新・歌舞伎町ガイド

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豪雨にも負けず、歌舞伎町らしいごった煮の音楽が鳴り響く『MASH UP! KABUKICHO SPECIAL LIVE』

DATE : 2023.05.13

4月14日オープン早々、連日多くの人で賑わっている東急歌舞伎町タワー。その開業を記念するイベント「KABUKICHO BLUE FESTIBAL」の一環として、4月15日に特設ステージとシネシティ広場を使って『MASH UP! KABUKICHO SPECIAL LIVE』が開催された。

歌舞伎町に縁のあるアーティストや新宿に根ざしたエンタメ・カルチャーを紹介してきた「MASH UP! KABUKICHO」と、新宿LOFTやShinjuku SAMURAIなどの歌舞伎町近辺のライブハウス、そして音楽サーキットイベント「CONNECT歌舞伎町」が協力し、3組の個性的なアーティストに白羽の矢を立てた。生憎の大雨を吹き飛ばすような熱演をレポートする。

雨空に響く3組のアーティストの個性

UCARY&THE VALENTINE

トップバッターはUCARY&THE VALENTINE。兵庫生まれのシンガーソングライターで、作詞・作曲、そしてボーカルを担当していたTHE DIMの解散後に東京に拠点を移し、2012年から現在の名義でソロ活動を開始。自身の活動のほかにくるりや銀杏BOYZ、木村カエラなど多数のアーティストのバッキングボーカルも担当し、モデルやデザイナーも務める多才ぶり。

この日はTシャツにデニム、ギター1本というシンプルなスタイルでステージに登場すると、丁寧にギターを爪弾きながら1曲目「if」を歌い出す。静謐なメロディーとウィスパーな声質に降り止まない雨が重なって、歌舞伎町の喧騒を洗い流すようなパフォーマンスだ。人の流れが途切れない「ホット」な東急歌舞伎町タワーとのコントラストが面白い。2曲目「BIOMAS」ではギターストロークが大きくエモーショナルになり、「光のなかへ」という歌詞が何度も繰り返される。

観客の雰囲気を伺いながら曲目を急遽変更して、THE BLUE HARTS「青空」のカバーを披露。「青い空の真下で」と歌いながら雨空を見上げて困ったように笑っていたのが印象的。「星に願いを」、「花咲くようなうた」と続けて披露し、最後は昨年リリースされた「Aiaiaiai」。シンプルなギターフレーズの上で紡がれる素朴で力強いラブソングを歌い終えると、「東急歌舞伎町タワー、おめでとうございます!」とピースしてステージを去った。

― ステージを終えてみていかがですか?

弾き語りだから音数も少ないし、テンポも早くないので盛り上がるか心配でしたけど、お客さんがいっぱい来てくれてちゃんと聴いてくれているのが伝わったので嬉しかったです。歌舞伎町の真ん中で歌っていることも途中から忘れていたんですけど、新宿っぽさは感じたんですよね。新宿の人たちにはブルーハーツの「青空」が刺さると思ったから歌ったんですけど、めちゃくちゃ雨でした(笑)。

― 歌舞伎町で好きなスポットはありますか?

バッティングセンターにはたまに行きます。ライブハウスの帰りとか。120km/hを打ち返したりすると気持ちいいんですよね。

― 歌舞伎町は今後どうなっていくと思いますか?

私は気にならないんですけど、いろいろな事件があったりするから「危ない」とか「悲しい」っていうイメージがあったりするけど、遊園地みたいな感じもあるじゃないですか。普段会えない人にも会えるみたいな。そういう部分が混ざり合って、若者も安心して遊びに来れる場所になればいいなと思います。

UCARY & THE VALENTINE

生年月日 : 1992年9月16日
ジャンル : ANARCHY TECHNO
16歳で初めて結成したバンド”The Dim”は神戸を中心にカルト的な人気があり、2016年:自主レーベル”ANARCHY TECHNO”を立ち上げ、フリーランスとしての活動を始める。
レーベル名にもなっている”ANARCHY TECHNO”という独自ジャンルを掲げたソロプロジェクトでの音楽制作だけでなく、くるり、銀杏boyz、木村カエラ、The Hiatusなど様々なアーティストのバックコーラスやゲストボーカル、CM楽曲提供なども務めている。
また、国内外の雑誌やWebでのモデル活動、ANARCHY TECHNOのグッズデザイン、他アーティストのアートワークやブランドディレクションなど、音楽だけにとどまらず多方面で活動中。

Appare!

