイベントを開催するなど、初心者の方でも楽しめるような仕掛けを用意しています」
複数回のリニューアルで綺麗になっても、随所に漂う「懐かしさ」
50年以上の歴史を持つ新宿コパボウルだが、その間に幾度かのリニューアルを重ねている。それでも、そこかしこに「懐かしさ」を感じることができるのは、歴史あるボウリング場ならではだ。
なかでも、ツウ好みの「見どころ」として尾見支配人が教えてくれたのは、ボウリングのピンをセットするピンセッターと呼ばれる機械。1970年代に製造された古い機械を使用しているという。
尾見支配人「機械は約10年前にあえて古いものを導入しました。性能は最新の機械のほうが上ですが、昔の機械って不思議と丈夫で長持ちするんです。構造がシンプルなので故障箇所もわかりやすいですし、メーカーの純正部品がなくても、金属加工の工場ですぐに作ってもらえますから」
なお、「ROYAL ROOM」の4つのレーンでは、倒れたピンが回収・ストックされていく様子がわかるよう、ピンデッキの上部がスケルトンになっている。これも、他にはないエンタメ要素。新宿コパボウルならではの遊び心やサービス精神が感じられる。
これからも「歌舞伎町らしい」ボウリング場であり続ける
女性ボウラーによるボウリングトーナメント番組「ボウリング革命 P☆League」の盛り上がりや健康志向の高まりなど、昨今、ボウリング熱が再燃しそうなムードがある。
しかし、尾見支配人は「たとえ、またボウリングブームが来たとしても、うちにはあまり影響がないと思います。元々コアなボウリング好きをターゲットにしていない新宿コパボウルに、わざわざプレーしにくるボウラーはいないんじゃないかな」と笑う。
これからも、エンタメ要素を追求し、歌舞伎町らしいボウリング場であり続けるスタンスは変わらない。そして、外回りの会社員が羽を休めるスポットとして、終電を逃した学生たちが朝を待つ避難先として、お酒を飲みながら大いに騒げる社交場として、今後も長く愛されていくのだろう。
文:榎並紀行
写真:小島マサヒロ