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チャラン・ポ・ランタンがロフトプラスワンで10年ぶりのワンマンライブ開催「私たちにとってライブは酸素」

DATE : 2021.02.08

チャラン・ポ・ランタンが1月13日に、歌舞伎町・ロフトプラスワンでワンマンライブ「新春チャランポショウ2021」を開催した。

本公演は、「MASHUP!KABUKICHO」にて前回チャラン・ポ・ランタンを取材した時、ロフトプラスワンを訪れた際に決まったもの。デビュー前の彼女たちを知る、ロフトプラスワンの鈴木恵店長との久しぶりの再会で会話に花が咲き、「来年、ロフトプラスワンで絶対にライブします」と言ったふたりの“口約束”が早くも有言実行されたかたちとなった。

チャラン・ポ・ランタンの新宿での思い出の地・ロフトプラスワンでのライブ。配信ライブでも衰えない彼女たちの熱気とパワーを、温度そのままにお届けする。

緊急事態宣言下でもライブを開催した想い

「久しぶりでうれしいなー!」

リハーサル中に何度もそう言っていたのは、ボーカルのもも。

本公演の会場となったロフトプラスワンは、チャラン・ポ・ランタンの前身にあたるマイノリティ・オーケストラ時代からライブを開催してきた思い出の場所。最後にライブを行ったのはおよそ10年前だという。

久しぶりにステージに立ち、当時のことを思い出したという小春も「ロフトプラスワンには、高校の同級生とか後輩も観に来てくれたんですよね」と目を細める。

結成から10年以上経つふたりをデビュー前から知る人で現場に携わっている人はほとんどいない。そんな“生き残り”のひとりである、ロフトプラスワンの鈴木恵店長は、当時のことをこう振り返る。

「初めてふたりを観たのはマイノリティ・オーケストラ時代で、小春ちゃんが『妹が歌いまーす!』と連れてきていたんですね。ももちゃんのパフォーマンスを観て、『すっごく歌のうまい妹を隠してたな』と衝撃で。当時からお祭り感のある楽しいライブが大好きでしたけど、あっという間に人気者になって、尊敬できるくらいカッコよくなっちゃったなって。今回も本当にやってくれると思ってなかったですし、こんな状況下で開催してくれて本当にうれしいです」

実は「新春チャランポショウ2021」が行われたのは、2021年1月13日。緊急事態宣言が発令されたばかりの頃だった。当初はファンクラブ会員限定での有観客と配信での開催を予定していたが、新型コロナウイルスをめぐる政府の動向を受け、無観客ライブへと急遽変更。

そんな状況下でも陰りを見せることなく、リハ中も「無観客ライブでも人(スタッフ)がこのくらいいてくれるとありがたい」と話し、小春が持参した観客の歓声を仕込んだループマシンで遊んだり、差し入れの菓子にハシャいだりと、待機する配信スタッフを和ませた。

新春感たっぷりの愉快な曲 アクセル全開のスタート

配信が始まると、華やかな衣装に身を包んだふたりが元気いっぱいに登場。今回の衣装は2020年に行った8週連続シングルリリース企画明けに着た金と銀のボディスーツをアレンジしたもの。振袖を模した羽織やフリルの付いた袖などを重ねて“新春感”たっぷりの衣装で、観客の目を喜ばせた。

登場直後からアクセル全開でパフォーマンスを開始。一曲目は「新春チャランポショウ2021」のタイトルにちなんで「一月一日」。めでたい一曲で幕を開けた。

その後、TBSドラマ“逃げ恥”のオープニング曲でもある「進め、たまに逃げても」、アラブ民謡の「ムスタファ」「最後の晩餐」など、愉快な曲で会場を温めた。

「最後の晩餐」の間奏では、小春がアコーディオンを弾きながらブリッジする一幕も。大胆なパフォーマンスに、「ものすごいポーズです!小春ちゃんすごい!すごい!」と盛り上げるもも。演奏終了後に「あれは何ていうポーズなの?」と尋ねられ、「小春が反ってるから『こはぞり』。でも何で序盤からこんなに飛ばしちゃったんだろう」と答えた小春。「やっぱり定期的にライブをやらなきゃダメだね」と息を上げて話した。

「新宿セットリスト」演奏中に、姉妹ゲンカが勃発!?