2組目は一転、極彩色の衣装に身を包んだAppare!。世界中のKAWAIIを取り入れ、独自のカルチャーを生み出していく7人組アイドルグループだ。登場のSEが聞こえてくるとレインコートを着たファンからコールと手拍子が上がる。

アッパーでダンサブルな「ぱぴぷぺPOP!」、ディスコティックな「いいかんじっ!」を立て続けにパフォーマンスし、観客の温度を上げていく。「初めての人でも盛り上がれる曲です」と繰り出されたのは「破天荒シンデレラ」。和のイントロと扇子を使った振り付けから、アップテンポに雪崩れ込む。東急歌舞伎町タワー2Fの「新宿カブキ hall~歌舞伎町横丁」や3Fの「namco TOKYO」のネオンサインと相まって、「どこにもないけど、みんなイメージのなかにあるトーキョー」が目の前に現れる。インバウンドの観光客も足を止め、「Great!」と喜んでいた。

4曲目の「Wai Waiダンスフィーバー」では観客も巻き込んでサビの振りを決め、この日にピッタリな「青いフレア」の真っ直ぐなメロディをメンバー全員で響かせていた。ライブ後はZepp Shinjuku (TOKYO)の一角を使って特典会が行われ、多くのファンがメンバーとの交流を楽しんでいだ。その合間に藍井すずが話を聞かせてくれた。

― 今日のライブはいかがでした?

東急歌舞伎町タワーを実際に見たのは初めてだったんですけど、大きなモニターもあって、やってて楽しかったです。私は青が好きでメンバーカラーも青になったので、今日は青一色のステージだったからテンション上がりました!

― 新宿の真ん中の野外でのライブはどうでした?

めっちゃ新鮮ですね! いつもは新宿でのライブといったらライブハウスですし、こんなに人が通ってる開けた場所でやれることはなかなかないですね。

― 今後の歌舞伎町はどうなっていくと思いますか?

今よりももっともっと、音楽とか食とか、いろんな文化が入り混じるような感じになっていってほしいです。Zepp Shinjuku (TOKYO)もライティングの演出がすごいって聞いたので、早くステージに立ってみたいです。(有言実行、5/6,7開催の「歌舞伎町UP GATE↑↑」にてZepp Shinjukuのステージでパフォーマンスを行った)

 

Appare!

「アイドル横丁夏まつり~2016~」にて」デビュー。
クオリティの高い楽曲と、圧倒的なライブパフォーマンスで着実にファンを増やし、2022年9月、目標に掲げていた日比谷野外音楽堂での単独公演を開催(SOLD OUT)
日本武道館での単独公演を次なる目標として発表した。
2022年11月発売「Appare! Future」収録の「ぱぴぷぺPOP!」は、発売当初よりTikTokでのダンス動画が多数投稿され、視聴数は1億回を突破。
2023年、KEYTALK、Wienners、オメでたい頭でなによりなど錚々たるバンドとの対バンツアー開催を発表。
アイドルの枠に囚われず、ますます勢いづくAppare! から目が離せない!

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チャラン・ポ・ランタン

トリを飾るのはボーカルももとアコーディオン小春による姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。新宿駅西口で大道芸パフォーマンスをしたり、ゴールデン街で日替わりママをやったり、何かと新宿に縁が深い二人。ももが「イェー! 全然天気良くない!」と叫びながら、フジテレビ「ぽかぽか」に使われている同名のテーマソングからスタート。強引に太陽の首根っこを掴んで引っ張ってくるような、圧倒的なポジティブバイブスに満ちたステージングだ。続く「置行堀行進曲」でもパワフルさは加速し、東急歌舞伎町タワーのエスカレーターを登る人々にも手を振ってアピールする。

MCで小春が「こんなに雨降ってるの、私たちのせいなんじゃない?」と愚痴ると、ももがすかさず「そんなこと言わないで!(笑)」とツッコむ。演奏だけでなくMCもグルーヴ感が半端ではない。3曲目はBLUE FESTIVALにちなんで「春のあお」。メランコリックな曲調と雨がステージをさらに青く染めていく。

時間が余っていることに気づくと「1曲増やしちゃおう」ということで、「旅立讃歌」をプレイ。別れを前向きに捉えて進んでいくこの歌は、春の季節にぴったりだ。そしてラストは「進め、たまに逃げても」と「ムスタファ」のメドレー。傘を差しながらステージを縦横無尽に使い、最後まで120%の歌力と超絶アコーディオンでぐいぐいオーディエンスをひっぱり、拍手喝采を浴びた。

― ロケーションも天候も、なかなか特殊なシチュエーションでのライブだったと思いますが、いかがでしたか?

