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新宿・歌舞伎町音楽イベント『OMNIBUS~The Circuit#回遊』2021年11月6日(土)①kiki vivi lily、ODD Foot Works、どんぐりず

DATE : 2021.11.29

ポストコロナのライブカルチャー中心都市、新宿・歌舞伎町で11月6日(土)、7日(日)に開催された『OMNIBUS』。初日の『The Circuit#回遊』は名前の通り、7つのライブハウスをサーキット形式で巡るイベント。さまざまな個性のラッパーやポップス志向のアーティストなど、いまのヒップホップ/R&Bを軸とする総勢26組が各会場を大いに沸かせた。今回はその中から6組のアクトをピックアップしたレポートを2回に分けてお届けしよう。

kiki vivi lily

Zirco Tokyoのトップバッターを務めたkiki vivi lilyは早々に入場制限がかかる人気ぶり。ニューアルバム『Tasty』のプロデューサーでもあるMELRAW(Sax/Gt/マニュピレート)と菅野颯(from BREIMEN/Dr)との3人で登場した彼女は恋心をメロウなサウンドに閉じ込めた人気曲「Blue in Green」でライブをスタート(ちなみにSUKISHAのライブでも飛び入りし、同曲を歌ったとか!)。最初こそ、淡々と丁寧にその甘くてウィスパー気味のボーカルで優しくフロアを包んでいたが、ハンドマイクでアクティブに歌う「カフェイン中毒」や、MELRAWの生っぽいギターソロが映える「Waste No Time」、80sのシティポップをアップデートした印象の「Rainbow Town」と続くと、歌うことの楽しさが自然と溢れる。

『Tasty』からはグッとメロディが立った印象の「Lazy」を披露し、自ずとハンドクラップが起こり、この曲でグッとサウンドのレンジが広がった印象を受けた。この日は約1年ぶりの有観客ライブだったそうで、何度か「今日ここに集ってくれてありがとうございます」と感謝を述べるだけでなく、「今日はたくさんのアーティストが歌舞伎町に集結してるので、頑張って好きなアーティスト見つけてください」と延べ、そこからラストの彼女が音楽をやることの意義が歌詞からにじみ出る「At last」で締めくくり。スウィートな歌声の奥にある芯の強さや誠実さを感じるステージだった。

ODD Foot Works

Zirco Tokyoから急ぎ足でACB HALLに向かうと、既に気合の入ったサウンドチェックを行っていたODD Foot Works。この日はYohji Igarashi(DJ)とTaishi Sato(MPC)をサポートに迎えた5人体制。いきなりスペーシーかつロックテイスト強めな新曲で幕を開け、続く「JELLY FISH」もハードボイルドで、SunBalkan(Ba)の6弦ベースが五臓六腑を揺らし、Pecori(ラップ/Vo)が煽らなくてもそこかしこで手が挙がる。グッとローが強くなった「Bebop Kagefumi」から「KEANU」のビートのつなぎにも思わず唸る。Tondenhey(Gt)の哀愁漂うリフでメロウなムードに変わる「髪と紺」もこの日はどこか滾(たぎ)っている。生音のサオのふたりの音の太さはもちろん、背後のふたりが打ち出すビートも高い熱量を保っているからだろう。ゆるく乗るイメージだった「正論」すら、フロアが一つの生き物になったようにうねっている。

リリックが妙に歌舞伎町にリンクしたのは「KAMISAMA」。夜光虫のように〈コンビニのGALにうっとり〉したりしつつ、自分の時代を待つ男のリアルのようなものが妙に刺さる。続く「They Live」でも高いテンションを維持し、Pecoriが「こんなに集まってくれてありがとう。新曲やるわ」と一言告げてスタートしたのはSunBalkanがシンセベースで超重いローを放ち、ダークなニュアンスもある新鮮なナンバー。タイトルは「blonde」というらしい。ハードエッジかつ重みもあるサウンドメイクで新しいタームを予感させたステージだったが、ラストは思わず声に出してシンガロングしたくなる〈やまない雨に打たれてる〜〉をぐっと我慢して身体を揺らす「NDW」。ちょっとだけセンチメンタルな気分を残してくれた。

どんぐりず

ACB HALLのトリは群馬県桐生市を活動の拠点に置き続ける二人組どんぐりずだ。クールなトラックにユーモアを交えたリリックがクセになる二人はあらゆるアーティストからラブコールが絶えない。今後もKroiやWONKとの対バンが待っている。この日も会場にたどり着いた開演30分前には既に長蛇の列ができていて人気のほどがうかがえた。ほぼ何もないステージにしれっと森とチョモが登場、「poweful passion」のビートに合わせてクラップが起こる。一転、つっかかるようなシンコペーションと疾走する4つ打ちがミニマムに合体した人気曲「NO WAY」での森の高速ラップに舌を巻きながら、〈tiki dang dang〉が脳内をリフレイン。熱を帯びるフロアにグッドメロディに乗る〈なんだってやっちゃえばいいじゃん 正解もどうだっていいじゃん〉という、まるでどんぐりずのことを歌っているような「E-jan」が妙にリアリティを持って響く。

方言なのか〈だんべな〉というワードがリフレインする浮遊感たっぷりな「dambena」がすごくクールな曲に聴こえるという未知の体感。怒濤のブレイクビーツに突入し、再び浮遊感たっぷりなオケに戻る構成もドラッギーだ。「マインド魂」もドープな空気感を持ちつつ、サビにはポップな味わいすらあり、全ての曲でなんらかのギャップに驚かされる。ほぼノンストップで8曲ドロップ。終盤は最新EP『4EP2』からトリッキーなビートの「Just do like that」、〈これくらいの弁当箱〉というフレーズが頭から離れない「Woo」、80sのシンセ感溢れる「ベイベ」で終了。圧倒的にハイエンドなトラックとラップスキルと日常に触れるリリックの落差は明らかにライブで増幅していた。恐るべしどんぐりず。

Photo:前川俊幸
Text:石角友香