一気に駆け抜けた序盤のパフォーマンス後のMCでは、小春が日替わりママを務めた新宿ゴールデン街のバーソワレや、デビュー前からワンマンライブを開催してきたネイキッドロフトなどの名前を挙げて、新宿の思い出を語った。「チャラン・ポ・ランタンの楽曲に唯一登場する地名は新宿だけなんですよね」と小春が話した後に続いた5曲はすべて新宿にちなんだもの。

歌詞にゴールデン街が登場する「カシスオレンジ」や「新宿で映画を観る」、新宿南口のカフェが舞台の「ミルクティー」のほか、ロフトプラスワンの初ステージで歌った「カチューシャ」「コ・ロシア」が続いた。

演奏の間では、曲の舞台となった場所についての話に。「新宿で映画を観る」に登場する映画館についてももに訊かれた小春は名前が思い出せず、「地下に行くやつ!」と回答。当日に急遽セットリストに入れたという「ミルクティー」の舞台の喫茶店は「たまにファンの方で場所を言い当ててくる人もいるけど、正解でも言わない」と言って、はにかむような笑顔を見せた。

また、「カチューシャ」では、ロフトプラスワンの初ステージで歌ったときのポジションを再現。当時はチャラン・ポ・ランタンとしてワンマンライブを行うのが2回目だったこともあり、ふたりが横並びになって揺れながら、ももはスタンドマイクを持って歌っていたという。

当時の様子は、小春とももの父によるホームビデオで撮影され、Youtubeにアップされている。定点で撮影された当時の映像を再現するために、今回の公演でも「カチューシャ」演奏時には1つのカメラのみを使用し撮影・配信された。

▲2009年 チャラン・ポ・ランタン ロフトプラスワンでの初ステージ

「カチューシャ」演奏前には、ももが「あのとき小春ちゃんが構成をミスったのに、さも私がミスったかのように睨んできたんですよ」と暴露。11年越しの唐突な摘発に「何で今言うの~?」と戸惑う小春。一時は“姉妹ゲンカ”に発展しかけたが、その後は笑って仕切り直し、前半戦を完走した。

途中で映像にトラブルがあり、視聴中のファンから「映像がんばれー」「映像大丈夫か?」といったコメントが押し寄せると「当たり前にきれいな画が見れると思うなよ!」とおどけて切り返すもも。歌っている最中に動きを止め、「映像が止まったと思ったでしょ? 私が止まってまーす」と言うなど、茶目っ気たっぷりにトラブルを切り抜けた。

店員に扮したももが小春に“接客” グッズ紹介コーナー

“新宿セットリスト”が終わって披露されたのは、「私の宇宙」。序盤で歌詞を間違えるハプニングが発生。「押入れが私の宇宙 独りで星を作っていた」の「独り」を「ふたり」と歌ったももに「独りとふたりじゃ意味が全然違うでしょ。この曲はコアなファンの方が一番好きって言ってくれてる大事な曲なんだからね!」と小春がフォローし、再演奏することに。

曲の中盤に差し掛かると、ももがステージのヘリに座って歌う場面も。ロフトプラスワンでのかつてのライブを思わせるアットホームな画も見られた。

前半戦を全速力で駆け抜けた疲れも見えたかと思われたが、続く「お茶しよ」では軽快さを取り戻した。間奏ではコミカルなテンポに合わせ、店員に扮したももが「いらっしゃいませ~!どうぞご覧くださ~い!」と小春を接客する寸劇形式でグッズ紹介がスタート。

小春デザインのパーカーやスリッパ、マスク、マスクケース、チャラン・ポ・ランタンのふたりがキャラクター化されたマグネットなどが紹介された。

▲「脚曲げちゃって!引っ掛けちゃって!マグネットフック」(1,300円)ラバー素材のマグネットはももの足が曲がり、カギやキーホルダーなどをかけられる仕様に。

左右の色が異なるマスクの紹介時には「入稿間違っちゃったのかなー?」とおどけるもも。メガネ拭きを紹介する際は、小春の頭にメガネ拭きを載せたり、手品のように顔の前を覆ったりとおてんばぶりを見せ、小春が思わず吹き出してしまうシーンも。

加えてアクセサリーブランド「CHACO」とのコラボアクセの紹介など、華やかなアナウンスが続いた。

その後、「かなしみ」「ほしいもの」としっとりとした曲で会場のムードを一変。ラストスパートへと橋を渡した。

「死ななきゃいいから」ラストで小春がファンにエール

最後の演奏に入る前のMCでは、「とりあえず我々は、毎月毎月演奏します」と宣言し、2021年7月までの「8ヵ月連続ライヴ企画」への心意気を新たにした。

小春は「こんなこと言うもんじゃないと思ってるけど、気が緩んじゃいけないはずなんだけど、気を張ることにも疲れてきちゃったよね。とくに私たちはちやほやされて伸びるタイプだから、ライブが思うようにできない状況は苦しいけど、みんなも死ななきゃいいから。こんな格好で活動してるから説得力ないかもしれないけど、死ななきゃいいから」と心の内を吐露しながらファンにエールを送った。