もも:楽しかったですよ。やる前は人が集まるのか不安でしたけど(笑)、かなり来てくれたよね。

小春:ほんとにねえ、この雨のなかで。もともと東急歌舞伎町タワー目当ての人がいっぱいいたし。

もも:そこに我々が乗っかったかたちでね。

小春:祝いの音楽をやらせてもらいましたよ。

― 歌舞伎町と関係が深いお二人ですけど、東急歌舞伎町タワーができることでこの街はどう変わっていくと思いますか?

小春:私らが20歳くらいのときは、家族連れでくるような雰囲気の場所ではなかったですからね。歌舞伎町を一人で歩けるようになったらちょっと大人かも、みたいな。でも、いまだにいろんな職業の人が歩いているものの、時間帯によってはファミリーが普通にいる街になって。

もも:カップルもいるしね。いい意味で、どんどん変わっていくんだなと思って。楽しみですよ。

― 歌舞伎町の魅力としてある種の「いかがわしさ」もあると思うんですけど、そこは減っていくんでしょうか?

小春:いい具合に共存していくんだと思うんですよね。変わったと言っても、ディープな方々が歌舞伎町から消えることはないでしょうし。根強い世界観がありますから。メインストリートには家族連れがいるけど、一本入ったらゴールデン街もあるしストリップ劇場もまだあるっていう。

もも:いかがわしさって、なくそうと思ってもなかなかなくならないですからね(笑)。

小春:なくすんじゃなくて共存していくっていうのが歌舞伎町っぽさでもあり、今っぽさなんじゃないかな。

チャラン・ポ・ランタン

もも(唄/ 平成生まれの妹)と小春(アコーディオン/ 昭和生まれの姉)による姉妹ユニット。
大道芸人の姉とただの高校生だった妹 2人で2009年に結成。
2014年にエイベックスよりメジャーデビュー。

バルカン音楽、シャンソンなどをベースにあらゆるジャンルの音楽を取り入れた無国籍のサウンドや、サーカス風の独特な世界観で日本のみならず海外でも活動の範囲を広げている。
チャラン・ポ・ランタンとしての活動のほか、映画やドラマ、舞台への楽曲提供、
演技・CM・声優・イラスト・執筆、動画編集など活動の範囲は多岐に渡る。

2016年に発売の配信シングル「進め、たまに逃げても」がTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマに起用され、大きな反響を呼ぶ。
2019年7月17日にはメジャーベストアルバム「いい過去どり」を発売。
2020年に入り、5月27日発売の配信シングル「空が晴れたら」を皮切りに【8週連続”宅録”配信シングルリリース】を敢行。
2020年10月28日にはニューアルバム「こもりうた」を発売。
2021年9月より独立。9月18日には小春がプロデュースした手頃な値段のボタンアコーディオン「Bébé Medusa」の予約販売を開始。一晩でボタンアコーディオンを531台売り上げる。
自分たちで会社を経営しながら、自分たちの世界を今後も大きくしてゆく予定。

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『MASH UP! KABUKICHO SPECIAL LIVE』

日時:2023年4月15日(土)13:00~14:30
場所:KABUKICHO TOWER STAGE+歌舞伎町シネシティ広場
出演:UCARY & THE VALENTINE/Appare!/チャラン・ポ・ランタン
主催:歌舞伎町商店街振興組合/歌舞伎町二丁目町会/東急㈱/㈱東急レクリエーション
共催:㈱TSTエンタテイメント
協力:一般社団法人 歌舞伎町タウン・マネージメント/CONNECT歌舞伎町2023/新宿ロフト/shinjuku SMAURAI
後援:新宿区
全体管理:㈱東急エージェンシー
制作:㈱ライツアパートメント/㈱レキップ・トロワ
運営:㈱東急エージェンシープロミックス

text:張江浩司
photo:明田川志保