ポストコロナのライブカルチャー中心都市、新宿・歌舞伎町で11月6日(土)、7日(日)に開催された『OMNIBUS』。初日の『The Circuit#回遊』は名前の通り、7つのライブハウスをサーキット形式で巡るイベント。さまざまな個性のラッパーやポップス志向のアーティストなど、いまのヒップホップ/R&Bを軸とする総勢26組が各会場を大いに沸かせた。今回はその中から6組のアクトをピックアップしたレポートを2回に分けてお届けしよう。
鈴木真海子
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ゆったりとしたシルエットのニットを身にまとい、鈴木真海子がにこやかな表情を浮かべて新宿MARZのステージに姿を現した。観客の入ったフロアを満足そうに見渡すと、「どっかの土曜日」でライブをスタートさせた。バンドメンバーにはryo takahashi(Dr)と沼澤成毅(Key)のみを従えた形の変則的な3人編成となっており、ベースなどほかの楽器に関しては同期を使用するスタイル。セットリストは今年8月にリリースされたソロアルバム『ms』の収録曲を中心に組まれ、ソフトな肌触りのリラックスナンバーが連発されていった。
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鈴木はオーディエンス1人ひとりに微笑みかけながら、丁寧に歌とラップを紡いでいく。「mani」で歌詞を飛ばした際には「動画撮ってる人は、そこだけトリミングしといてね!」と笑わせ、「じゃむ」ではiriによるラップパートを同期で鳴らしながら「iri、来るかな? 来たー! 音だけな」とはしゃいでみせるなど、ライブは終始アットホームな空気感で進行。そしてラストナンバー「Contact TOSHIKI HAYASHI(%C) remix」をプレイし終えると、「じゃあ、また連絡しまーす」と親しい友人に告げるように言い残して軽やかにステージをあとにした。
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Ryohu
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ステージ後方に陣取ったDJ・Yohji Igarashiがプレイを開始すると、おもむろに登場したRyohuがオーディエンスのクラップを要求。ソウルテイストのアンセミックなナンバー「The Moment」でライブがスタートし、新宿MARZ会場はものの数秒でアップリフティングなパーティ会場と化した。全身の細胞を直接刺激するような重低音をフロア中に響かせながら、Ryohuは楽しそうに、しかし真摯にポジティブなリリックを畳みかけていく。MCでは長引くコロナ禍への思いも語り、「もうちょっと(の我慢)だと思うんで、今日はゆるりと楽しんでいければ」と告げた。
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ライブはスリリングでハードなナンバーを中心に展開し、中盤では、フィーチャリング参加などで親交のあったHSU(Suchmos)へのメッセージを想起させるMCからメロウなレクイエム「Forever」を挟むなど、緩急のコントロールも抜かりない。そんな中、「Flower」でバックトラックのベース音が鳴らないという珍しいアクシデントにも見舞われたが、Ryohuはとっさにビートに乗せて「ベースが入ってないぜー!」と即興フロウを披露し、ライブならではの特別感に昇華してみせる。ラストナンバー「All in One」では<ニューヨークに行ったり>というリリックを<新宿MARZに行ったり>に変えて歌い、自由にどこへでも行ける日々への希望を残してステージを締めくくった。
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田我流
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『The Circuit #回遊』の大トリを飾ったのは、新宿ReNY会場にて特別公演として行われた田我流のアクトだ。サックスとピアノをフィーチャーしたジャジーなイントロに続き、四つ打ちビートに乗せたアッパーな未発表曲「OLD ROOKIE」でライブの火ぶたが切られると、会場は早くもハンズアップの洪水に。BACK DJのMAHBIEとの息の合った掛け合いも交えながら、貫禄十分のスキルフルなラップと生活感あふれる切実なリリック、軽妙な抱腹絶倒トークなどでオーディエンスの耳と心を徹底的に奪い続けていった。
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中盤ではアカペラでのラップも披露し、その卓越したリズムセンスで改めてフロアを圧倒する。さらに「HOME」では、直前に同じステージでパフォーマンスを終えたばかりの仙人掌がフィーチャリング参加。田我流は「仙人掌さんは僕と同級生です。(同年代で)残ってる人は数少ないんですけど」と語り、長きにわたってシーンを支えてきた同胞との共演を喜んだ。ラストナンバーに選ばれたのは、6/8拍子のソウルバラード調トラックが印象的な「センチメンタル・ジャーニー」。ミラーボール演出も相まってフロアはディスコ色に染めあげられ、ピースフルなムードのままイベントは幕を下ろした。
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Photo:前川俊幸
Text:ナカニシキュウ