ラストに演奏したのは、「空が晴れたら」と「ページをめくって」。途中アンコールもMCもなく、ラストまでを一気に駆け抜けた。

曲と曲の間では、感極まった小春の代わりに、ももが歓声のSEが流れる足踏みスイッチを押す場面も。温かな空気が溢れる中、ももがステージ下のカメラ前まで降り、ファンへ向けたメッセージカードをカメラのレンズに貼り付け、ライブは幕を下ろした。

と思いきや、メッセージカードを外したカメラ前に、ももと小春のふたりが再び登場し、笑顔で手を振り終演。配信ライブならではのファンサービスで、最後の最後まで観客を楽しませた。

「新宿の思い出の場所のためなら何でもしたい」

配信終了後は、ステージ上で記念撮影。ロフトプラスワンでお馴染みのインパクトある背景に負けない華やかな衣装で、思い出を収めた。

その後、ふたりが「昔からの私たちを知る数少ない“生き残り”」と呼ぶ、ロフトプラスワンの鈴木店長も壇上に招かれ、3人での記念撮影をするシーンも。「老後のお守りにします」と言った店長に「いやいやいやいや」と鈴木店長を挟んだ小春とももが両脇から即座に首を振るところからも関係の良さがうかがえる。

ライブを終えたばかりのふたりに、思い出の地・ロフトプラスワンで久しぶりに公演を行った感想を聞いてみると、「やっぱうれしいね~」と笑顔で答えた小春。

一方で、12月にファンクラブ限定ライブを行ったネイキッドロフトの移転をはじめ、新宿の思い出深い場所がなくなっていくことについて触れ、「私たちで貢献できることがあれば、何でもさせていただきたい。ライブをすることはもちろん、もう少し落ち着いたらゴールデン街のバーソワレでママとして店にも立ちたい」と語った。

公演終盤で語っていたライブへの想いを改めて尋ねると、こんな風に答えてくれた。

「私らはライブやってないと生き延びられないというか、息ができないって感じがするよね。本当に酸素みたいな存在」(小春)

「本当にずっとライブしてたからね」(もも)

「だから、ライブにかける想いと聞かれても、言うてないんですよね。息をするようにしていたから、なくなってから初めて息をしてないことに気づくというか。お客さんよりもずっとうちらのほうがしんどいかもね。このまま動かないと身体が訛っておばあちゃんみたいになっちゃいそうで」(小春)

「だから、8ヵ月連続ライブ企画もすることにして。自分たちのためにやらせてほしいって感じだよね」(もも)

コロナ禍の中でも、映像の制作や楽曲の提供、「8週連続シングルリリース」「ニューアルバムリリース」など、様々な発信に挑戦してきたチャラン・ポ・ランタン。それでも、ライブはふたりにとって欠かせないものだという。

チャラン・ポ・ランタンは、8ヵ月連続ライブ企画の第3弾として、2月12日に「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」にて有人ライブが決定。本公演の配信は2月20日を予定している。ふたりにとってはまさに“生命線”であるライブをぜひ目撃してほしい。

今回の会場となったロフトプラスワンでは、屋外での配信イベントをはじめとして既存の方法にとらわれない新しいかたちのイベントを模索しているという。「できることを続けながらも、こういうことがやりたいという構想ベースでも相談してもらえたら。ロフトがやっているから安心と思ってもらえるような場所でありたいです」と鈴木店長は話していた。

チャラン・ポ・ランタン

もも(唄/ 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン/ 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。
2009年に結成、2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。
バルカン音楽、シャンソンなどをベースに、あらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンドや、サーカス風の独特な世界観で日本のみならず、海外でも活動の範囲を広める。
チャラン・ポ・ランタンとしての活動のほか、映画/ドラマへの楽曲提供、演技・CM・声優・イラスト・執筆など活動の範囲は多岐に渡る。これまでに9枚のオリジナルアルバムを発売。最新アルバムは「こもりうた」(2020年10月28日発売)。7月まで続く「8ヶ月連続ライヴ」企画を敢行中。
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Text:佐々木ののか
Photo:Eisuke Asaoka